英語「同格(apposition)」とは何か?
「同格(Apposition)」とは何か?
by SAKURAnoG
皆さん、こんにちは。今回は、「英語の前置詞について(その6 OF)」からのスピンアウト編その1として、表題の「同格とは何か?」を採り上げたいと思います。
目次
1.「同格のOF」とは何か?
2.並置のパターン
2—1.名詞の並置
2—2.名詞句の並置
2—3.名詞節の並置
2—4.関係詞節の並置
3.述部の並置(Predicate Appositive)
4.文の並置構造(Asyndetic Relative Clause)
1.「同格のOF」とは何か?
「同格のOF」は「appositional of」などと呼ばれていますが、「of」がもともと属格の機能を継承してきたことから「appositive genitive(同格的属格)」(注1)(Curme)(注2)とも呼ばれています。
ただ、この「同格」という訳にはちょっとした問題があります。実は「apposition」に「同格」という意味はないのです。「文法用語だからいいじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、筆者は、訳すからには元の語彙にそのかけら、雰囲気がないといけないと思います。ところが、「apposition」には、「同」も「格」もその片鱗すらもないのです。
どういうことかというと、「apposition」の語源はラテン語の「appositio」=「ap-<ad-」(「to」) + 「positio <"positus" <”ponere” (to put)」で「placing near or alongside」(並べて置くこと、並置) という意味です。英和辞書にもそう載っていますね。ではnative speaker(英語を母国語とする人)は、どう感じているのでしょうか?筆者の手元にあるポケットサイズのOxford English Dictionaryを見てみましょう。一般的な意味としてではなく、ちゃんとGrammarと添え書きしたうえでの説明になっています。
(引用)
APPOSITION:Grammar a relationship in which a word or phrase is placed next to another so as to qualify or explain it. (e.g. my friend Sue)
(語句が並置されて、並置した語句が並置された語句を限定又は説明する関係:訳筆者)
(引用終わり)
とあくまで語句の並列という意味しかありません。「同じ立ち位置(同格)」ではなく「修飾、被修飾」の関係にあるのです。ただ、並置なので同じ言葉をさらに詳しく言い換えていることにもなり、意味的あるいは文法的に「同格」的に解釈できるにすぎません。
ただ、この訳語は「apposition」の全貌を把握するには不適切だと思われるので、筆者は「同格」ではなく「並置」といった訳語がより適切ではないかと思います(以降、「apposition」に「並置」という用語を使用して話を進めていきたいと思います)。
(注1)筆者は「並置」という用語を使いますので、筆者的には「appositive genitive」は「並置の属格」という表現になります。
(注2)CURME ‘SYNTAX’ 10Ⅱ2 G P84 Maruzen Asian Edition 1959, Maruzen Company Limited, Tokyo, Copyright D.C. Heath And Company, Boston 1931、以下「Curme」
上記ポケットOEDの説明「my friend Sue」でいえば、「Sue」が「並置語」(Appositive=並置して主要語を修飾する語句)で、本体の「friend」を修飾しています。Sueという私の友達、ですね。
それでは「同格のof」とは何か?について考えていきましょう。つまり、本来「Apposition(並置=いわゆる「同格」)」というのは、名詞の横に説明のための別の名詞を「ポンと置く」ということでした。「my friend Sue」や後述の「King Henry」などがその例です。
そして、この「Apposition(並置)」が「of」を伴って現れた時、この「of」を「apposisional of(並置のof)」もしくは「appositive genitive(並置の属格)」と呼ぶのです。
この「of」は、所有の属格から発展したものだといわれます(注)。(Curme 10Ⅱ2G Apositive Genitive P84)
(注)Curmeは「the blessing of a good education」(優れた教育の賜物[たまもの])といった場合、所有の属格とも並置の属格ともどちらとも取れるとしています。
それでは、名詞を単純に並べた並置と「of」を使った「appositional of」はどう違うのでしょうか? 次の例で見てみましょう
(引用)
A.「"The color white is used to create a sense of purity."
(白色は純粋さを表現するために使われる)
B. "The color of white evokes a sense of peace."
(白という色は平和を感じさせる) 」(引用終わり)
[Supplied by CHAT GPT]
A. は硬い表現で「color」と「white」が意味的に強く結びついています。「白色」ですね。それに引き換えB.は説明的で口語的といった住み分けをしています。後述の「King Henry」がA.の例、「the title of Duke」がB.の例になります。
【例外】
ただし、A.であっても間にコンマを入れることによって、この固い結びつきを解消させ描写的、説明的にすることができます。
A'. Mary, the belle of the village (Curme 10Ⅲ1A P89)
(メアリー、村一番の別嬪さん)
B. においても、固有名詞の場合はこの限りではありません。
・the Republic of France, the State of Illinois など
【互換性】
また、後述のように、特定の名詞(※)を主要語として、後に続く並置語を「並置名詞節(いわゆる同格名詞節)」(=that+文)にしたり、「属格による並置名詞句」(of+名詞句 = appositional of)にしたりと相互に変換することができます。
「The hope that he may recover is faint.」⇔「The hope of his recovery is faint.」
(彼が回復する見込みは薄い)
※[英文法解説]によれば、約180語あるらしい。
(英文法解説改訂3版 §17 同格(2)P24 [解説]江川泰一郎 金子書房 1991)
C.「We are not investigating the question (of) whether he is trustworthy.」
(われわれは、彼が信頼できるかどうかという問題を調査しているのではない)
ここで、「of」はあってもなくても文は成立します。「of」がなければ、「単なる並置」、「of」があれば、「ofによる並置」となります。
【すそ野が広い並置構造】
一方、名詞句や節は上記のほかにも、後述するようにいろんな場面で「(ofのない)並置構造」をとります。これが「並置構造」のキモと言ってもいいでしょう。
cf. 後述2—2.名詞句の並置、2-3.名詞節の並置、2—4.関係詞節の並置、3.述部の並置(Predicate Appositive)、4.文の並置構造(Asyndetic Relative Clause)
これまで見てきたように、「並置」は語と語だけではありません。
名詞相当であれば、句や節を「並置」させることができます。さらには述部(注3)も並置されます。⇒ 4.「述部の並置」(Predicate Appositive)
(注3)述部:主語と対をなして文を構成し、主語について述べるもの(動詞、形容詞や副詞、またそれに相当する句や節など)。形容詞「beautiful」を例にとると、その用法は大きく2つに分かれます:
a) 限定用法(名詞の修飾語としての用法)a beautiful flower
b) 叙述用法(文の述語としての用法) The flower is beautiful.
この時、b) の「beautiful」が述語(Predicate)に当たります。Be動詞(is)は意味を持っておらず、単に主語と述語をつなぐ役割をしているだけで、「copula (連結詞)」と呼ばれます。この場合「copula (連結詞)」+ 形容詞が述部になります。
それでは、並置のパターンを見ていきましょう。
2.並置のパターン
2ー1.名詞の並置
最も基本的な構造です。
(引用)
「The color white is a symbol of purity.
(白は純潔の象徴である)
The article appeared on Fortnight, a magazine published on the West Coast.
(その記事は西海岸で発行されている雑誌フォートナイトに掲載された)」(引用終わり)
[英文法解説 改訂三版 §17同格 江川泰一郎 金子書房 1991]
the title of Duke
(侯爵の称号) [「同格のof」=並置の属格]
King Henry
(ヘンリー王)
(Curme 10 Ⅱ2 G. Appositive Genitive P84 )
2—2.名詞句の並置
Now arises the question of how to do it. (Curme 23.Ⅰa P202)
(今度は、それをどうやってやるのかという問題が発生する)
I don’t like :
a) your plan to go yourself (不定詞による並置)
b) your plan of going yourself (動名詞の属格[of]による並置)
cf. 節の並置 (次項2-3) (appositional clause): your plan that you should go yourself
(あなたが一人で行くというアイデアは、気に入らない)
2-3.名詞節の並置
「that」に代表される接続詞に導かれる並置節(一般的には「同格名詞節」と呼ばれています)
この「that」はご存じの方も多いと思いますが、もともとは「あれ/そのこと」といった指示代名詞(厳密には「限定詞的代名詞」)でした。そして「あれ」が何なのかを説明するために「文」が並置されたわけです(注3)。(Curme 24 Ⅲ P243)
次の文は、「接続詞that」が次に続く文を引き連れた名詞節として直前の名詞「hope」に並置されています。
The hope that he may recover is faint. (彼が回復する望みは、ほとんどない)
(Curme 23 Ⅰ P200)
他にも「whether + 文」などが名詞節として「question」などの名詞と並置されます。
We ought to discuss carefully the vital question whether we can do it or not. (relative)
(われわれは、それをやれるのかどうかという極めて重要な問題を慎重に議論しなければいけない)
cf.the question of our ability to do it (appositive genitiveによる節の短縮;節⇒句)
I have often asked myself the question whether I have the right to do it. (interrogative)
(はたして自分にそれをやる権利があるのかどうか、という質問を私はしばしば自問してきた)(Curme 23.ⅠP201)
(注)限定詞:限定詞というのは、冠詞(a、 the)、指示形容詞(this、that)(代)名詞の所有格(his、my)など名詞を限定する働きを持った一群の言葉のことです。(Curme 23 Ⅱ P204)
例えば、「That book is mine.」といった時の「that」が限定詞です。一つの名詞に限定詞は1つだけ付きます。なので、「that my pen」とか「a my pen」とは言いません。
(注3)もともとの構造は、次のようなものです。
I hope that : he may recover.
この「that」をCurme は「determinative pronoun(限定詞的代名詞)」(訳:筆者)と呼びます。次に続く並置文を指し示す限定詞であり、かつ「hope」の目的語としての代名詞でもあるということですね。
時代が経つにつれて「that」は、接続詞とみなされるようになります。
2—4.関係詞節の並置
A) I’ll lend you the pen with which I write.
(いつも使ってるペンを貸してあげよう)
「with which」に導かれた従属関係詞節が主節の「the pen」と並置されている構造になります。
関係代名詞も、元をたどれば限定詞になります。詳しくは「4.文の並置構造」および【余談ですが】をご覧ください。
3.述部の並置(Predicate Appositive)
上で名詞と名詞相当語句を見てきましたが、「並置語」は述語あるいは述部(Predicate=いわゆる動詞やbe動詞(Copula)を伴った場合の名詞/形容詞など、文の主要素のうち主語を除いたもの)もあります。その際、動詞は分詞(現在分詞/過去分詞など)という形を取ります。
述部の並置節は、主語を主節と共有します。つまり、主節の主語に並置された構文なのですが、通常の並置とは違って、主節の前か最後に並置されます。学校で習ういわゆる「分詞構文」がこれに当たります。
A) 形容詞:He came home sick. (彼は病気で家に帰ってきた。)
(「He」に対して「sick」がPredicate Appositiveとして「並置されている」)
⇐He came home. + ( He was) sick.
B) 副詞: Together we can never break. (一緒にいれば 僕らの絆は断たれることはない)
上にあげたのは、Little Glee Monster の「Waves」という曲からの一節です。
(引用)Together we can never break. (引用終わり)
ここで「Together」は「break」にかかるのではなく、主文とはいわば独立した形で並置されています。副詞の述語としての並置ですね。つまり、
When we are together, we can never break. = (Being) together, we can never break.
副詞はこのようにcopula (連結詞、繋辞)と組んでいわゆる「補語=述語」になります。
C)前置詞+名詞:She asked him in tears to come again. [ ( in tears )が述語]⇐ She asked him to come again.+(She was)in tears.
D)名詞(=述語[いわゆる補語]としての名詞):The two persons who had entered the house friends left it with feeling of alienation. (その家に入ったとき二人は友達だったが、出てきたときには気まずい仲になっていた)
※「friends」が本件、「with feeling of alienation」は前項C)「前置詞+名詞」による並置の例
「述部の並置」は主節の主語の説明だけでなく、副詞的な意味(~したので、したあと、しながら、したものの、したのに、など)を持つ場合があります。
E)完了分詞:Having finished my work, I went to bed.(=After I have finished my work,)
(Curme 6C P30)
F)現在分詞:
a) Taking all things into consideration, I must regard my life as a happy one.
(総合的に判断すると、私の人生は幸せだったと言わなくてはいけないだろう)
[主節の主語「I」 に対して、「Taking」以下の述部が「並置」構造をとっています⇐現在分詞と主節の主語が同じことに留意) ]
この種の表現が時と共に定形化し、次のb) のような特定の主語を持たない一般化した表現に発展していきます。この場合、主節と現在分詞の主語が同じではないので、これは「並置」ではなく、単なる従属副詞節になります。
(Curme 17 4 Absolute Participles PP158-159)
b) Taking all things into consideration, his life is a happy one. (Curme )
(全体としてみれば、彼の人生は幸せなものだ)
G) 過去分詞
Such things are better left unsaid. ([筆者注]=if they are left unsaid)(Curme 31 2 P329)
(そんなことは言わない方がいいよ)
「left unsaid」が「Such things」と「並置」されています。
ここで「ニック式英会話」のファンの方であれば、「あれ!」と思われるでしょう。ニック式の「奇跡の応用 文+αを付け足す」とそっくりなのです。ご存じない方のために、Youtubeの同記事から例文を引用させていただきます。[ちなみに、ここで言い訳をさせていただきます(笑)。筆者は決してニック先生のYoutubeを参考にしてこの記事を書いたのではありません。書いてるうちに、あれ!ニック先生の言ってることと同じじゃん!となったのです。ニック先生の「奇跡の応用」、現時点で5年前の記事ですが、おすすめです]
(引用)
a)「文+形容詞」「文+with名詞」「文+動詞ing」など、文の後に付け足すだけ
I woke up famous/with a hangover.
(朝起きたら有名人になっていた/二日酔いで目が醒めた)
b)「2つでも3つでも」
I cut my finger cooking watching TV.
(テレビ見ながらご飯作ってたら手切っちゃった)
(引用終わり)(附番及び訳は筆者)
↓
https://youtu.be/rfAp7SEC2D0
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「述部の並置」も「奇跡の応用」も文章の最後にポンと付け足すだけという基本の考え方は同じです。(「述部の並置」の場合は、文頭もあり。どちらも、主語を共有していることがポイントです)そもそも、「並置」というのは、並べてポンと置くということでしたね。
これを「同格」とかいう訳語で捉えていると、なかなかこうはいきません。「in tears」「with a hangover」も「副詞句として動詞を・・・」などと言ってると、この考え方は出てこないでしょう。とにかく「並置」(=ポンと横に置く)なのです。
4.文の並置構造(Asyndetic Relative Clause)
C) I’ll lend you the pen I write with.
この文は、関係代名詞「which」または「that」が省略されたものです・・・と学校では習いますよね。でもこれは関係代名詞の省略ではなく、古い時代にまで遡れる英語特有の原始的な表現方法、すなわち文と文が並置構造をとって結合しているのです。この構造は「asyndetic relative clause (繋ぎ止めるもののない関係節) 」と呼ばれます。(注4)
つまり、
C' ) I’ll lend you the pen: I write with (it).
で、並置された文の「it (=the pen)」を削除することによって、それが「the pen」を通して主文に従属することを表している、ということです。
(注4)Curmeは、このC)I’ll lend you the pen I write with.を「関係代名詞が省略された文と解釈するのは、ちょっと不注意ではないか」(「The usual custom of saying that the relative is omitted suggests carelessness・・・」(Curme 23 10 P234))と言っています。もともと、この文は並置構造で、最初から関係詞はいないのです。Curmeは、先行詞を指し示す関係代名詞が存在しないのだから、厳密な意味では関係詞節とは呼べないのではないか、と言っています。
【余談ですが】
いわゆる関係代名詞と呼ばれるものの生い立ちは、上記名詞節と同じく、限定詞に遡ります。
B) I’ll lend you the pen that : I write with (it).
もともと、この「that」は関係代名詞ではなく、「限定詞(determiner)」でした。正確には「determinative pronoun(限定詞的代名詞)」(訳:筆者)」(注5)になります。日本語の「それ」にあたります。「the」も限定詞です。なので、この部分を直訳すると「the pen that one」となります。
この構造は「double determinative (二重限定詞)」と呼ばれ、限定詞「the」と「that(=that one)」が「the pen」を前後に挟んで、ともに後続の文「 I write with (it).」を指し示しているというのです。
「that」に続いて「who」(注6)、それから「which」がラテン文法の影響を受けつつ同様に限定詞から関係代名詞へと変化していきます。
(注5)Curme は「限定詞」を名詞を限定する働きに特化した「a」(冠詞)「my」(人称代名詞の所有格)だけでなく、実態を持った「代名詞、that, those, which」などにも限定詞としての働きを認め、「determinative pronoun(限定詞的代名詞)」と呼んでいます。
(注6)「不定代名詞who」は「so who so」(=that somebody that one)という形で二重限定詞構造(注)をとっていました。時の流れと共に、まず最初の「so」が脱落し、つぎに後ろの「so」もなくなって、今の関係代名詞「who」が出来上がったのです。いまでも「whoever」の強調形である「whosoever」の中に昔の「so」の名残りを見ることができます。
(Curme 23 Ⅱ PP 205-209)
(注)「so」は限定詞です。
いかがでしたでしょうか? 「同格」という言葉に紛らわされることなく、文を読み進めていけば、奥深い「並置」の世界が見えてきたのではないでしょうか。
「並置」(ポンと付け足す)という見方をすれば、文脈次第で「順接」(なので)になったり、「逆接」(なのに)になったり、さらには「条件」(だったら)や「譲歩」(だとしても)になったりすることが、すんなりと理解できるのではないでしょうか:
「The wealthiest man in the town, he chose to live a modest life in a small apartment.」
(町で最も裕福な人物なのに、彼は小さなアパートで質素な生活を送ることを選んだ。)
(Supplied by CHAT GPT)
筆者が「Apposition(いわゆる[同格])」を「並置」という訳語にこだわる理由がなんとなくわかっていただければ、大変うれしく思います。
それではまた、お会いしましょう。


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