13-1 ティーと過ごす二日目の朝、俺は蛆実装達の声で目を覚ました。

雨戸を閉めてあるので部屋の中は暗い。
昨日と同じ要領でこちらを見えないようにして、レフレフと騒ぐ蛆達の箱を開ける。

「朝レフ?ウジちゃんゴハンがなくて悲しいレフ。死ぬレフ」
「昨日はプニプニどころか”プニ”すらもなかったレフ。一日も欠かしたことが無かったのにひどい話レフ」
「ゴシュジンサマおはようございますレフ。ゴハンが欲しいレフ。あと、くらいのはもうイヤレフ。ここから出してほしいレフ……」

俺は昨日こしらえたモノを箱に落とした。
蛆たちは、パサパサする、水が欲しい、と、文句を言っていたがなんとか食べてくれた。

俺は昨晩×印をつけなかった”食欲旺盛で元気な、頭の悪い蛆”を箱から取り出し、布袋に入た。
「くらいレフ…夜レフ?寝るレフ…レフー……」

すぐに寝息が聞こえてきた。扱いやすくて助かる。

俺は蛆を入れた袋と、その他に用意したいくつかの道具を抱えて離れに向かった。
13-2 離れのある庭に出て空を見上げると、どんよりと曇っていた。

晴れていたら、親が居ない時間帯に表でティーと”遊ぶ”つもりだったが、まあ仕方が無い。
俺は離れに入る前に、軒下のロープに干してあったティーの服を取り込んだ。
服からは庭に咲いた花の香りがした。

離れの部屋に入り、ティーの寝床を確認すると、ティーはまだ寝ていた。
昨晩与えた高栄養のフードと体に残った薬の為か、一番酷い足の刺し傷も既に跡形も無くなっている。

俺は持って来た物を予定した場所に配置した。
持ってきたのは、携帯電話、5センチほどの長さの青い釘一本、小さな黄色いカッターナイフ、
針立てに刺した糸の通った針、ダンボールで作った階段、家庭用シュレッダー。

釘、カッター、針、はテーブルの上。カッターは刃を出した状態にしてある。
階段とシュレッダーはテーブルの横に置いた。
シュレッダーを使うのはまだ先の予定だが、早めに設置して警戒心を解いておけば
面白い事が起きそうだと思い、持ってきた。

その他にフードや水、ティーの雑用の用意をした。
そろそろティーを起こそう。

* * *

追加 見取り図2

* * *

13-3 「こら、そろそろ起きなさい」
俺はティーの体を揺すった。

「テハッ!」
ビクンと体を震わせてティーは瞬時に目を覚ました。

「どうしたんだ血だらけで。布団に糞まで漏らしてるじゃないか」

「テェッ!…ムシが、ハエが、ハエがおそってきたテチュウ!!テェェエエン!!!」
ティーは昨日の恐怖を思い出し、俺の手にしがみついて激しく泣き出した。

「ハエじゃないだろう。ハエは刺したり噛んだりしない。そうだな…アブか何かだろう」

「”アブ”、テチィ?」

「ハエに似てる刺す虫だよ。大丈夫、アブは……夜にしか動けないんだ、うん。だから今は絶対安全だよ。間違いない」
俺は適当な事を言った。怯えて行動が萎縮しては面白くない。

「テチィ……アブ怖かったテチィ…でも、”これ”が守ってくれたんテチ!」
そう言ってティーは服を捲り上げた。
…なるほど、昨日胸に針が刺さらなかったのはこの為か。
服の下には妹から貰ったお守り袋があった。

「オマモリをクビにつけて、おフクの中に入れてたんテチ。」
あのお守り袋は錦の生地の下に和紙の芯があるので結構硬い。
加えて胴体と頭は偽石を気遣って軽く刺したから、針を通さなかったのだろう。

「オテテやアンヨは刺されても大丈夫テチ…でも、ムネのおイシを刺されたら死んじゃうテチ。
”オマモリ”が守ってくれたテチ!」
そう言ってティーは胸のやや右側をさすった。

「偽石の場所がわかるのか?」

「はいテチ。自分のおイシの場所は分かるテチ。ティーのおイシは、ここにあるテチ」

そこか……

俺はティーが手を当てた場所を記憶した。
13-4 「…レフー?…」

外の話し声で目を覚ましたらしく、袋の中の蛆が寝ぼけた声で鳴いた。

「テチ?」

「ああ、庭の隅の穴に落ちてたのを見つけたんだ。よく分からんが、お前らの仲間だろう?」
俺は袋から蛆実装を出し、ティーの前に置いた。

「レフ?広いレフ。明るいレフー」
蛆は周りを見回して、短い尻尾を振っている。

「テチー……カワイイ、テチィ…」
ティーは蛆を初めて見るもののように、不思議そうに見ている。
こいつの姉妹には蛆が居なかったのだろうか。

「…ウジちゃん、テチィ?」
「ウジちゃんレフよ?」
「テチュー…」
ティーはしゃがんで、蛆の頭を愛しそうに撫でている。
蛆は頭が揺れる度に、気持ちよさそうにレフレフ鳴いている。

「放っておいたら飢え死にしそうだったから拾ってきた。少しの間こいつの世話を頼む」

「はいテチ!このウジちゃん、オウチで飼うテチ?」
ティーは蛆を抱きかかえて、目を輝かせてこちらを伺う。

「その蛆がいい仔だったら、な。飼う事になったらお前の”妹”になるんだから、しっかり面倒見るんだぞ」

「はいテチ!ちゃんとイモウトちゃんのおセワをするテチ!」
”妹”という言葉の効果は絶大だった。ティーはすっかりお姉さん気分だ。
これだけ気に入ってくれれば結果も期待できるだろう。

「俺はこれから出かけなきゃならない。大丈夫だと思うが、”何かあったら”これを使って連絡しろ」
そう言って携帯を開いて床に置いた。携帯は既に電話番号をセットして、ボタン一つで発信できるようにしてある。
さらにそのボタンには目立つように緑色の紙テープを貼っておいた。
俺は念のため、ティーに何度か練習させ、ティーが確実に操作できる事を確認した。

その後、フードと水の用意をし、テーブルの上に風呂と洗濯の用意がしてある事、
テーブルの横の階段で上に上がれる事、テーブルの反対の隅には
危ない物がおいてあるから近寄らない事、などを説明した。

「それじゃあ頼んだぞ」
「いってらっしゃいテチ」
「レフー」

部屋のドアを閉めると、たちまち顔に笑いが浮かぶ。
ティーの嬉しそうな笑顔を思い出すと、期待せずにいられない。
今日も、とても楽しくなりそうだ。

俺は離れを出て、走った。

* * *

14-1 ティーは蛆実装を見た事は無いが、知っていた。
母親の胎教の歌で何度も聴かされていたからだ。

「ウジちゃんはいらないデス~……ウジちゃんは生まれないでいいデス~」

母親の胎内で、歌が聞こえる度に、ティーは自分の命の力が失われていく事を感じた。

「ワタチは”ウジちゃん”に生まれるタネなんだ。だから生まれる前に”ちぬ”んだ」

そう気付いたティーは、消えたくない一心で、必死で動いた。
胎児のティーには、おたまじゃくしの様な体をくねらせる事しか出来ない。
その行為にどんな意味があるかも分かっていたわけではない。
ただ自分に命のある事を感じたかった。

だが、その行為は功を奏した。動きによって臍帯が刺激されて太くなり、栄養の供給が増えた。
ティーは自分より小さな妹達が保護膜すら奪われ、消化されていく中、
どうにか親指としての素体を作る事が出来た。


しかし、生まれる資格を手に入れた代償も小さくは無かった。
親指としての素体を持ってはいるが、偽石の発育の遅れていたティーは、
手足の伸張に使うエネルギーを体中の細胞から集めた為、
体の色も抜け、親指としてもかなり小さく、弱い体になった。

主人である人間が世話をしていなければ、生まれてから半日も生きられなかっただろう。
ティーは生まれる前からずっと”死”の傍にいた、実装石の中でも特に儚い個体だった。

そんなティーであるから、初めて見た蛆実装に対して、
同類としての共感、死んだ妹達への思い、本能的な蛆に対しての保護欲が混然となった、非常に強い執着を持った。

「」が部屋のドアを閉めて出て行ったとき、
ティーもまた、これからの楽しい日々への期待に胸を膨らませて、笑っていた。
14-2 ティーは寝床の隅に掛け布団をドーナツ型に丸め、真ん中の窪みに蛆を置いた。

「レフレフ。ふかふかレフー」
体がぴったり収まる柔らかい居場所を設えてもらい、蛆はご機嫌だ。

「よかったテチ」
蛆のお腹を優しく揉む。

「プニプニレフ、嬉しいレフー。プニフー♪プニフー♪…」

プニプニされて大喜びする蛆を見て、ティーも微笑む。
妹をもっと喜ばせたい。色んなことをしてあげたい。
ティーの頭は妹を構う事で一杯だった。


ふと、ティーはほんのりと漂う匂いに気付いた。
匂いの元が自分の洩らした糞であることが分かると、慌てて片付け始めた。

「テェェ…イモウトちゃんが居るのに、恥ずかしいテチィ……」

敷布団はティーには大きすぎて洗う事が出来ないので、塊を取った後、残ったシミに何枚かティッシュペーパーを被せた。

「ウジちゃん、ここで大人しく待ってて、テチ」
「レフー」

ティーは自分の服と体を洗う為、洗濯桶と風呂のあるテーブルの上へと向かった。
14-3 「」が作ったダンボールの階段は幅も広く、しっかりした作りだったが、
自分で”高いところに上る”という事が殆ど無かったティーは少し恐怖を覚えた。

テーブルの上に上がると、近くに洗濯用と風呂用のお椀があった。

「ウジちゃん、オフロに入れてあげたら、きっと気持ちよくて喜んでくれるテチ」
そう思ったティーは、お湯を汚さないように、洗濯桶で体の汚れを落とすことにした。

脱いだ服を洗濯用のお椀に放り込んで、自分も中に入る。
服を揉んで水に馴染ませ、体を擦って血と糞を落とす。
水は冷たく、体が震えたが、我慢した。
汚れが落ちてからティーはお椀から出て、糞の付いた下着と洗剤を入れた。

蛆を連れにいこうと思ったが、裸でうろつくのは”姉”の行いとしてなんとなく悪いような気がした。
しかし、体が乾くまで服は着たくない。

「ぱんつだけ、履くテチ」

ティーは間を取った選択をし、畳んであった着替え中から下着だけ手に取った。

「いいニオイがするテチィ…」

下着からは春の花の匂いがした。
14-4 ティーがテーブルを降りて寝床に戻ると、蛆は水皿の前でグッタリして弱弱しく鳴いていた。

「ウジちゃん!?どうしたんテチッ!?ウジちゃん!」
「オミズ飲みたいレフ。ノドがカラカラで死ぬレフ…」
水皿は這い上がる傾斜など無い、人用の皿だった為、蛆は一人で水を飲む事は出来なかった。

「テェェ!!今飲ませてあげるテチ!」

ティーが慌てて蛆を持ち上げ、口を水面に着けてやると、喉を鳴らして水を飲んだ。

「オミズオイチイレフ、オイチイレフ……」
「良かったテチィ……」
「ウジちゃんお腹もすいたレフ。ゴハン食べたいレフ」

ティーはフードの入ったタッパーから一粒取り、餌皿の上で小さく千切って与えた。
フードは「」が市販のフードをふやかして潰し、いくつかの食材を加えて練り固めた物なので、しっとりと柔らかい。
また、砂糖と蜂蜜が大量に入っているのでお菓子のように甘い。

「アマアマのゴハンレフ!こんなの初めてレフ!すごくおいしいレフ~」
蛆は初めて与えられた甘いものに酔いしれ、蛆の食べる量としては多すぎる量を、あっという間に平らげた。

「元気が出てよかったテチィ」
夢中でフードを食べる蛆の様子を、ティーは微笑んで眺めていた。


楽しい事をしているわけでもなく、ただ一緒に居る事が嬉しかった。
ティーは前の主人に飼われていた時のように、家族の居る喜びを感じていた。
14-5 ティーは蛆をしっかりと抱えてテーブルの上の風呂に向かった。

「オフロレフー♪オフロレフー♪」
蛆はティーの腕の中で短い手を振り、陽気に歌っている。


餌を食べ終えた後、ティーはお風呂に入るように勧めたが、蛆はそもそも風呂と言う物を知らなかった。
生まれた時から風呂だけが楽しみだったティーは、風呂を知らない蛆の境遇にショックを受けた。
そこでティーは、いかにお風呂が気持ち良いものか熱心に語った。  

 オフロはとっても気持ちがいいテチ
 あたたかいオミズに浸かってポカポカテチ
 イイニオイのアワアワでカラダの汚れも落ちるテチ
 オフロの中は”ゴクラク”テチ……

ティーの話が終わる頃には、蛆は経験した事の無い風呂への期待に大興奮していた。


風呂の蓋を取り、温度を確かめると、まだ温かかった。

「それじゃ、オフロに入るテチ。オフクを脱ぐテチ」
「ウジちゃんオフク脱ぐの初めてレフ。こわいレフ」
「テェェ……カラダが汚れた時はどうしてたテチ?」
「ウジちゃんがクサくなると、大きなオテテがウジちゃんをつかんで、
スースーするオミズにつけて、ゆするレフ。カラダがヒリヒリいたくなるからキライレフ…」
「テエ…」

ティーはテンションが幾分下がった蛆を慰め、服を脱いでも怖いことは無い事を説明して、
蛆が服を脱ぐのを手伝った。
14-6 ティーは自分も下着を脱ぎ、蛆を抱いて湯船に入った。

初めて体験する暖かいお湯に、蛆は興奮のあまり僅かな糞を漏らした。
「レェェ……あったかいレフーン♪」
ティーは石鹸を手でこすり、たっぷり泡を立て、器用な手で蛆の体の隅々まで優しく擦った。

「レッフゥゥン!…すごいレフン…ありえない気持ちよさレフゥ~…レェェ~ン……レェェ~ン……」
ティーの手によってもたらされる快楽に、全身をピンクに染めて痙攣する蛆を優しく見つめつつ、
服を脱ぐときに蛆が言った事を考えていた。


ティーは最初、蛆を親からはぐれた野良実装だと思っていた。
だが、”大きなオテテ”と言っていたのが引っかかった。

小さな親指だった頃、大きすぎる人間は全体像が見えず、まさしく”大きな手”として目に映る。
そして、”スースーするオミズ”と、”カラダのヒリヒリ”も心当たりがあった。
やはり親指の頃、糞をした後、総排泄孔をスースーする水を染み込ませた紙で拭かれて、
その部分がヒリヒリ痛んだものだった。

人間に世話をされていた――それは飼い実装だったという事。

別に飼い主が居たら、蛆はこの家で飼えなくなる。
楽しかった気持ちが一気に暗く沈んでいく。

ティーは、蛆に生い立ちを聞く事にした。
14-7 「ウジちゃんは今までどんな所で暮らしてたテチ?」
「広くてガヤガヤなところレフ」

「ママやオネチャは居たんテチ?」
「居ないレフ。ウジちゃんがいっぱいレフ」

「…ウジちゃんはどうやってここのお庭にきたテチ?」
「オニワってなんレフ?ウジちゃんはいつのまにかくらいところにいたレフ」

他にも色々聞いてみたが、蛆の話はさっぱり要領を得ない。
どうやら人間に世話をされていたようだが、大事にされていた様子は無かった。

 ウジちゃんはいらないってママは言ってたテチ。
 このウジちゃんも、ニンゲンサンがいらなくて捨てたんだったら――
 ワタシが貰ってもいい筈テチ。

ティーは蛆が捨て実装である事を願った。

「……お姉ちゃんは誰なんレフ?」
「……ゴシュジンサマがウジちゃんを飼ってくれれば、ワタシはウジちゃんのオネチャになるテチ」
「ウジちゃんオネチャができるレフ?嬉しいレフー!」

「ウジちゃんはいい仔だから、きっと飼ってくれるテチ」

ティーは自分に言い聞かせるように言った後、
泡と湯を撥ねさせて、蛆と遊んだ。
14-8 ティーは蛆と充分に入浴を楽しんだ後、蛆を抱いて風呂から上がった。

タオルで蛆の体をくるみ、水気を取ってやると、蛆は清潔で柔らかい布の感触に、
「レフレフ」と嬉しそうに鳴いた。

続いて自分の体も拭き、用意されていた清潔な服に着替えた。

蛆には着替えがないので、服を洗う間タオルに包まっていてもらおうとしたが、
蛆は自分の服を着られない事を酷く怖がった。  


 ウジちゃんはゴハンもたくさん食べて、プニプニもいっぱいしてもらったレフ。
 オフロもポカポカで”シアワセ”になったレフ。きっともうすぐマユになれるレフ。 
 そのとき、オフクがないと困るレフ…。

蛆はそう思っていたが、うまく言葉にしてティーに伝える事が出来なかった。

ティーはやむを得ず今までの服を蛆に着せた。

蛆を抱いて下に運び、寝床の隅に作った蛆の寝床に寝かせると、
洗濯をする為にテーブルの上へと戻った。
14-9 ティーは服の袖をまくり、「テチ!」と気合を入れると、洗濯を始めた。

「テッチ!テッチ!……」
布を擦り合わせると泡が膨らんでくる。
その泡を見て、ティーはさっきのお風呂の時の事を思い出した。

「ウジちゃん、すごく喜んでたテチ。良かったテチ」
「ウジちゃんはお漏らししたけど、ちょっとだけテチ。 ワタシが小さい頃ウンチを漏らしたときは
全部出たテチ。ウジちゃんは”ユウシュウ”テチィ……」
「あのウジちゃんはすごくいい仔テチ。きっと飼ってもらえるテチ」
「ウジちゃんのオフクも買ってもらえるようにお願いするテチ」

ティーは嬉しくて、思っているだけでは堪らず、
洗濯をしながら取り留めのない独り言をつぶやいた。



ティーは10分程で洗濯を終えた。
蛆の傍に居たくて仕方がないティーは、急いで寝床に向かった。
階段を降りているとき、ウジの声が微かに聞こえた。
ティーは初め、ウジが待ちきれなくて呼んでいると思った。

「ウジちゃん、オセンタク終わったテチ!オネチャ、今いくテチィ」
いつもの手伝いが終わったから、後は自由時間だ。
ティーは蛆と何をしようか考えて、期待に笑みを浮かべた。



ティーは寝床に着いた。
蛆は部屋の隅のくぼみに居らず、手前の床にうつ伏せになっていた。

「い…たい…レフッ……レヒッ…レヒィ…」
蛆が震えながら、苦しげに呻いた。

ティーが聞いたのは、蛆が助けを求める声だった。

* * *

14-10 「ウジちゃん!!どうしたテチッ!?」

「いたいレフ……オナカ…いたいレフッ!…レケエッ!」

蛆は一際激しい痙攣を起こして、顔と後足で体を支える格好で背中を高く上げて、吐いた。

「レロォッ!!…レロップッ!…レロップ!……レケッ…レェ……」

苦しそうに舌を突き出し、何度か大きくえずいて、口からドロドロした濃緑色の塊を吐き出した。
吐瀉物からは糞の匂いがした。

「テエェェ!!ウジちゃん!ウジちゃん!」

ティーの目から涙がぼろぼろと零れた。
ティーはうずくまる蛆に駆け寄り、背中を擦ろうと、背中に手を置いた。

「レヒッ!?くるしいレフ、オナカやぶれるレフゥッ!」

「テチャアア!!?」ティーは慌てて手をどけた。

「ウジちゃあぁぁんっ!!…テェェェェン!テエェェェェェン!!」
ティーはどうして良いか分からなかった。痛がるので背中を擦る事も出来ない。
プニプニもできない。どうしたら蛆の苦しみを取り除いてあげられるのか見当も付かなかった。


ウジちゃんがちんじゃう!ウジちゃんがちんじゃう!誰か助けてテチ!
ゴシュジンサマっ!!イモウトサマ!!オニイチャンサマ!!  

心の中で「」に助けを求めたとき、パニックで頭から消えていた「」の言葉を思い出した。


『”何かあったら”これを使って連絡しろ』

「テチッ!」

ティーは大急ぎで「」の置いていった携帯の所へ行き、教えられた目印のあるボタンを押した。
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