カスタマーレビュー

  • 2012年5月28日に日本でレビュー済み
    小林さんがヤングサンデーで連載していた「厳格に訊け!」「最終フェイス」が大好きでした。

    宅さんの「業界恐怖新聞」から「週刊宅八郎」そして「処刑宣告」が大好きでした。

    地下鉄サリン事件が発生した後、ドキドキしながらSPA!を毎週読んでいました。小林さんと宅さんの論争の経過を固唾を呑んで見ていました。

    この論争の経過で、小林さんに失望した。この論争の後、何を言っても信用できなくなるほどにだ。

    本書66ページによれば、(当時の)ツルシ編集長が
    「覚悟あるんでしょうね、宅さんは反撃してきますよ。僕は宅さんの反論権を確保する義務があるから、それは絶対確保しますよ」と言ったら、小林さんは「わかった。ここまで描くんだから、宅からの反論をきちっと受けて、また反論する」と言う。

    本書89ページによれば、宅さんから決闘状を突きつけられた後の小林さんの言葉。
    「本格的に宅を全面攻撃したっていいんだよ。小学館から宅の資料を提供してもらったからさ。しかし俺はあんなヤツ相手にしないよ」

    そういう言い草は無いだろう。売れっ子漫画家に傷を付けたくないと思い、編集長が注意を促した。それでも自分の意思で同時連載執筆者を攻撃した。勝ち目が無いと見ると、版権を引き上げて他所の出版社に移籍する。当時ドキドキしながら真っ先に開けたSPA!で、(毎週2ページのはずの)「週刊 宅八郎」が1ページしか掲載されていなくて驚いた。十五年以上たっても、当時の経緯を鮮明に覚えている人は多いと思う。

    小林さんの表情は、(今に至るまで)どこか暗い。自分自身がだませないからだと思う。
    人間それぞれ意見の違いはいくらでもある。「自分の意見が絶対に正しくて、違う意見の人間は許さない」という主張は、カルト宗教と全く同じだ。小林さんには自分の信念が無い。

    当方、この論争の経過をドキドキしながら読むまで、「編集権」という言葉の意義を全く気にしたことがありませんでした。編集権の侵害を

    「ビートたけしがダウンタウンの番組内容を変えろ、と言いだすのと同じだ」

    と言う言葉で、宅さんが説明してくれたのがとても分かりやすかった。「もし自分が、本書の後半で登場するSPA!編集部の一員だったとして何ができたか?」というのは、サラリーマンの当方としては非常に身に詰まされる重たいテーマだ。

    実際の論争の経過を踏まえて、反論権や編集権といった「言論の自由」を担保するルール決めがどのようになされるのかを知ることができるので、星十個にしたい貴重な本です。
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