NHKプロフェッショナル仕事の流儀
英語講師 竹岡広信
『きっかけをつかめば人は伸びる』
【ドラマ・セリフ】
手っ取り早い方法を教えてやる
東大に行け!!
【ナレーション】
落ちこぼれ高校生がユニークな教師のもと東大を目指す
500万部を売り上げドラマ化もされた人気漫画「ドラゴン桜」
この物語に登場する英語講師には実在のモデルがいる
その男現役東大生からいまでも熱い信頼を集めている
【学生】
感謝、感謝、尊敬
あの人がいなかったら英語 ずっと嫌いだったし
英語の授業っていうよりもなんか、人生についてたたきこまれたみたいな
本当にあのぉ、ついて行きたいって思えたし
また授業受けてみたいなって気持ちにいまでもやっぱりなります
【竹岡広信】
よし、いくぞ~
ここから先はもうギリギリまで頑張ると
『英語講師 竹岡広信(当時44)』
【ナレーション】
予備校の特別講習
募集をすれば即日定員オーバー
授業はいつも熱気に包まれる
【竹岡広信】
あかん時はうなれよ ガォーと
なめんなよ、と
【ナレーション】
竹岡は言う、壁にぶちあたっても逃げるな
跳ね返されても必ず何かが掴める
『体当たり・真剣勝負』
【竹岡広信】
あきらめたら終わりやしね
突破口をみいださなあかん
絶対にね
『駆け出しの20代…全員不合格』
【竹岡広信】
生徒を壊したと思いましたね
生徒を壊した
うん、僕が壊した
『挫折から生まれた ドラゴン流』
『18歳の試練』
『涙の授業』
『生徒を信じる』
『“なにくそ!”負けたらあかん 英語講師 竹岡広信』
【住吉アナ】
大事なことはそれらを素早くイメージできるかどうか
つまり英語は想像力さえ旺盛なら全然難しくないんだ
これが落ちこぼれの高校生たちがユニークな教師のも東大を目指す漫画ドラゴン桜です
実践的な勉強法がふんだんに盛り込まれていまして、現在500万部を超えるベストセラーです
で、ここに登場する辣腕英語教師のモデルとなっている方が今日のプロフェッショナル
英語講師の竹岡広信さんです
【茂木健一郎】
うん、あのとにかくねぇあの漫画の編集者が参考にしようって言うんでね
東大生にどんな先生に影響を受けましたかって聞いたら
多くの学生がねぇ竹岡さんの名前を挙げて英語の成績がおかげで飛躍的に伸びたって言うんですよ
それでその教え方を漫画に取り入れたんですよね
【住吉アナ】
その竹岡さんは西日本各地の予備校や高校で教鞭をとるほか
地元京都で塾を開いている人気英語講師です
書いた参考書は10万部を売り上げ京都では
発売日に書店の前に行列ができたほどの人気なんだそうですね
【茂木健一郎】
ま、英語の教え方自体にはいろいろな流儀があると思うんですけど、
やっぱ僕が一番印象に残っているのはVTRで東大生が
人生をたたきこまれたって言ってたでしょ
“人生をたたきこまれる”教育とは
受験の現場のはずなのに人生をたたきこまれたって
一体どういうことなんでしょうね
だから今日は教え方の秘密に迫りたいと思います
『仕事の現場に流儀をみる』
『京都 亀岡』
【ナレーション】
丹波の山に囲まれた街
京都府 亀岡
住宅街の片隅に、英語講師竹岡の塾がひっそりと建つ
その名も『竹岡塾』
通っている生徒の多くは地元の高校生だ
1学年25人ほど
学力別のクラス分けは一切していない
【竹岡広信】
いっぱいです
もうあかんです
【ナレーション】
竹岡は人気英語講師として、各地の予備校や高校を飛び回る傍ら
週三日この自分の塾で教壇に立つ
この日は英単語を教える授業
竹岡の教え方の基本は英語の世界を映像でイメージさせること
スプリング(spring)こうは飛び出す感じね バンっとね
身振り手振りを交え言葉のイメージを伝える
教える単語は3年間で1000
一般的な受験単語集のおよそ半分から三分の一の少なさだ
厳選した英単語を時には語源にまでさかのぼって説明する
1つの単語に30分以上かけることも珍しくない
ここに英語講師竹岡が大切にしている信念がある
『遠回りこそ近道』
【竹岡広信】
勉強はね
遠回りした方が 絶対にいいわけ ある意味ではね
早く片付けてしまおうとしたらダメ
ゆっくりゆっくり行く
じわじわっと入れる
え~と では はい 質問のある人
【ナレーション】
塾の名物 質問だけの授業
この授業はたびたび中断する
コピーできるようにしといて
【竹岡広信】
え、今日一番の質問だと思いますね
【ナレーション】
生徒から難しい質問が出たとき竹岡は車で1分の自宅にとんで帰る
膨大な資料の中から説明にうってつけの材料を探し出すためだ
【竹岡広信】
どこやったんだよ…
あった!
これです
【ナレーション】
少しでもわかりやすい授業をするために竹岡は労を惜しまない
【竹岡広信】
ごまかしたり ひるんだら負けですね
すぐ敵は見抜きますからね あっごまかした 今って
それがちょっと続くと ダメでしょうね 信頼関係がくずれる
【ナレーション】
大切にしているのは生徒が知りたいと思った瞬間を逃さずに教えること
そして英語をおもしろいと思うきっかけを作ること
『きっかけをつかめば…自ら伸びる』
【生徒】
英語に対する
その自分のイメージが変わったかな
奥が深いなとか思っておもしろい味がわかってきて
塾入ってだんだんわかるようになったら
こう問題も解けるように
解けたらうれしいし
そしたら次もまたやろうかなみたいな
【ナレーション】
この塾では授業の後、生徒が自ら掃除をする
勉強だけの人間は半人前 掃除や挨拶のできる人になれ 竹岡の口癖だ
竹岡には生徒たちに伝えたいメッセージがある
『困難から逃げるな』
【竹岡広信】
10年後は全部忘れてますよね教えた英語なんてね
で、全部消えるんですよ知識は
で、その10年後に何が残っているのかっていうことですよね
勉強を一生懸命やったんやってゆうのが自信になればね
あとあとのねと思うんですよね
必ずしもそううまく行くわけじゃないんですけどね
努力が報われないときもありますしね
けどせめて全力出したっていう感じにはしてあげたいね なんか
【ナレーション】
全力で壁に立ち向かえ
生徒達にそう繰り返してきた責任を竹岡自身が問われた授業がある
去年の春、竹岡が教える京都の予備校に一人の生徒が入校してきた
本城令子さん耳が不自由なため言葉を聞き取ることが難しい
講師の口の動きと友人のメモを頼りに授業を受けていた
それを知った竹岡は授業のやり方を根本から変えた
話す内容を全て黒板に板書する
授業が遅れはしないか、最初は戸惑う生徒もいた
しかし、竹岡はやめようとはしなかった
毎週、毎週 授業の間中 話す内容をひたすら黒板に書き続けた
【本城令子】
自分の頑張らなあかんっていう
そういう苦労とか そういうものを
分け持ってくれた感じがして
みんなと同じようにっていうか
そういうふうに
授業を受けられることが
すごい
うれしかった
【ナレーション】
この日はクラス最後の授業
竹岡は感謝と激励のメッセージを書いて授業を締めくくった
【竹岡広信】
終わり!
【板書】
一番うれしかったことは、
こんな授業をしていたのに
だれも文句言わなかったこと
あんたらはえらい!!よって合格してこい!!!!!!!!!!
【ナレーション】
竹岡のもとに一人の生徒がやってきた
【生徒】
え~と手紙書いてきたんですけど
手紙を書いてきたんですけど
私、レイちゃん(本城さん)と仲良くて
私も片腕使えないんですよ
だから同じ障害を持つ身としたら
すごい うれしかって なのに
1年間 ずっ~と それをし続けてきた姿を見てて
なんか なんて言うかな 先生みたいな人がもっといると
本当やったら夢とか かなえたい人とかが
もっと夢が広がったりするのに とかって思って
ここに来て一番良かったと思うのは それやったから
それをどうしても伝えたくて
読んでもらっていいですか すいません
【竹岡広信】
住所書いてくれてるか
【生徒】
書いてないです
【竹岡】
書いて 返事したいし
【ナレーション】
授業は生徒との真剣勝負
竹岡の熱い気持ちは確かに生徒達に届いていた
【住吉アナ】
竹岡広信さんにスタジオにお越しいただきました
よろしくお願いいたします
【竹岡広信】
よろしくお願いします
【茂木健一郎】
いまあのぉ
教え子の方からの手紙読んでいるときになんか目に涙が光っているように見えたんですけれども
【竹岡広信】
いやぁもうねぇ
うれしかったですね
【茂木健一郎】
でもねぇ、1年間 言葉で言うのは簡単ですけれども ず~と全てのことを黒板に書き続けるということ これは並大抵のことじゃ無いと思うんですけれども
【竹岡広信】
やっぱり そのぉ 試されているっていう感じしましたね
【住吉アナ】
試されている?
【竹岡】
これでどうやねんという
これでおまえどうするっていうかね
ま、だから本当はね
あのぉ~いろいろと悩んだんですよ
あのぉ~1年勝負ですから 予備校は
そのぉ~効率を落としていいのかとかね 思ったけど
効率じゃ無いんだ
その え~ なんちゅうかな
僕もそんなに偉そうな人間じゃないですけれども
大事にしてあげなあかんのちゃうかというのがね こう…
【住吉アナ】
あの授業のほかの生徒さん達は、その全部板書の授業というのでもよくついてきましたね
【竹岡広信】
ねぇ僕はそこが偉いと思うんですよね
うれしかったですよね 一番ね
だからその代表としてきてくれたんだと思って嬉しかったんですね
嬉しかったですねぇ
【茂木健一郎】
僕はあとすごくおもしろいと思ったのは質問だけの授業で、家に帰るっていう
ちょっとびっくりしたんですけど
あれねぇ~段取り悪いですよね
やっぱりほら これ大事だよって
こっちから与えるのを聞いているのと
そのぉ これどうやねんって向こうから言ってくるのは全然違うんですよ
【住吉アナ】
あ、知りたいと思っている…
【茂木健一郎】
なるほど!これはいいですね だから質問したときが学習のチャンスと言うことですよね
【竹岡広信】
そうです、逆にああやって時間をかけると印象に残ると思うんですよ
【住吉アナ】
あ、そうですよね!私が質問したことで先生家に帰っちゃったって思ったら
【茂木健一郎】
確かに家に資料を取りに行っちゃうとその分の情報は減るわけですよね
時間的効率は悪いように思うんだけれども
でも その分ものすごい強さで相手の心にズドーンと入ってくるわけですよね
で、その方が長年あの、後をみると残っているんですよね
【住吉アナ】
さて、今日は竹岡さんに英単語の教え方を実演していただきたいと思うんです
黒板も用意させていただきました
【竹岡広信】
観念してやります
【住吉アナ】
黒板を使ってじゃあ単語を教えてもらいましょうか
【茂木健一郎】
ぜひこの番組としましてはプロフェッショナル
【竹岡広信】
あ、プロフェッショナル
【板書】
profess
confess
infant
『同じ語源を持つ単語を一緒に教えるのが竹岡流』
【竹岡広信】
こんなかんじかなぁ えとねぇ
pro-progress…前進ですよね
でfe-これは 言うなんですよ
だからパーンとものが言える人
これがプロフェスなんですよ
で、confessは
con-全部together フェス-言うだから~白状する
で、infantはものが言えないもの で、幼児
だからプロフェッショナル あのぉ
こう後ろめたい気持ちが無くて
はっきりと前に向かってバーンと述べれること
が、プロフェッショナルの語源です
【茂木健一郎】
本当に前向きにものを言える人
【竹岡広信】
そうですね
【茂木健一郎】
プロフェッショナルだ
『きっかけで人は伸びる』
【茂木健一郎】
あのぉ、竹岡さんがそのきっかけだけで人は伸びるってよく言われるんですけれども
本当に人はきっかけだけで伸びるもんなんですかね
【竹岡広信】
うん、あのぉ僕はそう思います
【茂木健一郎】
伸びますか
【竹岡広信】
うん伸びる
【茂木健一郎】
う~んそもそもきっかけを与えるということ自体が簡単なようですごく難しいですよね
【竹岡広信】
難しいですね
だからいろいろな手を変え品を変えだから
その単語から攻めたり文から攻めたり
歌から攻めたりするんですけど
これすごく辛抱がいるんですよね
だからきっかけを与え続けてそのきっかけに乗ってくるのを待つのがすごくしんどいですよ そのかわり
【茂木健一郎】
そこは我慢しなければならない
【竹岡広信】
我慢ですね
【茂木健一郎】
きっかけを与えるのは確かに難しくて
そのぉ、きっかけを与えるまでは生徒に苦労することはあるんだけれども
きっかけさえ与えれば あとは意外とスムーズに
【竹岡広信】
そうですね
【茂木健一郎】
なるほどふ~ん
【竹岡広信】
だからあのぉ
ま、センター試験だったら200点満点の試験なんですけれども
最初予備校の段階で60点もなかった子
これがその自分で始めて自分で走り出したときに最後に180後半とったていう
これは普通だったら絶対あり得ないけれどもそんな子もいました
それは別に僕が教えたわけじゃないんですよ その子走ったからですよ
【ナレーション】
生きた英語を教え、伸びるきっかけを教えようとする竹岡の授業
このスタイルは長い挫折の時を経て、作り上げられた
竹岡は昭和55年京都大学工学部に入学
将来はエンジニアを夢見る学生だった
18歳の時、実家の塾でアルバイトで英語を教えないかと誘われた
竹岡は軽い気持ちで話を受けた
自分の受験勉強のやり方をそのまま生徒に教えた
3000もの英単語の丸暗記
さらに読解力をつけるため1000の構文を覚え込ませた
こんなに熱心な先生は初めてだ
生徒からの信頼も厚かった
3年間教えて迎えた入試
竹岡には自信があった
しかし、結果を聞いて耳を疑った
【竹岡広信】
男子全員落ちたんですよね 全滅ですね
【ナレーション】
なぜダメだったのか竹岡にはわからなかった
一人の生徒が言った
3年間ありがとうございました
期待に応えられなくてすみません
【竹岡広信】
生徒は感謝する
けど壊したのは僕
はぁ~、これわかります?
これ 本当につらいですよ
【ナレーション】
当時竹岡はエンジニアを目指し、大学院に進もうと考えていた
しかし、失敗したまま塾を辞めるわけにはいかない
エンジニアの夢を捨て、文学部に編入
アメリカ文学を学びながら塾の授業に没頭した
時には参考書に月10万円以上費をやし、研究を重ねた
英単語の新しい暗記法を教え、大量の文法の書き換えをさせた
しかし、生徒の成績は思ったようには伸びない
一体何がいけないのか?
『おれは何をやっているのか』
【ナレーション】
かつての同級生は大学院を卒業し、大手企業で働き始めていた
竹岡は留年を繰り返し、3年目には休学どん底だった
自暴自棄になり毎日パチンコ店に入り浸った
常連の客から、「兄ちゃん若いのに毎日何やってんの?」とからかわれた
次第に彼らと顔なじみになった
ある日、常連の一人が競馬の話を始めた
血統や調教の方法、驚くほどの知識だった
【竹岡広信】
そのお母さんの何とかは、こうで
お父さんの名前は、こうで
今現在の馬体重はこうで こうこう こうで
うわっ 詳しいと思ってね
おっちゃん その力があったら
英語で全国トップとれるでって へっへっへぇ~
【ナレーション】
その話を聞きながら竹岡はハッと気づいた
『好きだから身につく』
興味を持てば人は進んで勉強し、自分のものにする
受験テクニックを詰め込むのではなく、英語のおもしろさを伝えてみよう
無味乾燥な例文を詰め込むのはやめ、英字新聞からニュースを拾い教材を作った
ビートルズの歌を関西弁に訳し、歌った
授業を受ける生徒の表情が変わってきた
次々と質問が出るようになり、次第に成績も上がりはじめた
ようやく見つけた突破口
英語を教え始めて10年が過ぎていた
【茂木健一郎】
でもねぇ、受験ってある意味じゃぁ究極の成果主義みたいなものですよね
やっぱり最初は全滅落ち込みました
【竹岡広信】
もう、なんちゅうかな
飛んでるんですよね 思い出したくないからかな
やっぱり、人間って嫌なときに飛ぶじゃないですか?
完全に飛んでしまっているんですよね
【住吉アナ】
覚えていないんですか?
【竹岡広信】
覚えていない
【茂木健一郎】
もう、真っ白って感じですか?
【竹岡】
真っ白よっぽど嫌だったんでしょうね
【住吉アナ】
その頃、あのぉ工学部時代のお友達は皆さん大企業とかに就職していくのをみていたわけですよね
どんな気持ちでしたか?
【竹岡広信】
うん、なんかあのぉ
こう 線路から外れたみたいな
自分を
まぁ、あの~ 正直後悔した日もありましたね
【住吉アナ】
後悔
【竹岡広信】
う~ん 工学部にそのまま残って、きちっとエンジニアになっておけば、良かったかなっていう思いは正直ありましたね
もう やることなすこと全部ダメだからね気分的に
【茂木健一郎】
好きなことだったら覚えられるんだ!!ってヒントをパチンコ屋でつかんだってそれはどんな感じだったんですかね
【住吉アナ】
おもしろいですよねぇ~
【竹岡広信】
やっぱりねぇ、日々ず~と僕がもし悩んでなかったら聞き流したと思うんですよ
【住吉アナ】
あ~
【竹岡広信】
す~ごく悩んでいて何か解決策無いかなって考えていて、たまたまその話が来たんですよね どっかに 刺さったんですよね そして動き出したんです 生徒みたいに
【茂木健一郎】
じゃあ逆に言うとそのとき質問をしていたんですね
【竹岡広信】
そうですどうしたらいいの?
【茂木健一郎】
世界に対して質問していて答えがバ~と入ってきたんですねだからつかめたんですよね
【竹岡広信】
そうです
『“学ぶ”とは-“教える”とは-』
【茂木健一郎】
それにしてもね、生徒に何で先生こんなに人間ってこんなに勉強しなければならないの?って聞かれることありません?
【竹岡広信】
あ~ありますね
【茂木健一郎】
そもそも何のために勉強ってするのって そういうときはどうやって答えるんですか
【竹岡広信】
うん、あのぉ~
人生のどっかの時期に
本当にあのぉ
なんか一生懸命やらなきゃあかん時期絶対にがいると思うんですよ
何かを
そのぉ~ 将来的に突破するためにはね
で、それは例えば そのぉ テニスでも野球でも剣道でもいいと思うんですけど
もし、勉強に向いている人が勉強が向いていると思うんだったら勉強をしっかりやったらって
やっぱり一時期にその 本当に困難と向き合って一生懸命やった時期がなかったら後々僕しんどいと思うんですよ
【茂木健一郎】
う~ん
【竹岡広信】
すっごく う~ん それがだから一つの方法として受験勉強があってもいいんじゃないかと思いますね
【茂木健一郎】
何かに向かってひたむきになんか頑張るってこと自体が人生にとっての糧になる
【高岡広信】
だと思いまねぇ
だから自信にもなると思うんですいろんな意味で
だから難しい問題が解けた!っ嬉しいじゃないですか おれやってんかって
【茂木健一郎】
人を教える上で一番大事なことって何だと思われます?
【竹岡広信】
ごまかさないこと
ごまかさないこと
【茂木健一郎】
ごまかさないこと
『教える上で一番大事なのは ごまかさないこと』
【竹岡広信】
真剣に向き合うしかない
同時に辛抱もいると思うんですよ
教師に 辛抱するこれはたぶん親でも一緒だと思うんですよね
この辛抱するのが本当につらいですけどねぇ
こうずっと待っているんですよね
こう一回や二回失敗してもねえ、三回、四回失敗してもね
ぐぅっと待ってるんですよ
【茂木健一郎】
辛抱を支えるものって何なんですかね?
【竹岡広信】
辛抱を支えるもの
それはやっぱり愛情ですかねぇ
【茂木健一郎】
愛情かぁ
【竹岡広信】
う~ん情じゃないかなぁ
【ナレーション】
平成18年元旦
これから3ヶ月が竹岡と受験生の正念場だ
【竹岡広信】
あのぉ、センター試験はもういっぺん言っておくぞ
お前たちが知らんことは出さない
当然ながらぁ
そのぉ~、文構造…
【ナレーション】
今年竹岡には一人気になっている受験生がいた
佐々木優さん
志望校は難関、上智大学の外国語学部だ
去年の夏、母親が癌と診断され入院を余儀なくされていた
【佐々木優】
もうちょっと 焼きたい
お母さんとは 今年会ってない まだ
明日かな 会いに行くのが 塾の帰りに行こうかなと思って
【ナレーション】
佐々木さんは両親と姉の4人家族
母親の看病のために、姉は正月も病院に行ったきりだ
家事は父親と分担
全ての時間を勉強に費やす余裕は無い
佐々木さんのもとには竹岡から励ましのメールが届いていた
【メール】
がんばってねなんでもいつでも言ってきなさい
【佐々木優】
なんかすごい心配してくれてるんやろなっていう気持ちが伝わってくるし
うん、なんか人間味がするから
うん、頑張れよって言われたら
あぁ頑張らなあかんなって思えて
元気でて あぁ またやろうとか思ったり
【ナレーション】
目指す上智大学の入試まであと1ヶ月余り
睡眠時間を削って受験勉強に打ち込んでいた
竹岡は佐々木さんの心の内が気になっていた
基本的なミスが目立つ
焦りすぎていると感じていた
【竹岡広信】
あのぉ できたら持っておいで
できた人から順番にね
【ナレーション】
この日佐々木さんたち私立大学の志望者を呼び出し、特別に授業を開いた
佐々木さんが目指す上智大学は難易度の高い問題が出題される
しかし、竹岡が渡したプリントは基本に基づいてしっかり考えると、答えられるはずの問題だった
【佐々木優】
失礼します
【竹岡広信】
ほんま合ってる?
ほんま合ってる?
ほんま合ってる?
【佐々木優】
えっ
そんなに聞くの?
【竹岡広信】
ほんま合ってる?
【佐々木優】
あ~ 怖い もう一回調べてくる
【ナレーション】
竹岡は答案を見もせずに佐々木さんを追い返した
佐々木さんに伝えたいことがあった
『ひとつのことを深く考える』
【竹岡広信】
だから、どういうことかというと
バーっていっぱいやって
適当に丸して
あ 違うた 合ってたって やってるのね
たくさんやったって伸びないんだよ
もうこれは経験上ね
もっと一問一問を大事にすると
今、二人考えてるやろ?
考えてるやろ? そこで力ついてんねん
良かったね おめでとう
【ナレーション】
時間が無いことを気にするな
ひとつのことを深く、深く考えろ
竹岡からのメッセージだった
【佐々木優】
確かに考えなあかんと思う もっと
極限まで
【ナレーション】
人生には何度も大きな試練がある
受験はその入り口に過ぎない
この夜、竹岡は毎年受験生たちに送る鉛筆を削っていた
一本一本に言葉を刻んでいた
『なにくそ!』
【竹岡広信】
最後のね ギリギリのところでどれだけ勝負ができるのかですからね 最後は
その困ったときに握りしめろって言うんです
本当にヤバイ時って人間って
もうあかんって思いますやん
もうあかん もうあかん もうあかん…
そこでもうあかんと思ったら負けやしね
で、“なにくそ!”っと
『1月19日』
【竹岡広信】
落さんようにな
頑張ってください
【ナレーション】
センター試験二日前
竹岡は受験生を集め試験に向かう最後の心構えを伝えた
【竹岡広信】
頑張ってください
とにかくもう十分に教えた
何もない
だから、今さら新しいものが もし万が一でて
あぁしんどいなと思ってもそれは周りもそう思っている絶対に
だからそこでビビらないこと
諦めたら終わりやしね
突破口を見い出さなあかん絶対にね
【ナレーション】
1月21日センター試験が始まった
いよいよ入試シーズンの幕開けだ
このあと私立大学、国公立大学と入試が続く
生徒達を送り出した竹岡 翌日、予期せぬことが起きた
『1月22日』
【ナレーション】
癌と闘っていた佐々木さんの母親が息を引き取った
【竹岡広信】
お母さんに挨拶してきました
非常にあのぉ
え~元気に振る舞ってはいましたけどね
あの子のことやからね
うん、せやけど まぁ そんなことです
【ナレーション】
上智大学の入試まであと2週間だった
1月23日、早朝
福岡の予備校に向かう竹岡のもとに次々とメールが届いた
塾生からのセンター試験の結果報告だ
【竹岡広信】
英語は191 リスニングは満点
英語169 う~ん まずまずですね
リスニング46 おぉ奇跡が起きた 良かったやんかぁ
【ナレーション】
塾生の英語の平均は182点
全国平均を55点上回った
次は佐々木さん達、私立大学の結果を待つ
2月10日上智大学の合格発表日
【竹岡広信】
気にはなりますねぇ
ま、鳴ったら勝ちでしょうね 鳴ったら勝ち
【ナレーション】
母親が亡くなった直後に、入試に立ち向かった佐々木さん
竹岡は祈るような気持ちだった
【竹岡広信】
あかんかったかなぁ やっぱり今日は… くそぉ
《チャイム》
【ナレーション】
竹岡の携帯電話は鳴らなかった
竹岡はいつも生徒達に、困難にぶち当たっても“なにくそ”と立ち向かえと繰り返してきた
佐々木さんにもその言葉は届いていると信じる
三日後、メールが届いた
【竹岡広信】
え~ 残念な結果です
あかんかったみたいです
【ナレーション】
先生上智あかんかった~~
ずっとしょぼんとしてて連絡できませんでしたごめんなさい
でも、めそめそしていても仕方が無いし悔しさを胸にしまっておくだけでは、努力しなかったことと同じになるから
新しい目標に向かって勉強しようと決めました母のためにもまた前を向いて歩んでいきたいと思います
【竹岡広信】
また歩き出したらしいですね
いいじゃないですか
うん、結果はついてくるときもあるけど、ついてこない時もありますよ
なんでもそうですよ 人生では きっとね
けど そこで、くさらんとね
もっぺんやったらぁと思ったら ええんちゃいますかね
【ナレーション】
竹岡は佐々木さんにメールを返信した
本当に残念 けど負けるな
『プロフェッショナルとは、』
【竹岡広信】
まぁ 失敗に 失敗を重ねても
それを絶対忘れないで次につなげていく人
だと思います
【ナレーション】
3月 全ての入試を終えた佐々木優さんが竹岡のもとを訪れた
その後、関西の有名私立大学に合格
進学し英語の勉強を続けることを報告した
【竹岡広信】
しかし、おまえようあの精神状態で頑張ったでぇ
【佐々木優】
いや、もうちょっと 頑張れた
それはそうだけど まぁ また次につながるよ 確実につながるって
まぁ よう頑張った