灯火の星 〜The One Story of Ours〜   作:蘭沙

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なんか書きたいこと書いてたらいつもより長くなってしまいましたが、まあいいか。


二十一話 彼らは勇者

シークを救出したファイター達一行は、むらびとが塞いでいた道を選び、進むことにした。道の先にいるスピリットを退け、進んだ先にはまたもや分かれ道だ。

 

 

「また分かれ道かー」

 

「ぽよぉ…」

 

 

左に進むか、まっすぐ進むか。木の棒を地面に立てようとするむらびとや、それを見守るパックマンを尻目に、シークはそのまま進む道の先に見たことのある塔を見つけた。

 

 

「ーっ!」

 

 

あの塔は。間違えない。絶対に彼はあそこにいる。確信に近いカンだった。

 

 

「ねえ、みんなが良ければボクはこのまま、まっすぐに進みたいんだ。」

 

「えっ?」

 

 

お間抜けな声を出したむらびとと同じタイミングでシークの方へ向くパックマン。その瞬間、棒は倒れた。奇跡なのか、棒の御告げはシークに従えと言っている。

 

 

「構わないけど、どうして…」

 

「あれを見て欲しい。」

 

 

気づかなかったファイターが、あっ、と声を上げる。そこにあった塔は間違えなくフィールドにもなっている始まりの塔だったのだ。でも、それだけではない。そこは復活の英傑の始まりの場所だった。

 

 

「そうか… じゃああっちにいるファイターには悪いけどこちらを優先させてもらおう。」

 

「ありがとう。」

 

 

シークは一言お礼を言う。気持ち的にも逸っているのか、先頭を歩いている。

 

 

「少し聞いてもいいか、シーク。」

 

「なんだい?」

 

「今のリンクと君とは世界は同じでも住む時間が違うと思うのだが、いつの間にここまで仲良くなっていたんだ?」

 

「ああ、そんなことを聞きたかったのか。」

 

「無理に聞こうとは思わないが…」

 

「別に難しい話じゃない。実はこの服、彼から貰ったのさ。」

 

「おおー! ホントホント!? リンクってばやるじゃん!」

 

「インクリング? 別にそういう関係じゃ… 聞いてないね、うん。」

 

 

オリマーの問いに答えるシーク。そしてその回答に興奮するインクリング。ふおぉぉ、と顔を赤らめていて、シークの否定も全く聞いていない。

 

 

「おんなじ名前のゼルダもいるよね! お姫様のゼルダもいるよね! まさかのリンクが取り合いっこされるポジション! でもリンクは忍者の方のゼルダに矢印伸びてて… ありゃ? トゥーンもリンクだし、こどもリンクもリンクだし… あれれれれ?」

 

 

最初は発達した妄想にさらに赤い顔をしていたが、途中から二人の勇者も参戦して訳がわからなくなる。別の意味で体温が上がって頭から湯気が出た。完璧な知恵熱だ。

 

 

「やっぱりインクリングわかってなかったかー。まあ、最初にリンクとゼルダが違う二人に代わった時驚いたよね?」

 

「そうだね。しっかり説明されるまで検討もつかなかったし…」

 

 

まさか、同じ名前程度にしか思っていなかったとは。そこから話が膨らむマリオとマルス。

 

 

「おい、嬢ちゃん。」

 

「ふぇ?な、何、スネーク…」

 

 

しゃがんでインクリングに耳打ちする。更にインクリングの顔が赤くなっていく。

 

 

「シーク! 早く行こう! あたしはシークもリンク兄弟もゼルダも応援するよ!」

 

「んっ?」

 

 

こてんと首を傾げる。どうやら何か吹き込まれたらしい。

 

 

「スネーク… 何言ったの…?」

 

 

鉄の体よりも冷たい視線でスネークを睨むが、本人はどこ吹く風だ。

 

 

「さあ、どうだろうなあー」

 

「大嘘ついて… 後で訂正してあげてくださいね?」

 

「気が向いたらな〜」

 

 

これ、絶対気が向かないやつだ。渦中のスネークとインクリングとシーク以外のファイターは思った。

 

 

 

 

シークのカンは当たり、始まりの塔と思われる建物の麓には一人のファイターがいた。その周りには多くのスピリットがおり、手分けして彼らを解放しながら進んでいた。

 

 

「とりゃああ! 二枚抜きぃ!」

 

「はやっ!? まだパックマン戻ってないよ!?」

 

 

一体何がここまでインクリングを奮い立たせるのか、ファイターへの道を邪魔するスピリット二組をとてつもないスピードで撃破した。最初はパックマンとほぼ同時にワープしたはずなのに、追加で一戦加えてもなおインクリングの方が速い。ロックマンが驚くのも無理はない。

 

 

「人の恋路を邪魔する奴らはー! 馬という生き物になんとやらー!」

 

「随分と曖昧だね…」

 

 

最早訂正もめんどくさくなったのか、恋路に対しての反応はなかった。ちなみにインクリングが戦った相手はフィオルンとリリーナという、恋路を突き進みまくっている者であった。シュルクやロイとともに戦っているのを見て何も考えなかったのか。

 

 

「はい、どーぞシーク様! リンクへの道はこちらであります!」

 

「ふふっ」

 

 

恐らくレッドカーペットがあれば敷かれていただろう。大袈裟な動作に微笑みを隠しきれなかった。

そして、ゆっくり前を見据え、真剣な表情になる。やはり、間違えなく目の前にいるファイターは彼だ。

 

 

「ありがとう、 …いや、感謝いたします。インクリング。」

 

「うん! …ありゃ?」

 

 

どうして目の前にいる人が麗しきお姫様の姿に見えたのか。シークが転移して、気のせいと判断した錯覚も消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回この世界に呼ばれたのはボクだけだった。前はリンクもあのガノンドロフも居たというのに。みんなに聞いた限りでは、前回とは違う時間の誰かを同じファイターとして呼ぶことがあるらしい。そうやって誰かが呼ばれて… そして誰かが呼ばれなくなる。

でもそれならば、どうしてボクだけを、さらにシークとしての自分だけを呼んだんだ。その理由を知るのは人間より上位の存在だけ。聞いたところで現実は変わらないだろう。

それでも何度見たって、ゼルダとして交流するのはボクじゃないし、ガノンドロフは自分の記憶にあるよりもずっと筋肉質だし─何よりリンクはあそこまで快活な青年ではない。

 

 

『居たー! こどもリンクー!』

 

『トゥーン? ぼくに何か用なの?』

 

『ポポとナナが登山教室するんだって!ボク達も行こ!』

 

『登山? 別に興味ない…ああもう、引っ張るなって、わかった、行くから』

 

『はあ…』

 

 

思わずため息がでる。同じく引き続き呼ばれたトゥーンは最初こそ戸惑っていたものの、新しい友達も出来て楽しそうだった。ボクは彼みたいに割り切れそうもない。

 

 

『おっ、いた、シーク!』

 

『あっ… リ、リンク。』

 

 

青い服を着た彼。彼をリンクと呼ぶのに未だに慣れていない。

 

 

『なんかさ、最初会った時からずっと元気なくね?』

 

『…そう? そう見えるかい?』

 

『うん。それで俺考えたんだけどさ、多分ホームシックじゃないか!?』

 

『えっ?』

 

 

意外な言葉に反射的に驚きが漏れ出す。確かネスがたまに家族を恋しがってた時のことをそう言っていた気がする。家族をリンクや元の世界と捉えればそうかもしれない。

 

 

『だからこいつ持ってきたんだ!』

 

『…服?』

 

『シーカー族の忍びの服! そんなポンポン元の世界には戻れないけど、これでなんとか… ってこっちのシーカー族の文化と同じとは限らないか…』

 

 

クスっと笑った。性格も見た目も住まう時間も違っても彼らは勇者。人のために動けるリンクなんだ。

 

 

『ありがとう、リンク。お陰で元気が出たよ。』

 

『あ、それでいい? ま、喜んでくれたらいっか!』

 

 

そう言って、歯を剥き出しにして、にかっ、とリンクは笑った。

 

 

 

 

『…』

 

「インクリングが聞いてきたよ。こんなこともあったね。」

 

 

譲り受けた服を纏ってシークが立つのは、『終点』の地形となった『始まりの塔』の最上階だ。でも、見渡す景色はさっきまでとは全く違う。真下の大地を見下ろしても、きっと他のファイターは居ないのだろう。

ここに居るファイターはシークと目の前にいるリンクだけ。リンクは奇しくも百年前の自らのように表情が動かぬ冷たい瞳をしていた。その百年前を知らないシークには酷く異質に見える程に。

 

 

「…ハアァ!」

 

『…っ!』

 

 

ほぼ同時に駆け出す二人。退魔の剣の一凪を勢いを殺さぬままに躱し、後方に蹴った。ハイリアの盾でガードされるが、それを足場にして距離をとった。

 

 

「………」

 

 

『仕込み針』を放つ。確実に当たるよう量を多く投げたのだが、剣と盾を扱い、ほとんどが防がれてしまった。

 

 

「さすがマスターソードに選ばれた勇者ってところか… 真正面からぶつかってもまず勝てないね。」

 

 

ドレスを捨てたシークは動きこそ速いが、パワーはそれほどでもない。力とテクニックを兼ね備えたリンクとまともに撃ち合ってもジリ貧になるのだ。とはいえ、速いだけでどうにかなるような相手ではない。

 

 

「(隙を作って少しずつダメージを与えていくしかない。でも、何度も繰り返してたらバレるだろうし、三回が限度かな)」

 

 

トップスピードで、リンクの横を通り抜ける。意表をついたにもかかわらず攻撃はなかった。

 

 

『…っ!?』

 

 

相手に攻撃する気がないのならばそれでいい。こちらはしっかり戦わせてもらう、とばかりに『ブーメラン』を投げる。

 

 

「本当に通り過ぎるだけだって思ったの?」

 

『っ!?』

 

 

投げてから気づいた。リンクの左手付近に『炸裂弾』が投げられていたのだ。盾のガードを警戒したのか体にほど近い場所に。流石に投擲の動作から爆発には間に合わず。爆音が鳴り、一時的に聴覚と視覚を潰した。

 

 

「ここは逃せない!」

 

 

跳び上がって蹴りをくらわせる。さらに手刀での攻撃も放とうとするが、

 

 

「…っ!」

 

 

ここは盾で防がれた。それを知覚した途端、シークは咄嗟に飛び退く。カウンターを受けると予測したからだ。

 

 

「次!」

 

 

引き摺る訳にはいかない。すぐに次の動作に動く。先程と同じように広範囲に『仕込み針』を撃つ。これならば、避けるにせよ防ぐにせよ、何か動きがある。その隙を突こうとしたのだ。

 

 

「なっ…!?」

 

 

だが、リンクが行った対処は、シークの予想の上をいく。その場を動かず、左腕で目の保護をする程度の防御しかしなかった。確かにダメージはあるが、パワーのある攻撃ではないので微々たるダメージしかなかった。そして何より、腕を動かしている程度の動作では隙など作らない。

 

 

「(まさか… もうこの戦術に対応したのか?)がぁっ…!」

 

『…』

 

 

英傑と呼ばれるほどの存在相手には少しの隙すら命取りだ。即座に間合いを詰めて、思考しているシークを捕まえ、腹部に膝を入れる。一瞬意識が飛ぶが、 地面に叩きつけられ追加で肘が入ったところで覚醒した。振るわれた剣を紙一重で回避。即座に離脱し、距離を取る。

 

 

「完全に格上の相手…」

 

 

間違いなく。距離を取るのも、最適解ではない故、集中力を切らせない。

 

 

「だめだ… 少し荒っぽい方法でもやらないと。」

 

 

放たれた矢を最低限の動きで躱す。そして腰を下げた低い体勢のままリンクの方へ走り出した。

 

 

『っ!』

 

 

勝負は一瞬。盾で防がれたらもうアウトだ。

 

 

どう動く?

 

 

何で対処してくる?

 

 

避けるならばどっちに?

 

 

 

 

「(『ブーメラン』!)はっ!」

 

『…!?』

 

躱して、思いっきり蹴りつけた。空へ、ハイラルの空にリンクは投げ出された。後を追ってシークも飛び出す。目指すは外。

 

 

『うっ…!?』

 

 

『跳魚』の技でリンクの体を押し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インクリングと、彼女に強引に脇へ隠されたロックマンはそっと二人の様子を見ていた。

 

 

「………」

 

「インクリング、ロックマン、こっちの方は片付いたんだが、ちょっとこっちに来て欲しくて…」

 

 

無言でスプラローラーを振り下ろす。

 

 

「待って待って待ってくれ!? 私が一体何をして… わああ!?」

 

「インクリングだめだめ! オリマーさんも静かに! ね!?」

 

「わかった… ただちょっと知恵を借りたいから後で来て欲しい場所がある。」

 

「はーい…」

 

 

むすっ、と膨れながらも、ずっと視線は二人の方へ向いていた。

 

 

「そっか、キーラにやられて… はあ… せっかく送り出してくださった姫様に面目無い…」

 

「気にすることはないよ。そもそもまともに抵抗出来た人の方が少数だからね。…ちなみにその姫様って」

 

「うん、こっちの時代のゼルダ姫。ただ被害は俺たちだけじゃないんだな…」

 

「…ねえ、少し聞いてみたいことがあったんだ。どうしてボクにこの服をくれたの? まさか、本当に元気がないように見えたから?」

 

 

リンクは少し考えてからこう答えた。

 

 

「確かにそれもあるけど、違う時代のゼルダ姫と交流したかったんだ。」

 

 

一度切って、続ける。

 

 

「幾度もハイラルが危機に陥るということだけど、同じ数だけ俺… リンクがいて、ゼルダ姫がいる。それでも違う時代の二人と関わることはない。でも、ここならそれが出来る。ここでしか出来ないならやりたいんだ。」

 

 

ここでしか出来ないことをする。違う時代のゼルダとの交流。

 

 

「そっか…(キミはボクが気づくよりもっと前にボクをゼルダと呼べたんだね。キミの時代のゼルダとは違う人物なのに。)」

 

 

この勇者はとっくに先を行っていた。

 

 

「ふふっ、キミには敵わないね。」

 

「…? 負けたからこうして動いてるんだけど?」

 

「こっちの話だよ。」

 

 

勇者と姫は住む時代も違うけど、それでもリンクで、それでもゼルダ。たとえ姿が変わっても、記憶がなくなっても変わらない。




インクリング「シークさ、たまーにゼルダって呼ばれてない?」

シーク「まあ、本名はゼルダだからね」

インクリング「じゃあさ、トゥーンもこどもリンクもリンクってつくのは何故?」

リンク「え? うーんと… みんな…本名リンク…だから?」


リンク「次回! 『地獄の沙汰もベル次第』! …えっ? これがタイトル?」


スネーク「三人のリンクは、父が亡くなった所為で生き別れた兄弟。だから父と同じ名前を名乗っている。双子の姉であるシークは既に1番上のリンクと恋仲だが、そのリンクが好きな妹ゼルダと気まずくなるから偽名のシークで変装までして付き合っている。それで今は二人のリンクが妹ゼルダを…」

インクリング「キャー!」

シーク「何吹き込んでるの!?」

リンク「事実無根だ!」
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