灯火の星 〜The One Story of Ours〜 作:蘭沙
光で出来たキーボードの上を指が軽やかに打ち付ける。ハッキングに取り組んでいるのは、マルス。いや、彼の物より薄い水色の目をする彼女は秘書スージーだ。かつてはポップスターをキカイ化しようとしたハルトマンワークカンパニーの秘書。故にこの程度のセキュリティは意味を成さない。
最後のキーを打ち込むと、画面にはUNLOCKと表示され、堅固な扉が開かれた。それを確認すると、スージーはマルスの体から抜け出した。
『…これでいいでしょ? カー…ピンクの原住民。』
「すーじー! あいがとっ!」
「ああ、助かった。スネークやサムスを先に見つけなければいけないと思っていたからな。」
「まあ、多くの世界の人々がスピリットとなっていますから、中にはこういう方もいるでしょう。カービィさんのお知り合いにいたのは予想外でしたが。」
「ボクもボクも! こういうのポップスターには無いと思ってた。」
彼女の技術は別の星から持ち込まれた物なので、マリオ達の思い込みは間違っていない。
「…プィ」
「…」
後ろで歩いていたピチューだけ会話に入らず、そっと顔を背けたのをただ一人が気づいていた。
分かれ道の片方にいたスピリットを退け、前方が開かれると、ファイターが一人いるのを見つけた。ちなみにそのスピリットは解放するや否や、どこかに飛んで行った。薄情な奴である。
「おっと、誰かいるね。」
続けて、誰なのかわかる人! とマリオは声を上げる。各々反応を見るが、手を上げるような者はいない。
「う〜ん、誰もわかんないか〜」
「仕方あるまい、誰が戦うかだが…」
ピッと短い手を挙げる。頭が大きいので、手では高さを稼げていなかった。
「ピチューさんですか? でも先程の疲れが…」
「…いいよ、行っておいで」
「マルスさん!?」
驚いてマルスの方を見るWii Fit トレーナー。先程のことがあって、それでもピチューを乱闘にかりたたせるのか。
「…そうだ。僕はさっきまでは安全重視だった。でも気づいたんだ。」
マルスは一つ区切って言葉を続ける。まるで、独り言のように小さく呟く。Wii Fit トレーナーの制止は今のピチューには効かない。
「ピチューさん!」
「ピチューは…ここまで心配されなければならない程弱くはないんだ。」
ピチューがワープした。もう、彼らは大乱闘が終わるまでこの戦いに干渉する術はない。
「………」
マルスはピチューがいた場所を見つめていた。ピチューが一番嫌いなことは、見た目通りの扱いを受けることだった。手加減も弱者扱いされるのも嫌であった。
「(忘れていたらしい… ダメだな、僕は。)」
自重気味に笑う。自意識過剰のつもりはないが、ルキナやクロムから英雄王と言われ、少し調子に乗っていたのかもしれない。
マルスの左肩をポンポンと叩く。振り向くと慌てた顔のパックマンがいた。
「どうしたの?」
周りを手で差しぐるりと回し、そこから腕でバツマークをつくる。そして囚われているファイターの方角に手をやった。
「…?」
彼の手が動かすがままに周りを見渡し、ファイターを見渡し… 一人足りない。インクリングだ。
「インクリング!? インクリング!」
「あれっ? ホントだ、いない!?」
パックマンが囚われているファイターの方角を指していたことを思い出し、全てを理解した。
「まさか…」
やはり、自分は何も見えていない。ピチューは悔しかったのだろう。
ではもう一人。あの強力なスピリットの知り合いと言った彼女は何を思ったのか。どう思っていたのか。
ここは『ワイリー基地』。ロックマンの宿敵であるDr.ワイリーの根城だ。ここで最後の守りとして、Dr.ワイリーは手下達をどんどんとロックマンにぶつけてくる。元々地形がシンプルなので、変わりないように見えるが、ここも『終点』化されているのだろう。
「…! チュウゥゥゥ…」
相手を確認する。ロックマンだ。この世の平和のために自ら戦いに身を投じたロボットだ。ロボットに似つかわぬ子供のような精神は鳴りを潜め、無機質にファイター達に襲いかかる。
『メタルブレード』がピチューに飛んでいく。ジャンプで躱そうかと思った時、鉄の刃はおもちゃのような銃に弾かれた。
「ピッ…!?」
「もー、随分仏頂面になっちゃったねー。ほら、スマイルスマイル!」
インクリングだ。こっそりとこの乱闘に参加していたのか。
「…ッ! ピチューピッ!ピチュピチュ!」
電撃を漏れ出しながら、インクリングに抗議する。
「あははっ、ゴメンね。でも、あたしも悔しかったのよ。」
ピチューのことを考えていたマルスに従ってあの場は離れた。でもオオデンチナマズのことを考えるなら無理にでも戦うべきだったのかもしれない。マルスのことを自分への言い訳に使っていたのだ。彼女が悔しかったのはオオデンチナマズを解放できなかったことではない。自分のエゴで動かなかったことだ。
「あたしはね、どうしても守らなきゃいけない秘密があるんだ。あそこで戦うことでその秘密がバレるんじゃないかって不安になってぇ…!」
そんなことは御構い無しと言わんばかりにロックマンは『フレイムソード』で攻撃する。間一髪シールドが間に合った。
「話してる途中でしょっ!」
『スプラシューター』から放たれたインクがカス当たりした。足のつま先を少しだけ染めた。
「ふう… まあ、言い訳って訳じゃないけどね。でも戦うべきだったって思うよ。その秘密って別にオオデンチナマズには関係ないし。」
「… ピッ…!」
ダッシュで近づいていたロックマンを『でんげき』で牽制する。跳んで回避したところをインクリングの投げた『スプラッシュボム』が直撃した。
「だーかーらー! 話の途中だってさっきから…!」
いつのまについていたのか。インクリングの身体には『クラッシュボム』が貼り付いていた。ピチューは気づいていない。
「ヤバイッ!」
ピチューと距離を置き、爆発に巻き込まれないようにする。急に離れたインクリングにピチューが少しあっけな顔をしていたのを見た次の瞬間、身体から爆風が放たれた。
「いったー…」
「ピチュッピ!」
「んー、平気平気。なんともなーい! それでさ、なんか親近感湧いちゃってさ、お互い自己中なんだよ。あたし達。」
ピチューの心配していた顔は曇った表情になった。自己中。そうだろう。その通り。マルス達の制止も聞かずに飛び出していってしまったのだから。
「ピチューはオオデンチナマズにリベンジしたい。あたしは助けたい。いつになるかはわかんないけど二人で戦おう。それでいいんじゃないかな?」
「ピッ…」
ピチューは何かを考えるように一度俯いて。そして、インクリングと隣り合って並び立つ。
「(それまでには絶対ヒーローコス見つけてやる!)」
ピチューがいつもの好戦的な顔をすると、インクリングも新たな決意を固める。
「あっ、マルスには後でちゃーんと謝ること!いいね!」
「ピチュ!」
「んじゃ、待たせたねロックマン!」
スプラシューターを構えて、銃口を相手に向ける。それは改めて開戦の合図となった。
ピチューがジャンプで跳びだす。ロックマンの狙いはインクリングだ。『リーフシールド』を展開し、インクリングに向けて発射する。
「シールドにはシールドだよっ!」
シールドで己の身を守る。その後のロックマンにはピチューが襲いかかった。『フレイムバーナー』の炎を『こうそくいどう』で避け切る。自分の背後に回り込んだピチューを狙い、『チャージショット』を撃とうとする。
『…っ!』
「背後がお留守だよー!」
『スプラローラー』で轢かれて地面に埋まるロックマンに『スプラシューター』の橙色の弾丸を撃つインクリング。
「ピチュー!」
『っ!』
そしてピチューの『かみなり』をモロにくらうロックマン。飛ばされても、まだピチューは空中での攻撃を続ける。自らの身体に電撃を纏って攻撃し、さらにドリルのように体を回転させ、地面にロックマンを叩きつけた。
『…うっ…!』
決して長くない攻防であったが、ロックマンのダメージは溜まっていた。よく考えれば必然だ。
自らも傷つけてしまうほどに強力な電撃を使うピチュー。
インクの効果により相手へのダメージを増やすインクリング。
攻撃力とデバフが合わさり、とても強力なアタッカーコンビ。
「ピー…チュッ!」
『ロケットずつき』だ。これはロックマンは回避で対処した。
「はいっ! いい物あげる!」
『!』
ロックマンのいる所に『スプラッシュボム』を投げてきた。ロックマンは即座に近くのピチューとは逆の方に回避する。だが、もうピチューは相手の隙を見逃さない。
「ピーチューー!」
ロックマンのいる方に動いて『かみなり』を落とす。乱闘を終わらせる強力な電撃であった。
「いやったー! コレはショート間違いなしでしょ!」
「やめなさい…」
「いったっ!」
ステージにいるつもりで放った言葉だが、タイミング悪く、他のファイター達に聞かれた。オリマーが軽く頭を叩いて諌め、インクリングはオーバーリアクションで頭を抱えた。涙目になっていそうな顔からピチューを見ると、手を肩ぐらいの高さに挙げる。理解したピチューは跳び上がってハイタッチした。
「ピッチュ!」
「イエイ!」
「あ、そうそう…」
ピチューを連れて、一歩引いた位置から俯いていたマルスに近寄る。
「マルスー、ピチューが電撃くらわせちゃったこと謝りたいって。」
「ピチューピチュ…」
「………」
マルスは反応しない。俯いたままだ。
「マルス? おーい、マールースー?」
「…えっ…!? ごめん、何の話だった?」
「もー、ピチューがビリビリやっちゃったこと謝りたいって話!」
「ああ、その話か、気にしてないよ。大丈夫だ。」
「だって! よかったね、ピチュー!」
「ピチュ!」
弾けた笑顔が浮かぶ。一人と一匹は笑いあった。
「あ、ロックマンほったらかしだ! 行こ!」
「ピー!」
ピチューを伴ってインクリングは行ってしまう。
「(気にしてない… そう、気にしてないんだ。何もかも…)」
気づかなければいけないことも気にしていない。気づいていない。見えていない… こんな時、どうすればいいのだろうか。でも、マルスは誰かに何かを聞けるような立場じゃなかった。
マリオ「唐突だけどこの小説、だんだんと趣旨から外れてない?」
オリマー「そ、そうか?」
マリオ「初プレイを小説風って言ってるのに、複数人乱闘とか、成長描写とかやられても困ると思うんだよなー」
マリオ「ま、いっか。作者は自己満足で書いているようなものだし。」
オリマー「そ、そうか…」
マリオ「次回『連携で行こう』」
オリマー「ところで小説とか作者って何の話だ?」
マリオ「それは画面の前のみんなはわかってるから問題ないよ!」