灯火の星 〜The One Story of Ours〜 作:蘭沙
御三家の進化と新ブイズを期待してましたが、まだ焦らされるようです。
「みんな!」
遅れていたマルスが合流した。他のファイターは各々心配そうに、一つのスピリットを見つめている。
「既にピチューはここにはいなかった。これ以上奥はない。間違いなく、ピチューは今ここで乱闘中だ。」
「途中で乱入出来るか試しましたが… 出来ませんでした…」
その中で慌ててて、今一番落ち着きがない者がいた。
「インクリング? もしかしてこのスピリットとは知り合いなのかい?」
「あっ… えっと知り合いというのもちょっと違うけど、知ってるよ。」
話しながらも落ち着かず、あっちこっちを行ったり来たりしている。
「オオデンチナマズ。みんなで見てきたデンチナマズよりずっとずっと大きくて、その分電力も大きいの。ハイカラシティの電力の殆どを維持しているもん。」
「…強いのか?」
「…わかんない。戦ってるとこ見たことないし。」
そう思いながら、インクリングは真っ直ぐにスピリットを見つめる。一種のもどかしさを感じながら。
「ピ…チュ…!」
『…』
緑色のバンダナを巻いた巨大なピカチュウのボディ。おまけと言わんばかりに『終点』化された『プリズムタワー』のステージには電気が走っていた。『でんげき』を当てて、着地したピチューをより強力な電撃が襲う。
「ピ…ピチュー!」
『かみなり』を落とすが、相手には当たらない。その後にくりだした『ロケットずつき』は当たったが、着地時に痺れてしまう。
「ピッ…!」
『…!』
相手は、ピチューと違って痺れやしない。相手が用意したフィールドだから当然だ。相当力を込めた一撃が小鼠を襲った。
鈍い音がなり、ピチューのフィギュアが現れる。スピリットは依然としてそこにあった。
「ああっ! ピチュー!」
「負けてしまったか…」
オリマーが近寄り、台座に触れて解除する。周りの様子を見て、負けてしまったのだと悟り、ピチューはギリッ…と歯ぎしりをした。
「大丈夫だったかい? ダメじゃないか、一人で行っちゃ。」
「ピ…」
ふんっとマリオから顔を背ける。
「ぴちゅー…」
「問題ありませんよ。最悪な状況にはなっていません。」
パックマンも心配そうにピチューを覗き込んでいる。
「キーラの手も届かないようでなによりだ。だが、妙に動きがないね。」
「あの時、私達を襲った光… あれが簡単に何発も撃てるとは思いたくないです…」
「あの光線は… キーラ自身もあまり連発できないかもしれないな。」
オリマーの言葉に納得したファイター達。ピチューの体から小さくバチバチと音が鳴っていることに気づく者はいなかった。
「そうだね、あの技を受けたら勝てない。これからはそれなりにスピードも意識して…」
あの技を受けたら勝てない。
『勝てない』? 『勝てない』…!
「チュウゥゥゥ!」
「いっ…! ピチュー!?」
マルスの言葉に過剰な程に反応したピチューはマルスに電撃を放った。そして、飛び出して再びスピリットに触れた。というか叩いた。周りの制止の言葉など聞こえない。勝てない訳があるものか。目の前の相手にも、キーラにも…!
目を開き、ワープしたと認識した瞬間、ピチューの体に電流が走った。
「ピチュウゥゥ!」
相手は同じ、緑のバンダナを巻いた大きなピカチュウのボディ。ステージも同じ、『終点』化された『プリズムタワー』。ピチューの動機もまた同じ。
「ピーチュッ!」
『…』
飛び上がって『でんげき』だ。しかし、それは相手のより強力な『でんげき』にかき消されてしまう。
「ピッ…」
ならば、空中戦を占めてやる。自慢のスピードと軽さならば、空中戦はこちらに分がある。着地時にまたもや電流が走るが、そんなことを気にしてられない。
「ピチュ!」
体全体を回転させ、思いっきり短い尻尾をぶつける。だが、巨大になっていることもあり、ダメージが通っているはずなのにそう思えないのだ。
『…!』
「チュッ…!」
相手の只の『ずつき』だけでピチューはそれなりにぶっ飛ばされた。重力に叩きつけられ、また電撃が襲う。
「チュウゥ…!」
散々に押され気味で、熱くなった頭では冷静な思考もできやしない。空中で勢いをためて、『ロケットずつき』をするも、相手には回避され、その着地でまたステージ上の電撃を受けた。
「チュ…!」
辛い、苦しい。ピチューの持てる限りの技の何をしたって勝てるビジョンが全く見えない。どうすればいいか。どうするべきだ?
違う。この状況の解決策をこの場にいない者に聞いたってどうにもならない。どうすることも出来ない。
「ピィッ…!」
思いっきり電気を貯めて放とうとした。その前にステージに設置されている電流がピチューを襲った。
「ピッチュ!」
『でんげきスクリュー』で相手を叩き落とそうとした。相手は落ちずに『でんこうせっか』で返り討ちにされた。
「ピチュー…!」
『かみなり』の強力な攻撃で吹っ飛ばそうとした。シールドで防がれ、より強力な電撃を受けた。
『…!』
「ピチュッ!」
空中に飛ばされる。
「チュ…ピ…」
ピチューの戦意は完全に喪失していた。それでも威嚇と戦うのをやめないのはただの意地でプライドだった。
万策尽きた。ステージの電撃の対処法も無ければ、今のピチューの能力では敵いっこない。電撃を纏って跳んでくる相手がスローモーションに見える。やるならさっさとやれ。情けをかけるな、早くひんしにしてみろ。一瞬がとても長く感じて、ピチューのプライドは粉々に砕け散った。
先程と同じように、ピチューのフィギュアはそこに倒れた。スピリットがいることだって、何も変わっていない。
「ピチュー…」
まだ少し痺れのある体で、マルスはピチューのフィギュアを持ち上げる。
「…行こう、ここで元に戻したらピチューはきっとまた挑戦する。」
「え…でもオオデンチナマズのことは」
「…ごめん、インクリング。君の知り合いを後回しにすることになる。」
「…ならせめてあたしが行くよ!」
「…ピチューの気持ちも汲んでやってほしい。僕が言えることじゃないけどね…」
かといって、マルスが地雷を踏んだ事に関しては彼に非はない。ピチューの闘争心を湧かせるのはあれで充分だっただけ。ピチューが曲解し過ぎなのだ。今のマルスにそう考えつくかは別なのだが。
気遣ってパックマンが仕掛けを解いてくれている。その優しさが今は辛かった。
『なんじゃ、またお主らか…ってヌオッ!? 3号!?』
「しぃぃぃぃっっっ! あたしが3号なのは、みんなには秘密なの!」
『ワワッ! わかったわかった!」
インクリングのあまりの迫力にアタリメ司令は黙るしかなかった。
今この世界でゆっくり休める場所と言えばアタリメ司令のいる道場しかない。
「お邪魔するよー」
「また…すみません。」
「誰ですか、あの人?」
また続々と入ってくるファイター達。Wii Fit トレーナーとは、完全に初対面である。
「…」
マルスはそっとピチューのフィギュアを床に下ろす。少し、見つめた後、黄金色の台座に触れた。
「ピッ…」
光り輝き、ピチューは元の姿に戻る。周りの風景が変化していることに驚くが、うつ伏せになったまま顔を床で隠して俯いてしまった。
「…ピチュー。聞いてほしい。」
マルスが話を始める。ピチューは反応しなかった。
「さっきの軽率な言葉を許してほしい。そして、半ば強引な手口であの場から離脱させてしまったことも詫びる。」
「で、でも、あれはマルスが状況を考えた上での発言で…もがもが」
「インクリング、ストップだ。ここはマルスに任せよう。」
オリマーがインクリングの口を塞ぐ。
「ピチュ…ピ」
この時以上に自らの言葉が人に届かないことを悔やんだことはない。マルスは続ける。
「安全が、危険だって… 君の気持ちを蔑ろにしていたんだ。悔しくない筈ないのに。」
そうだよ。その通り。でも、自己中に動いて心配させたのはこっちだ。
戦いから離れ、ピチューの思考も冷静になってきた。
「ピチュ…」
「本当に申し訳なかった。許されなくても仕方ない。」
違う。それは許すどころか、そもそも怒る資格は自分に無かったのだ。マルスは例えの話をしただけなのに。
「でも、僕達と一緒に来てほしい。僕のことは嫌っていても構わないから…」
「ピ…!?」
嫌うだって? そんな馬鹿な。嫌われることはあっても嫌う資格はないのに。そもそも自分は理不尽に放った電撃のことをまだ謝っていない。わかっていても、身振り手振りで伝えられる程ピチューは器用じゃない。
「…お邪魔しました。みんな行こう。燻っている暇はない。」
誰かを追っていた何時も以上に背中が小さくなるのが早く感じる。短い手足で追いかける。一言謝らなければならないのに、ピチューの内情を示すかのように萎縮して距離は縮まなかった。
インクリング「ヒーローの3号っていうのはね、New!カラストンビ隊の隊員の三人目。だから3号なんだよ!」
カービィ「しゃんごー?」
インクリング「3号だよ! さ、ん、ご、う!」
カービィ「おこめー!」
インクリング「3合じゃなあ〜い!」
インクリング「次回、『お互い自己中なんだよ』!」
インクリング「まあ、3号というだけあって、2号、1号も居てね」
カービィ「ぽょ…」
インクリング「お米減ってるんじゃないから!」