灯火の星 〜The One Story of Ours〜 作:蘭沙
話数的には既に突破済みですが、ノーカンノーカン。
ちなみに次回から初見プレイ時の迷走っぷりが如実に現れてきます。ご注意を。
二人のファイターを解放したファイター達一行は、先に進むのではなく先程から見えていた街の南方面に来ていた。ここにもう一人ファイターがいるのを確認できていたからだ。
「こっちの方もあまり変わらないな…」
落ち着かないように周りをチラチラと見回すマルス。ステージにいるのは大体乱闘中なのであまり気にならないのだが、やはり現代の街並みというのは彼にとっては新鮮なものであるらしい。
「ここにも多くのスピリットがいますね…」
「うむ… この人数だと骨が折れそうだ。」
共感するかのようにパックマンがコクンと頷く。
「少しずつ進めていこう! 始めないと終わらないしね!」
「ぽよ。」
こうしてスピリットの解放を進めていくことになる。常に二人は残るように、順繰りで行けるところを交代して攻略していくことにした。
「ただいあ!」
「おかえりカービィ! あっ、君はアシストフィギュアにもなっている」
『おっ、兄さん達チワッス! なんか大乱闘ではバス運転してもいいって言われてたのにこんな状況だい…』
「兄さんか… その呼ばれ方は新鮮だな。」
街や島への移動を行ってくれるかっぱのかっぺいだが、元の世界のすま村にいたというのにキーラによってこの世界に連れてこられたらしい。
「次はマリオか… ファイターに挑むのか?」
「そのつもりさ! 助けてあげなくちゃ!」
「…さらに聞くがDr.マリオで挑むつもりかい?」
そう。いつのまに変わったのか、今マリオはDr.マリオの姿になっている。
「ああ! ちゃんと戦えるか確かめなくちゃいけないしね!」
「まあ、止める意味もないが…」
『兄さんガンバ!』
「がんば!」
ファイターに触れる。黒一面に染まった視界は彼の纏った白衣とは正反対であった。
舞台は遥かな空。超高高度の駐車場『タチウオパーキング』である。車を入れる駐車場として機能している他、ナワバリバトルのステージとしても有名な場所だ。
今はあのうねりくねった道も、山のような高低差もない『終点』のステージとなっている。
「おっと、インクリングじゃないか。」
オレンジのイカの足をツインテールのように揺らすガール。ファイターの登録名はインクリング。それは種族名なので、しっかりとした名前がある筈なのだが、教わった覚えはない。というか、本人が気にしていない。
彼女もまた、キーラの呪いによって戦うだけの人形と化していた。
ジリジリと近寄るインクリング。それに応えるようにマリオも少しずつ距離を縮める。先に動いたのはインクリング。『バケットスロッシャー』の中に突如橙色のインクが現れたかと思いきや、それを思いっきり振り下ろした。間一髪での回避が間に合った。後ろへ跳んだマリオ。
「あぶない… って白衣が汚れちゃった。」
直撃はしなかったが飛沫が飛んでオレンジの斑点模様が出来てしまった。インクリングのインクは時間経過で空気中の微生物に分解されて消える。その微生物を、この世界で人体に影響のない程度に増殖された結果、インクが分解される速度は大幅に上昇している。
故にマリオの心配は全くの杞憂である。
飛び蹴り、そして上半身を逸らし勢いをつけてのヘッドアタック。インクリングも負けじと少し吹き飛ばされた所から『スプラシューター』を撃ちマリオの衣服を染め上げる。
「あーあ、こりゃ買い換えかな。もう!」
冗談ぽく言うマリオ。最早白衣ではなく橙衣というレベルに塗りたくられていた。少し経てばインクは落ちるのだが、マリオが気にしているのはそこではない。
大乱闘でのインクは、付着しているだけで受けるダメージが増量される。普段はなんともない打撃も、骨にまでダメージが及んだりするのだ。それは確実に気のせいなどではない。
『…』
「ていっ!」
互いの蹴りが交錯する。その最中インクリングの手元がゴソゴソしているのをマリオは見逃さなかった。
「あぶなっ!」
咄嗟に飛び上がると、マリオのいた場所には『パブロ』が振られていた。遅かったら確実に巻き込まれていただろう。
『ドクタートルネード』で少し飛ばすと、インクリングは『スプラッシュボム』を投げる。マリオの回避は間に合わず、少しインクが取れていた白衣はまた染められた。
「イテテ… せっかく取れてきてたのになあ!」
ジャンプで近寄りながらの『カプセル』はシールドで防がれるが、上から来てもそのまま着地。フェイントに釣られ、インクリングがシールドを解いた所で再びジャンプからの地面への殴りつけだ。インクリングの脳天がぐらりと揺れる。
『…っ!』
本能的に危険を感じ取ったのか、インクリングは『スーパージャンプ』で離脱。マリオの全身を使った足払いは不発に終わる。着地し、イカ状態からヒトに戻ると、『スプラローラー』を転がし始める。
「ワオ… ぐべ!」
ジャンプで躱すが、切り返してきたローラーは防げず、轢かれて、コンクリートの大地に埋められた。
その後の『パブロ』の攻撃は流石に避けれない。地面からも綺麗にぶっ飛ばされる。
「いったー!よっ…と」
空中で体勢を立て直し、相手を見ると、センプクしてインクの補給中である。
インクだって無限ではない。回復しなければ必ずいつか尽きる。後を見越し、マリオへの追撃は断念していた。
「(センプクしてる間にどうこうっていうのは… 流石に間に合わないか。)」
出来ればこの隙を突きたいというのは山々なのだが、相手とて隙を突かれるようなタイミングでセンプクする程愚かではない。今は見逃すしかないのだ。
マリオが着地した瞬間、インクリングもヒト状態に戻り、図らずも再開の合図となった。
「たあ!」
マリオはスライディングの攻撃、インクリングは素手での殴り。パンチの攻撃をすり抜けることは出来なかったため、マリオにも少なからずダメージがあったが、競り勝ったのはマリオだ。吹っ飛んだインクリングに追撃を加えようとダッシュするが、彼女の放り投げた『スプラッシュボム』に対応出来ず、直撃。
『…』
「ぐうっ!」
ぶっ飛んだマリオに向かって肘打ち。横腹を打たれ、くぐもった声を出すも現実は変わらない。インクリングはそのままマリオの真下に周り、『ホットブラスター』で、爆発させる。
「がっ… はあ…はあ…」
体に染み込んだ動作に従い、ほぼ無意識に受け身を取って立ち上がる。ここのあたりは流石歴戦のファイターといった所だろう。
「(まずいや… 後一発くらったらやばいかも。)」
ギリギリの戦い。インクの効果により、マリオの方がダメージをくらってはいるが、インクリングだってそれなりにダメージをくらっている。なんとかなる範囲だが、本人はそれを許すだろうか。
元々かなり戦闘慣れしていたと感じてはいたが、本人の、調子に乗る悪い癖が抜けて、初期から呼ばれているマリオとも渡り合っている現状だ。
「(隙を伺うんだ! 冷静に…冷静に…)」
スプラシューターを振り下ろす。軽く体を逸らして最小限の動きで躱す。
マリオを掴もうと左手を伸ばす。咄嗟に下方向に弾く。
そして、インクリングは右手に持つスプラシューターを思いっきりマリオのこめかみ辺りに振りかぶって…
「ここだあああ!」
電撃を纏いし掌底を思いっきり叩きつけた。インクリングは完全に攻撃の姿勢に入っていた。防ぐ術などない。
『…ん…にぃ…!』
しかし、命拾い。完全なアウトゾーンに入るギリギリの所でとどまった。慌ててステージに戻ろうとする。
「…へへっ」
『…!』
飛ばなかったのならばもう一度当てるだけ。着地点に再び、バチバチと電撃を手に纏わせるマリオ。気付きはしたが体が反応しない。赤くなったインクリングの目には、マリオの電撃が眩しく点滅するのが見えたのだった。
とても長い間眠っていたような気がする。町の建物の隙間から覗く日光に視界が悲鳴を上げ、反射的に目を強く閉じた。
「あ…うあ…」
「インクリング。大丈夫かい?」
意識のない間、ヒーローを見ていた気がする。自分の憧れた本物のヒーロー。
「あっ…大丈夫。まだちょっとクラクラするだけ。」
「そっか、それは良かった。他に何かあったらボクに言ってね!」
夢の世界にいた白いヒーローはいつもの赤い服に戻っていた。
「んー? どういう状況? よいしょっと。…圏外…だって…!?」
「今、何確認してたんだい…」
可愛いので気に入っていたカービィを膝の上に乗せ、イカの形を模した携帯端末の画面を覗くと現れる無情な二文字。前まではそれっぽい建物など見当たらなくても、どこだって電波は完全に受信していたのに。
「むーー!キーラ許さないんだから!」
「そう… あっそうだ! アタリメ司令って人がこの3号って人を探してるらしいんだけど同じインクリングとして何か知ってるかい?」
「あ、はい何か御用… もごもご!」
破られたページに載っているのは自分に間違えない。咄嗟に反応しそうになり、両手で自分の口を塞ぐ。
「(あっぶなー! ヒーローは秘密があるからカッコいいのに台無しにする所だった!)さ、さあ、あたし知らない!」
「…うん、そうなんだ。」
「ぷゆ。」
慌てすぎな反応と裏返った声で彼女の秘密を知ってしまった。だが、何か理由があって秘密にしているのだろうと深くは聞かない事にした。実際は自分のヒーロー像を守る為だけというくだらない理由である。
話を切り上げたマリオを見て誤魔化せたことにほっとする。そして無意識に懐のヒーローコスチュームに手を伸ばす。
「は!? な、無い!」
「えっ? 何が?」
「あっ、いや何でもないよ! 何でもないの!」
ヒーローコスチュームが無い。どこかで落としたのだろうか。あれが別の誰かに見つかると自分がNew!カラストンビ隊3号なのがバレてしまう。それを引いても仲間達との絆の証のようなものである(お下がりだが)。
こうして彼女はキーラ以外のものとも戦うことになる。なお、理由は然程深刻ではない。
マリオ「そういえば… 3号というなら1号2号もいるのかな?」
インクリング「えっ… 何であたしに聞くの?」
マリオ「だってカービィ喋れないし…」
インクリング「ああ、そっか! てっきりあたしは、あたしを3号だと確信しているのかと」
マリオ「…隠す気あるのかい?」
インクリング「次回!『これが連携ですね』!」
インクリング「はっ!? もしかしてこれって… ユウドウジンモンって奴!? その手には乗るかー!」
マリオ「手遅れじゃなイカ?」