灯火の星 〜The One Story of Ours〜 作:蘭沙
カメ一族の一人。他のカメックとは違い、ピンクのローブ着ている老婆。一族の中でも偉い、クッパの知恵袋と呼ばれるカメックババ。
「彼女は…?」
「カメックババ。ざっくり言えばクッパ軍団の一味だ。」
『ふん。何が悲しくてマリオなんかに助けられなきゃいけないんぢゃ!』
主人であるクッパが許しても、己のプライドが許せない時がある。
『助けられっぱなしはやぢゃ! そこのピンク玉、ついてくるっぢゃ!』
「ぷい?」
カメックババを先頭に、カービィ、マルス、マリオの順でキノコの足場を進む。最初キノコに踏み込んだマルスは恐る恐るであったが、カメックババに叱咤され、問題ないことがわかるとそのまま進み始めた。
途中道を塞ぐスピリット達は順に撃破していき、たどり着いたのは、足場が無くて後回しにしていたファイターであった。
「ここで何する気なんだ?」
『マリオ! おまえの為にするんじゃないぢゃ! 大人しく見ているぢゃ!』
そう言うと、カメックババはカービィの体に入っていった。途端にカービィの表情が変化する。
「カービィ?」
「…」
呼びかけたマリオの方を見るカービィ。彼がしないであろう目を向けた。
「えっ?」
一見だけして空中へ飛ぶと、カービィの手から魔法が放たれる。するとキノコが大きくなり、通行に問題ないまでに成長した。ファイターを助けにいくことができるようになったのだ。
マリオ達の元に戻ったカービィから、魂が出てくる。
「今のは…」
「まさか… 彼らと同じようにスピリットがファイターに取り憑いたのか!?」
『この程度お安い御用ぢゃ。』
「あいがとー!」
カービィの感謝に続いてマリオも感謝を伝えようとする。
「本当に助かった… っていないし。」
「多分彼女は、君からの感謝は聞きたくなかったんだと思うよ。さて… 二人にはさっき行ってもらったからね。僕が行こう。」
「わかった、気をつけて。」
「ああ。」
ファイターに触れ、マルスの視界は黒に消えていった。
「このステージは確か『とある星』と言ったかな…」
カービィが最初に戦ったステージ『とある星』。『終点』の形となった、見慣れぬ生物が跋扈する大地がまたもや戦場となる。
『…』
「… あの時マリオからはこう見えていたのか… 尚更感謝だね。」
目の前の彼は戦闘の用途とは全く違う、宇宙服を着ていた。キャプテン・オリマー。ホコタテ星の運送会社に勤めるベテラン社員。戦いとは程遠い存在であるが、ファイターとして呼ばれた者。
その理由は、不時着した星を脱出するため使役したピクミンの存在であった。だが、不気味な程に平静を保つオリマーを不思議に思ってか、戸惑っているように見える。が、彼らは従うしかない。
そんな彼らの様子を見て、マルスの背筋にヒヤリとした物が襲う。自分もちょっと前まではこうなっていたのだ。
もし、助けが来なかったら? キーラの傀儡として、例え相手が誰であろうと躊躇いなくその神剣を振りかざしていただろう。ファルシオンは血の色に染まり、自分の名に冠された通り、戦神と成り果てていた。
「(他の誰にもそんな思いをさせる訳には行かない…!)」
神剣は今や決意の剣。走り寄って振るった刃は木漏れ日に照らされ、キラリと光る。
数発撃ってきた拳を左手でいなす。最後の一発は、体を引いて躱し、その体勢から突きを繰り出す。
オリマーはそこから受け身をとり、そのまま後方へ転がって立つ。
マルスは走り込んで、追撃を加えようとする。
『…』
「…ピクミン!」
オリマーから投げられた赤ピクミン、黄ピクミン。咄嗟にシールドを貼り、二匹の強襲から身を守った。
だが、その隙を突いてオリマーに掴まれ、赤黄青のピクミンとの連携で、場外へと飛ばす。しかし、ダメージが溜まっていない故、多少空中に浮かされる程度で済んだ。
『…』
宙に浮いているマルスに対してオリマーは青ピクミンと赤ピクミンを投げる。マルスは攻撃を見てから空気を足場としてジャンプした。進行方向に標的の居なくなったピクミンはそのまま下の闇に落ちていった。
「なっ…!? ピクミンが!?」
マルスは驚愕した。今までの乱闘でピクミンが死ぬことがなかった訳ではない。相手の剣に刻まれたこともあったし、相手の炎で焼かれたこともある。ただし、それはあくまで相手方の攻撃によるものであり、オリマー自身は、ピクミンの犠牲が前提となる戦法をとらなかった。
思わぬ不意をつかれたマルスは、追ってきたオリマーが振り回した黄ピクミンに当たってしまう。
「いっ… これは」
相手が避けるだなんてわかっていた筈だ。
特別仲がいい訳ではないが、実力を知れる程度には戦ってきた。マルスがオリマーの基本戦法を知っているのだから、オリマーがマルスの実力を知っていても不思議じゃない。
罠であった。落としたピクミンを囮にしたのだ。そう考えているマルスを見ながらも、次の一手の為に白と紫のピクミンを引っこ抜いている。
「やはり、キーラの呪いは思った以上に強いらしい…」
少なくとも人を変えてしまうほどにはキーラの力は大きいものである。
ジャンプで後ろへと回り込む。体を逸らして振るった剣はシールドでガードされる。剣先がギギギと嫌な音をたて、弾かれる。
体勢が崩れたと判断したオリマーは三匹のピクミンを投げるが、マルスは一瞬で立て直した。だが、ピクミンは止まらない。
貼りつくことのできない紫ピクミンを除いて白ピクミンと蕾となった黄ピクミンがマルスにくっついて攻撃する。
「っ… はぁ!」
体を引いたマルスは、ダッシュをし、空中に跳んで一回転。ピクミン二匹を振り落とすと、オリマーに向かって剣を薙ぐ。少々吹っ飛ばされたオリマーにピクミンは合流し、砂ぼこりを上げてマルスも着地した。
「たあっ!」
『マーベラスコンビネーション』。今回のフィニッシュは刺突を数発繰り返す、ダメージを優先した連撃である。
始動は回避できたものの、二発からは避けられなかった。マルスはさらに手痛い一撃をくらわせんと構える。オリマーはそれに対し、紫ピクミンをぶつけようとする。
『…っ!?』
意思を奪われている筈のオリマーに動揺が走る。マルスは迫るピクミンを見た途端、構えを中断。横に跳んでオリマーを斬り上げたのだ。ピクミンを斬らぬように。なんて事はない。オリマーは何時もしていること。だが、オリマーを操るキーラには理解出来なかった。
「(知っている。単なる僕のエゴさ。)」
マルスはこの戦いで、出来る限りピクミンを殺さないと決めたのだ。別にこれで、先に死んでしまった二匹のピクミンが報われるとは思っていない。今までの大乱闘で倒してきたピクミンだっている。そもそもピクミンが死にたくないと考えているのかもわからない。
「でも、せめて貴方が自らの意思を取り戻すまでは! 僕が代わりにピクミン達を死なせはしない!」
無尽蔵に生まれるからといって、死んでいい訳ではないだろう。戦いの中、一人も死なせないということがどれだけ難しいことかマルスは知っている。だからこそ、決断に後悔はしたくない。迷ってしまったら、それこそ死んでいった命に申し訳が立たないのだ。
『…っ』
次々にピクミンを投げるオリマー。だが、マルスは跳んだり体を屈めたりとうまく躱す。だが、躱せばピクミンが落ちるという時は決して避けなかった。
「うっ…! でも…負けるかぁ!」
幾度かの攻防を繰り返し、互いに疲労が溜まってきた時であった。花の咲いた黄ピクミンを振り切るより先に、オリマーの体に剣先が鋭く突き刺さった。大きく吹っ飛ばされたオリマーはそのまま光となった。
「そうか…そんなことがあったのか… 迷惑をかけてしまって申し訳ない。」
「カービィ以外みんなそうさ。あまり気にしないでくれ。」
その後、フィギュアから元に戻ったオリマーに状況を説明した。
「つまりは私達以外の全員もこの世界のどこかにいるのか?」
「多分そう。まだまだボク達の物語は始まったばかりさ!」
「そうだね。カービィも随分と退屈しちゃって寝ちゃってるし。」
どこにあったのか、緑のナイトキャップを被ったカービィが寝ている。
「そういえば、日が落ちている気がしない。時間が経っていないというよりはそもそも太陽が動いてないような…」
「そうなのか? ならば不定期でも適度に休息をとろうか。カービィ、動くぞ。」
「ぷぃ…」
マルスとオリマー。どちらも多を率いる者。マリオとは方向性の違うリーダーシップは、ファイター達をまとめ上げるのにとても役に立つのだろう。それはまだ未来の話である。
オリマー「口を開けてもらって気付いたが… カービィに歯はない。」
カービィ「モグモグ…」
オリマー「だったら、この咀嚼のように見えたこれは消化ではないか?」
カービィ「すうううぅ…」
オリマー「急速に消化していたのなら、体積以上の食料を食べられるのも納得がいく。なら何故コピー時、私達ファイターは消化されずにいられるのか… カービィにとっては、同じ口に入れる行為でも、決定的な違いがあるのか…」
オリマー「次回、『きっと絆は結ばれている』」
マルス「オリマー、貯めてあった食料を知らないかい?」
オリマー「ドキッ!?」