灯火の星 〜The One Story of Ours〜 作:蘭沙
マリオは未だ泣き止まないカービィの手を引いて遺跡の跡地のような場所に来ていた。
「ここは…」
「ぷい…? ぽよ! よ!」
「ん?どうしたんだい、カービィ?」
三叉に別れた道の先には一人ずつ、囚われていたファイターがいた。先程のマリオと同じだ。
これに触ると乱闘が始まる。そして、勝てば仲間を解放出来るんだ。カービィはそう伝えようとしたが、せいぜい単語を発音するのが限度のカービィでは、説明出来ない。
「ボクに何か伝えようとしているのか…?」
「ぽよ!」
肯定の言葉。それを見たマリオは朧げな記憶を辿って、先程の戦いを思い出そうとしていた。
「(そういえば… 誰かと戦っていた気がする…誰と?)」
それはカービィ以外には考えられない。今、この世界で自らの意思で戦えるのは、キーラから逃げおおせた彼しかいないのだ。
では、何故自分はカービィと戦っていたのか。あの、動けない暗闇の牢獄から先程の場所にワープさせられ…
「(そうか! キーラはボクに強制的に戦わせていた! カービィと戦って、負けて…気づいたら正気に戻っていた。)」
だとすると、目の前のあの物体はもしかして…
「カービィ、もしかしてあれはファイターなのか?」
「ぽ! ぽよ、ぽよ!」
「勝てば正気に戻せるんだね?」
「ぽよ!」
どうやら正解のようだ。
「わかった。カービィはそこで休んでて。」
「ぽよっ!? ん〜やっ!」
「心配してくれるのはありがとう。でも、さっきのダメージも残ってるからさ。そして、万が一二人共フィギュア化されたら、それこそ本当に終わりだ。」
「ぷぃ…」
カービィはまだ納得のいかない顔であったが、渋々腰を下ろした。
「さて…」
ここに囚われているファイターは三人。誰かはわからない。が、ひとまず左から助けていくことにする。
戦いの場に移動しようと、ファイターに触れようとすると、カービィから激励の声が上がる。
「がんばえ〜!」
「…! ああ、行ってくる!」
顔だけをカービィの方へ向け、笑顔でそう答えると、マリオの視界は黒で埋め尽くされた。
ワープした先の世界は先程カービィとマリオが戦った『終点』であった。
「ここは… マルス、君か…」
『…』
マリオの相手はマルス。アリティア国の王子であり、遥か先の時代では英雄王として崇められる者である。
暗黒竜を討つため、神剣ファルシオンを手に取り、アリティア軍を率いて戦った。
『…!』
「っと! いきなりか… やはり、話の通じる状態ではないんだ…」
跳びながら切りかかってきた斬撃を躱す。
マルスの人を見定める目は、キーラの支配によって血の色に染まっていた。こころなしか、手に持つ剣もくすんで見える。何より彼は、人の話を聞かずに戦闘を始めはしない。
牽制の意味で撃った『ファイアーボール』は冷静にシールドで守られる。
キーラにより意思を感じれなくなったマルスを見ても、マリオの戦意は揺らがない。勝つことで助けられると知っていたら尚更だ。
マルスは数多の命がなくなる戦争を嫌っている。敵国の兵士が死んでいくことすら気にやむ程に優しい人間なのだ。
だが、それ以上に平和を掴むためには戦わなければならない時があるということを知っている。
そんなマルスがこうしてキーラの支配下で否が応でも戦わせられているというのに、マリオが仲間と戦いたくないと逃げる訳にはいかないのだ。
「くっ…」
剣先がマリオの胴を掠める。主の本当の意思が消えていようが、その剣術は恐ろしく繊細だ。秀麗な剣さばきには芸術すら感じられる。
しかし、大した傷にはなっていない。体の軸がぶれたりすることはなく、右足のキックはマルスの足に当たる。
これを受け、手数で勝負することにしたのか素早い剣技を繰り出してきた。
「いっ…! くっ…」
『マーベラスコンビネーション』。パワーではなく、スピードとコンボを重視した技であり、相手の動きに対してフィニッシュを変更できる技だ。
次々と襲いかかる剣技に対し、マリオは宙へ逃げようとするも、見破られていたのか上方向に斬り上げる技となった。
打ち上げられたマリオは咄嗟に後ろ方向へのジャンプでマルスの追撃を躱す。
「(速い…! 一度展開を取られたらジリ貧になる!)」
距離を取っているうちに『ポンプ』に水を溜める。キラリと光り、限界まで溜まったことを確認した時、無防備なマリオを一突きにせんと、マルスが迫り来る。
この攻撃は、上体を逸らし間一髪で躱した。しかし、彼はそのまま神剣を薙ぎ、無理矢理マリオに攻撃を当てようとしたのだ。
「がっ…!」
虚をつかれたマリオはこの攻撃に思いっきり当たってしまう。無理な姿勢での攻撃のおかげなのか思ったよりも傷は浅そうだ。ただ、身体にダメージを与える攻撃となったのは言うまでもない。
「(つらいなあ… 距離を取っても一気に詰められるし…)」
逆に半端に距離を詰めれば強烈な一撃を食らうことになる。マルスのファルシオンは剣先になるほど鋭さを増す。となると、限界まで近づくのがいいのだろうか。そこを対策できないとは思えない。
振るう剣の刃に触れないように受け流し、足払いをかける。さらに追撃をしようとしたところ、近寄らせはしないとばかりに体の周りで剣を振るったので、断念。一つ火の玉を当てた。
「くっ…! 攻撃自体は当たるけどそこからが繋がらない! 隙がない!」
宙にて両足を揃えて突っ込むも、剣で防がれてしまい、後方ジャンプで離脱して着地する。
「…ちょっと攻撃が雑だったかな…!?」
ならばと、戦法を変更。
マルスが攻めきれない程に高密度な量の遠距離攻撃を加える。
ステージの崖っぷちギリギリまで身を引き、そこから全力で『ファイアーボール』を打ち続ける。右手にあらん限りの気力を込め、多くの火の玉を繰り出す。
『…』
「うわ… 全部撃ち落とすのか…」
しかし、キーラの支配によって余分な思考の消えたマルスの剣術は恐ろしく正確だ。
一筋きらりと鈍い光を放つ神剣は大量の火の玉を落としていった。
「普通に撃っても防がれる!っ!?」
一閃をくらわせんと、寄ってきたマルスに対して、マリオは咄嗟にシールドを展開。但し、マルスは身を横に向け、剣を持つ右手を引いている。
「(『シールドブレイカー』か!)」
相手の急所を突き、シールドを大幅に削る防御殺しの必殺技。このまま、この攻撃に当たればシールドが割れて目眩を受ける。これは当たってはいけない。シールドをやめ、突いてくる剣をなんとか躱す。
「(本人の知能が操られてもなお、生きているのか!? 何にせよ成功法では勝てない! それなら多少はリスクを承知で…!)」
半端な策では勝てないだろう。
今考えられる最高の策を。
「なら、絡み手ならどうだい!」
『…!』
一つ剣が当たり、マリオの顔が歪む。が、無理矢理マルスを掴み、ステージの外へぶん投げる。
「いつっ…! ていや!」
『…っ!』
「当然復帰してくるよね! でも、こうするまでさ!」
空中を蹴り、『ドルフィンスラッシュ』での復帰を試みた。それに対しマリオは『ポンプ』を取り出し、勢いよく水を噴射した。
『あっ…』
伸ばした左手は届かない。この戦場には似つかわしくない、ふと漏れた声が印象的であった。
「マルスー?」
「んっ… くっ…」
「大丈夫かい?」
ぼやけた視界に映るのは、桃色と赤色。何回か目を閉じたり開けたりを繰り返すとそれは傷だらけのカービィとマリオだと気づいた。
「カービィ…? マリオ…? ここは一体… 僕は何を?」
「ここは… ちょっとよくわかってないけど。」
だんだんと意識がはっきりしてくる。そして今までの状況を一気に思い出した。
「っ!? みんなは!? あの後どうなったんだ!?」
「ストップストップ! 落ち着いてくれ!」
「しゅとっぷ〜!」
慌て出すマルスを諌めて、会話を切り出す。
「キーラの攻撃を受けた時、多分カービィだけが逃げ延びたみたいで… ボクもさっき助けられたばかりさ。」
「じゃあ… 他のみんなは…」
「おそらく… ボクやキミと同じように。」
心から純粋な闘志だけが湧き上がり、戦うだけしか考えられなかった先程のこと。マリオと戦っていた者は自分じゃない誰かのようにすら感じられる。でも、剣を向けたのは紛れもなく自分なのだ。
「ごめん、マリオ。僕はなんてことを…」
「気にしないでくれよ。それを言うならボクだって同じさ。」
マリオもカービィに助けられたのだろう。彼の方にも目を向けると少し不安げな顔をしている。
「僕なら大丈夫だよ、かえってスッキリしてるんだ。」
「ぽぅよ?」
「本当のことだよ。強がりでもない。」
どちらかと言えば、傷だらけの二人の方が気になる。
「マリオ。キーラに囚われた後のことを覚えているかい?」
「何となくだね。全く光の届かない場所で上も下もわからずにどうやっても動けなかった。」
マリオの証言はマルスの朧げな記憶とも一致する。ならば、他のみんなも同じだ。あの暗闇の世界に囚われて、キーラの為に戦うことになる。想像すると血の気が引き、震えが止まらなくなっていた。
「助けなきゃ… 絶対助けなきゃ…」
「ああ、まずはここにいる他の二人を…っ!」
強大な重圧を感じ、三人は反射的に空を見上げる。そこにいたのは、キーラの傀儡となっていた筈の。
「マスターハンド…!?」
マルス「ファ〜イアーエ〜ムブレム♪ 手強いシュミレーション♪ はい。」
マリオ「ファ〜イヤーエ〜ンブレム…?」
マルス「違う。ファイアーエムブレムだよ。」
マリオ「発音はどう聞いたって同じじゃないか…」
マルス「細かいけど重要なところだよ。もう一回。はい。」
カービィ「…スゥ…」
マリオ「えっカービィ何そのマイク」
マルス「次回『折れる訳にはいかない』!」
マリオ「灯火の星、完!」
マルス「待って、終わらせないで! 折れたりしない!」