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2024年「老人福祉・介護事業」の倒産、休廃業・解散調査

介護事業者の倒産、休廃業・解散が過去最多

 2024年は介護業界(老人福祉・介護事業)に嵐が吹き荒れた。2024年の倒産は、過去最多の172件(前年比40.9%増)を記録。事業を停止した休廃業・解散(以下、休廃業)も最多を更新する612件(同20.0%増)に達し、倒産と休廃業を合わせて784件(同24.0%増)にのぼった。

 休廃業は、訪問介護448件(同24.4%増)、通所・短期入所70件(同5.4%減)、有料老人ホーム25件(同92.3%増)、その他69件(同9.5%増)で、7割以上(73.2%)を訪問介護が占めた。倒産と休廃業の合計では、基本報酬のマイナス改定やヘルパー不足などが影響した訪問介護が529件(同23.8%増)と前年から102件増え、訪問介護事業者の苦境が浮き彫りとなった。

 コロナ禍に調達した借入金の返済も始まり、経営環境の先行きが見通せないまま、今後も市場撤退に追い込まれる事業者が増える可能性が高い。

 倒産と休廃業は、倒産を避けて事業を清算できる事業者と、負債の整理ができずに倒産に至る事業者に二分される。だが、コスト高が続くなかでは、倒産と休廃業は紙一重になっている。2025年も介護事業者の経営環境は厳しい状況が見込まれることから、早期に事業者への支援強化など寄り添った施策が求められる。

※ 本調査は、「老人福祉・介護事業」を対象に集計した。内訳は、訪問介護事業、通所・短期入所介護事業、有料老人ホーム、その他に分類。倒産は、介護保険制度が始まった2000年以降の負債1,000万円以上が対象。休廃業・解散(休廃業)は、統計を開始した2010年(内訳は2013年)以降を対象とした。

介護事業者の倒産、休廃業・解散の合計推移

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