兵庫県仕様のエレベーター…?
世の中に腐るほどいるエレベーター
実は、その中には「ご当地エレベーター」と呼んでもいいものがあります。それは、設置された都道府県条例などの独自ルールによって建築基準法に載っていない特殊な仕様を付加したもの。
例えば
愛知県には非常用エレベーター附室前に誘導灯の設置義務があったり、
東京都には1963年の建築基準法高さ制限(31m)撤廃後~1970年改正の非常用エレベーター設置義務(31m以上の建築物が対象)までに建てられた超高層ビルに現在の非常用エレベーターに準拠した消防用エレベーターが設置されています。
非常用の表記こそないがその設備は非常用と遜色ない。
ここで本題。こんな感じで、都道府県ごとの建築条例によってご当地エレベーターがあるのですが、今回お話しするのは「兵庫県仕様」のエレベーター。とあるエレベーターメーカーのカタログに
緊急呼戻運転(兵庫県仕様)
こんなオプションがあります。エレベーターのカタログは(当然ながら)全国版。わざわざ47都道府県のうち1つの県だけに存在するオプションが存在するのです。
※OTIS社のもののみ確認。他社のカタログには記載がありません。
実物を見に行ってみた。
めいはちコネクション()を駆使したところ、神戸市内にあるとの一報が。
そのエレベーターはとある団地にありました。
非常用エレベーターに似せた兵庫県独自仕様
乗場にエレベーターを呼び戻すスイッチを付けたり、かご内に専用運転化するスイッチを設けるのは(全国で見られる)非常用エレベーターと同じ。
しかし大きな違いとして
・非常用エレベーター設置義務対象外の建物(14階建て団地)にあった
・乗場呼戻スイッチが鍵式(非常用エレベーターは火災報知器のようなボタン式が一般的)
・非常用エレベーターではないので定員・積載を明記した銘板がない
という点があります。
そこで、建築基準法の各都道府県版条例…「兵庫県建築基準条例」を読み解いてみる事にしました。
すると…
第10章 建築設備
追加〔平成2年条例19号〕、一部改正〔平成13年条例23号〕
(共同住宅に設けるエレベーターの構造基準)
第27条 共同住宅の用途に供する部分の床面積の合計が5,000平方メートルを超える建築物で、6階以上の階に共同住宅の住戸又は住室があるものに設けるエレベーター(乗用エレベーター及び寝台用エレベーターに限る。)は、その1基以上をかごの奥行きが2メートル以上の構造とし、かつ、避難階又はその直上階若しくは直下階にかごを呼び戻す装置を設けなければならない。
第14編 県土整備/第18章 建築
建築基準条例
つまり、カタログに記載されていた「兵庫県仕様」とは「兵庫県条例で定められた特殊なエレベーター」であることが分かりました。
奥行き2メートルというのは救急隊が使用するストレッチャーが載せられるエレベーターの奥行きが2mと言われているので、この数字は「救急隊が使用するため」と仮定したら納得がいきます。
しかも今回確認されたのはカタログと同じOTIS製。しかし、条例にはエレベーターメーカーを指定した文面が存在しません。ってことは他社製でも存在するのか…?
存在します。
三菱製バージョンもあります。
こんな感じで、今後もちょっとした「?」なエレベーターを特集していきたいと思います。
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