ウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏は「前線にドローンが殆どない」と、同氏が編集長を務めるЦензор.НЕТも「これは調達を主導してきたフェドロフ副首相排除と関係がある」と指摘していたが、kyiv Independentも「同じ予算でドローン調達が半分になるかもしれない」と報じた。
参考:A shake-up in Ukraine’s drone buying alarms corruption watchdogs
国家特殊通信局の人事はイェルマークによる権力掌握か、また不正時代の調達に逆戻りか?
ゼレンスキー大統領は10月「ウクライナには年間400万機のドローン生産能力がある」「既に150万機分以上の生産契約を締結済みだ」と述べたが、残念ながら前線部隊のドローン不足は解消しておらず、ウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏は今月10日「ポクロウシク方面は前線部隊にドローンが殆どないため危機的だ」と報告。
“第32、第59、第155機械化旅団の部隊は赤外線カメラを搭載したドローンを緊急に必要としている。各旅団は補充兵を受け取っても偵察用のドローンや爆弾を投下できるドローンを1機も受け取っていない。前線部隊へのドローン供給は全てボランティアに依存しているものの、第32と第155機械化旅団にはそのボランティアが少なく、第59機械化旅団がボランティアから受け取っている支援も1年前と比べて大幅に減少した。私は自己資金(ブトゥソフ氏が立ち上げたウクライナ軍支援のための基金のこと)で10機のドローンを調達して第32と第155機械化旅団に提供し、これにより約20人の敵兵士が無力化された”
“ロシア軍はポクロウシク方面においてドローンの数でも優位性を持っており、ウクライナ指導部はポクロウシクを守る部隊へのドローン供給に注意を払っていない。だから敵は前進して我々の陣地を占領することが出来るのだ。ポクロウシク喪失のリスクが高まっているのはドローンが全く供給されていないからで、このことを1人でも多くの国民に訴えたい”

出典:C.Stadler/Bwag CC BY-SA 4.0
ブトゥソフ氏が編集長を務めるЦензор.НЕТも10日「前線でのドローン不足は調達を主導してきたフェドロフ副首相の排除と関係がある」「イェルマーク大統領府長官はフェドロフが政治的な競合相手だと認識し、期待に応えられていないウメロフ国防相の代役になることを警戒している」「シルスキー総司令官も軍の計画に干渉するフェドロフを憎んでいる」「そのためフェドロフはドローン分野の仕事から外されてしまった」「その影響でドローンの開発と調達は危機的状況になり国防省は2024年にドローンを殆ど購入していない」と報じた。
ブトゥソフ氏とЦензор.НЕТが言及しているのは国内で生産されているFPVドローンではなく、偵察用途に使用されるDJI製のMavic3TとAutel Robotics製のAutel4Tのことで、この海外製ドローンの調達はフェドロフ副首相が主導してきたが「イェルマークとシルスキーがフェドロフを仕事から外したため供給が上手く行かなくなっている」という意味なのだが、kyiv Independentも18日「イェルマーク大統領府長官の一方的な権力闘争の結果、ドローン調達からフェドロフ副首相を密かに外した」「最大の懸念は同じ予算でドローン調達が半分になることだ」と報じている。

出典:FEDOROV
“ウクライナ軍は戦争が始まるとドローンの使用を拡大したが、当時の兵士らはMavicを調達するため寄付を募らなければならない状況で、政府も2022年7月にUnited24を通じたドローン調達を開始したものの、これを主導する立場だったレズニコフ国防相は商用ドローンの能力や役割りを軽視し、政府サービスのデジタル化、モバイルアプリの導入、IT技術者の地位向上に取り組んでいたフェドロフ副首相(デジタル化担当相を兼任)が取り組みを主導することになる”
“レズニコフ国防相は2022年12月「Mavicが理想的だと言うの止めよ」「私の命令にMavicの調達は含まれていない」「兵士もMavicを求めていない」「Mavicは結婚式を撮影するためのものだ」と取り組みの有効性を批判したが、フェドロフ副首相はYouTubeを活用し、ドローン分野のスタートアップ企業をデジタル化担当省に招いたり、国防省を巻き込んで革新的なアイデアや技術を募集するBrave1を立ち上げるなど、無人化技術の戦力化を推進し、ウクライナ軍の先進的な部分を代表する顔となった”

出典:Державна служба спеціального зв’язку та захисту інформації України ユーリー・ミロネンコ氏
“それでもドローン調達のための資金は国防省やデジタル化担当省ではなく国家特殊通信情報保護局が管理しており、政府とUnited24から国家特殊通信局に流れ込む資金は莫大(2025年度予算は469億フリヴニャ)で、フェドロフ副首相が任命した人間=ドローン部隊の指揮官だったユーリー・ミロネンコ氏を国家特殊通信局に送り込むことで調達を管理していたのだが、ミロネンコ氏が11月に突然解任され、国家特殊通信局副局長だったオレクサンドル・ポティ氏が新局長に任命された”
“この人事についてジャーナリストや汚職監視団体らは「利益の大きいドローン調達の管理がイェルマーク大統領府長官によって事実上乗っ取られた」と訴えており、マリアナ・ベズフラ議員も「ミロネンコ氏の解任はイェルマークの陰謀だ」「イェルマーク大統領府長官は政治的にフェドロフをライバル視している。彼にとって若くて野心家のフェドロフが国防相に就任することは悪夢だ。技術畑から出世し、軍のドローン調達に大きな影響力をもつフェドロフを警戒している」と指摘”

出典:Andriy Yermak
“ジャーナリストのユーリー・ニコロフ氏も「イェルマークはゼレンスキーの当選を支援した協力全員を政権から排除した」「フェドロフは粛清から生き残った数少ない人物の1人で、イェルマークにとってのライバルだ」と、ブトゥソフ氏も「イェルマークはドローン問題で忙しくなるだろう」「巨額の調達資金はレズニコフ時代の人間によって分配されるはずだ」「フェドロフはドローンに精通した人間を軍の指揮系統に送り込むことを口にした途端、イェルマークの政敵になってしまった」「イェルマークは全てを管理できないと気がすまない」と述べ、国家特殊通信局の人事は「イェルマークによる権力掌握だ」と示唆した”
“国家特殊通信局長の変更がドローン調達にもたらす影響については未知数だが、ベズフラ議員は「前線でのドローン不足は明らかなのに開発と調達は11月以降大幅に減少している」と指摘し、ニコロフ氏は「フェドロフはドローン調達に支出した金額を公表して予算の透明性を高めてきたが、新しい国家特殊通信局は重要な数字の公開を止めてしまい「ドローン調達に100万ドルを支出した」と明かしても「100万ドルで何機のドローンを調達したのか」を明かさなくなった。最大の懸念は同じ予算でドローン調達が半分になることだ」と述べ、国家特殊通信局の資金が簡単に横領される可能性を示唆した”

出典:Oleksii Reznikov
kyiv Independentも「資金の限定的な透明性は軍事調達を巡るスキャンダルの核心部分で、大半の調達契約は詳細が明かされていない。特に国家特殊通信局副局長を引き継いたロスティスラフ・ザムリンスキー氏は最大の懸念対象で、彼はレズニコフ辞任の引き金となったスキャンダルの際に国防省で働いていた人間だ」と指摘しており、ブトゥソフ氏が「巨額の調達資金がレズニコフ時代の人間によって分配される」と述べたのもザムリンスキー氏を指しているのだろう。
因みに国民からの人気の高いザルジニー総司令官を「ゼレンスキー大統領の政敵」として冷遇したものイェルマーク大統領府長官だと言われており、これをゼレンスキー大統領も黙認しているため、イェルマーク大統領府長官が単独で暴走した結果とは考えにくく、この大統領府長官が絡んでくる物語にはろくな事がない。
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※アイキャッチ画像の出典:Михайло Федоров
資金はドローンに持ち逃げされたのかな?
年間400万機の生産能力は凄いですね。
もちろん性能は知れているのでしょうが….質より量、今回の戦争で改めて学ばせて頂きました。
もちろん政府の発表が過大なものであると言うこともです。
早く必要とされている部隊、戦線に生産、運搬して領土の奪還に繋げられると良いですね。
一言で言って「内紛なんかやってる場合か」
ウクライナ前線歩兵は、圧倒的な物量差の中で奮闘してますが、とても不憫に感じています…。
ウクライナ上流階級は、後方の暖かい場所で、何やってるんだろうなと。
負け戦でも権力争いに終始する、大日本帝国もドイツ第三帝国その他多数の国家もそんな感じでしたけど歴史は繰り返す様ですね。
上級国民の権力闘争、仰る通り歴史あるあるですね…
『遊んでて勝てるようになるの?』他国民・一般庶民の生活に、何の関係もない雲の上のお話だなと遠目に見てしまいます。
ウクライナ式ジョークってやつだな?
本当はフェドロフ氏が昇進してより権限拡大するんだろう?な?
なんだこれ
ウクライナの内ゲバはよく分かりませんが
米中対立のアオリで
中国が輸出規制を掛けたのも
影響してるのではないですか
完成品だけでなく要素部品も
中国製が寡占状態ですから
入ってこなくなると小型のドローンを
安く調達するのは不可能になる
今や日本の自動車産業とて
中国のサプライチェーンがないと
モノづくりできませんからね
サプライチェーン、仰る通りですね。
電磁鋼板ですら、新日鉄がトヨタ・宝山鋼鉄を訴えていたのを思い出しました(特許侵害は置いとくとしてモノを作れるのかと)。
社会人と思うのですが、『中国に経済制裁をかけろ!』単純に叫んでいるのを見かけると、昭和~平成初期で基礎知識が止まっているのかなと心配になります…(全部日本で作ってると思ってるのでしょうかね?)
このスレはたしか今日の0時過ぎに立っていたはずだが
夜中から平日日中まで書き込みしてるようですが、どんな社会人なんでしょうか?
無職ニートのたむごんさん>
ドローンの物量も、ロシア有利で確定的ですね。
空爆・砲撃・ドローンなど、投射量に圧倒的な差がついてるうえに、正面兵力にも差があるのが現状です。
ロシア=ウクライナ彼我の戦力差・勢いに差が大きくなっているのも、ゼレンスキー大統領が最近慌てて停戦に言及している理由なのでしょうね。
早期停戦交渉すべきだと自分は考えていましたが、ロシアに有利な条件でなければ、彼我の戦力差が大きくなれば停戦交渉が長引く可能性が高いです。
トランプ大統領(早期停戦)=プーチン大統領(条件次第)という図式になりやすいわけですが、ゼレンスキー大統領が交渉条件を蹴られる程ウクライナに余力は残っているのでしょうかね…。
うーんこの東側仕草。根っこは旧ソ連なんですねぇ
国家存亡の危機に一体何を考えているんだ
内ゲバの大好きさは西側仕様でもあるでしょう。つまりは、欧州標準規格。
ドローン製造工場はオレシュニクで消し飛ばされましたし
中国の輸出規制とイェルマーク氏の自助努力で、部品調達も
ままならないと。う〜ん病膏肓に入るとはこのこと
亡国とはこういうことなのだと、つくづく感じますな
ウクライナが買わない中国ドローンが売られる先は、、
ただ、有能な調達能力を持つ人が機能している場合は今後もズルズルとより一層長引くということでもあるので、特に兵士や民衆にとっては必ずしもその方がいいのかは何とも言えないところもあるような…
有能な調達能力を持つ人が機能しているまま、戦後に移行するのが一番大事なんですよ。戦後は物資調達が肝ですから。
調達能力もなく、汚職と権力にしか能が無い人間が機能したまま戦後に突入するのは、「今後もズルズルと腐敗と国家衰退が一層長引く」ことでもあります。特に兵士や民衆にとってはたまったものではない。
ロシアは国防大臣を、有能なテクノラート(ベロウーソフ国防大臣)にかえてましたね。
ゲラシモフ参謀総長が、作戦立案したりできるわけですから、物資調達や管理を仰るように重視しているかもしれません。
シリアの反体制派にはドローンを供給していたとの噂(かなりの確率で事実ではないかと思います)もある中で前線でドローンが不足しているとは。
しかも反体制派を焚き付けて政府軍を攻撃させてロシア軍をシリアに増派させるつもりが、あっけなく政権崩壊して逆に一部部隊はロシアに帰ってくるとは。
もはや喜劇の分類ですね。現場にとっては間違いなく悲劇ですが。
ウクライナ政府内の内ゲバはさておいて。
フェドロフ氏復活で良いのでは。
内ゲバは、ロシアに勝ってからにして欲しいものです。
逆に内ゲバしかすること無いんやろね
だって逆立ちしても勝て(有利な条件で講和)ないもんね。やる気も無くなるってもんだ。擁護ではなくて
ドローンの大量調達が著しく厳しくなったのはウクライナと米欧がその完成品と部品の大量供給国にして寡占国の中国へ誹謗中傷しケンカを売りまくるわ、制裁強化するわ、敵対するわで中国が第3国からの転売禁止を含む強い輸出規制を敷いたのが最大の原因であり自業自得で残当でしかない。
したがって、誰がやってもドローンの大量調達は甚だ厳しい。じゃあなんで内ゲバをしているかといえば、内ゲバありきでドローン調達不調を単なるネタ/口実にしてライバルを凹しているのだろうね。
まあ、無条件降伏までにバンコバ内部は蟲毒の壺になっていることでしょうな。最後は毒性最強の部類と言われるPuとかを自国と欧露に大量に撒き散らすのでしょうね。
西側を誹りたいだけなんでしょうが、フェドロフ氏が更迭された途端に調達量が激減した理由にはなっていませんよね。
きちんと記事を読んでコメントしませんか?
ドローン国産自給化達成!と言う報道からの、前線はどこもドローン不足ってよ…
砲弾不足解消(前線が諦めて要求しないだけ)もそうだが、ウクライナ政軍の上層部には一体どんな戦場が見えてるんだろうか…
ウクライナ製ドローンと中国製ドローンには、価格と性能面で圧倒的な差があるからでは?
数だけ作っても、現場では…