46 日出国のデカパイ国士無双


 ケンタウリスの皆さまの肩を解しに解してやって、その日の夕方。

 結局俺も模擬戦に混ざってゴキブリのような回避に磨きをかけてみんなからキモがられて、イレヴンのレベルも着実に上がって確かな成果は得られて。

 んで訓練も終えて、自宅に向かってイレヴンと二人で歩いて帰っていた。


「結局俺の魔法関係はよくわからんかったな……」

「考えられるのはやはりその指輪なのでしょうかね。今度トゥレスに鑑定してもらいましょうか?」

「イレヴンも鑑定スキルあるって前に言ってなかったっけ? そういうの見れないの?」

「私が見てもただの護りの指輪なんですよ。私の鑑定スキルはそこまでレベルが高くありませんので……機能解放で鑑定スキルのレベルを上げれば精密に見ることも出来るかもしれませんが」

「なるへそ。んー……でもそれでレベル上げて見てやっぱただの指輪だったわってなったらムダになるしなぁ。今んところ緊急性ないし保留で」

「了解です」


 俺が単純にクソ不器用なだけなのか、指輪が悪さしてるのか。

 俺は俺の魔法の適正にまったく自信がないので正直五分五分くらいだと思っている。別に今すぐ何とかしないといけないわけではないのでイレヴンの能力解放もとりあえず今回は保留とした。

 イレヴンの能力解放をまったくしてないわけじゃないんだけどね。訓練する中でより必要な機能とか、これからの闘技大会に備えていくつか新しい機能は解放させたけど……まぁスキルポイント全部使い切っちゃうのも色々危険だと思うので。とりまこの件では使用せず。


「しかし……なんだな。流石にこの時期になると結構他国からの観光客が増えてきたな」

「そうですね。普段は見かけない服装の人も多い」


 住宅街に向かう途中、王都のメインストリートを抜けて行くのだが、闘技大会の開催一週間前となれば流石にいろんな国から人が集まってきていた。

 ギルドでも他国からのエントリーが増えてたみたいだしね。金の匂いを嗅ぎつけた商人とか、腕試しの冒険者とか、純粋な観光客とか……そんな感じの人たちだろう。

 自警団や騎士団の警備の人数も増えている。荒くれ者の大会参加者が小競り合いを起こしたみたいな話もケンタウリスで聞いたし、注意するに越したことはないな。

 帰ったらリンにも改めて注意喚起しとくかな……と、そんなことを考えながら歩いてた時だ。


「……ん?」

「おや」

『みゃっ?』


 メインストリートの先、離れたところで何やら人だかりができている。

 ざわざわと周りの人が騒めいている。大声や怒声などはなく、困惑が強い声色だ。

 なんや? なんかあったの?

 俺もイレヴンも顔を見合わせて、騒ぎの方に近づいて何があったのか遠目に観察してみる。

 すると。



「────────」



 人だかりの中央。

 不自然に空間の開いたそこに、深紅の鎧武者が直立不動で立っていた。


「……あの甲冑……ヒノクニの人間のようですね」

「知ってる。兜が特徴的で……んで腰に下げた剣はあれ大太刀だな多分な。すげぇや、初めて見た」

「おや、詳しいですねマスター。辺境の国なのに」

「異世界転生チートさんの本で結構出てくるのよヒノクニ風の武者って。んで俺も興味持って調べたことあんの」


 この国の文化には馴染まない、全身を紅染めの鎧に包んだ、かなり背の高い厳つい武者がいた。

 もう雰囲気が凄いな。そこに立っているだけで血腥いいくさを思わせるような厳つい造り。顔も面頬めんぽおをつけてるからどんな顔なのかも全く見通せない。

 あんなのが通りの中央にいたらそりゃ街の人も驚くわな。

 別に誰かに襲い掛かったりとかしてるわけじゃないし騎士団や自警団を呼ばれたりってのはまだされてないようだが……あのままでは周りも混乱してしまうだろう。


 よし。

 


「……って、えっ? マスター……!?」

『みゃあ!?』


 俺は無造作に鎧武者に近づいていく。それにイレヴンが驚くが何の心配もいらない。

 勘がふっと囁いたのだ。

 この鎧武者さんは今めっちゃ困ってる。そんな気がする。


 そして────デカパイの気配がするッ!!!(渾身)


「もしもし、そこのかっちょいい鎧のお姉さん! 言葉分かりますよね? 何かお困りですか!? お助けしますよ俺この街の冒険者なんで!!」

「─────」

『みゃあ……?』


 鎧の向こうをお姉さんと断定して気さくな笑顔で声をかける俺。

 その声に反応してこちらに顔を向ける鎧武者さん。かちゃり、と鎧が音を立てた。

 こうして近づいてみればやっぱり……デカいな。身長160cmの俺が完全に見上げている。

 イレヴンが170cm以上の高身長美女だが恐らくそれよりも高いだろう。兜の分を差し引いても180cm以上はあるか。

 すっげぇやヒノクニ。絶対デカパイだよこれは。

 

 さて、フードの中でミャウが怯える気配を見せつつ、イレヴンが何があってもいいようにと身構えて俺の横に位置したが……しかしてやはり、俺の勘は冴えていた。


「───かたじけない。実は道に迷ってしまって……困っていたのでござるよ」


 鎧武者の面頬の向こうから響いた声は、凛として透き通るような女性の声だった。

 ヒノクニ訛りが可愛いですね。これだけで美人だと確信できましたよ俺は。

 その声を聞いてイレヴンも驚いたようだ。まぁな。特にヒノクニの武者鎧って性別を感じさせる要素ほとんどないもん。

 甲冑の胸の当たりも胴から膨らんだような形だし。これではおっぱいが苦しいだろう。まだデカパイ確定ではないけど俺の勘ではもうデカパイ黒髪美女がこの鎧の中に入っていることで確定している。


「いいっすよー、ヒノクニから来られたんスよね? 闘技大会で。もう参加申請は済ませました?」

「……いや、恥ずかしながら今日の昼に正門よりこの国に来訪してから……同じような建物が並び、どこを歩んできたものか分からなくなってしまって。ギルドという建物にて参加申請をすることは正門で聞き及んだものの、果たして拙者が今どこにいるのか……誰かに聞こうにもどうにも皆に避けられてしまい……」

「王都広いからいきなりだと迷っちまいますよね。俺が案内しますよ! ついてきてください! あ、俺ロックっていいます! お姉さんはお名前なんていうんです?」

「ロック殿……うむ、かたじけない。拙者、山茶花サザンカと申す。して……こちらの女性にょしょうは?」

「私はイレヴン。マスターであるロックに仕えるアンドロイド……と言ってもアレですね。魔力で自立稼働する人形、とご理解ください」

「おお。なんとも怪体けったいな……いや、失敬。この国の文化には疎くて。このような女性がこの国には多いのでござるか?」

「サザンカさん! 可愛いお名前っすね! イレヴンは多分世界中見渡しても俺のしかいないんで、まぁこの王都でも珍しいですね。……あ、ついでにこの猫はミャウです」

『みゃあ!』

「おお、猫が斯様な所に。これはまた随分と人に慣れている猫でござるな」


 話聞けばやっぱり闘技大会参加希望で、んでギルドに行く途中で迷ってたらしいんでなんだったら案内してあげることにした。

 これで俺の好感度アップってやつですよなァ! 美人には親切しといて損はないぜ。まだ推定美人だけど。

 少し話して人柄も掴めて、声や気配に悪意がない事が分かればイレヴンも警戒を緩めて挨拶を交わして、3人でギルドに向かう事となった。

 周りからの視線がすっげぇわ。まぁな……美人二人を侍らせてるからな今俺なぁ!

 そのうち一人が超ごつい深紅の武者鎧に身を包んでいるがどうでもいいことだろう。

 

「ところで聞いてもいいスかね? サザンカさんは何で闘技大会に? ってかサザンカさんおいくつ? 俺15歳。サザンカさん独身? 彼氏います? 募集中だったりしません??」

「そういう所ですよホントにマスター」

「ふふ、ロック殿は何とも溌剌でござるな。拙者は今年で数えで二十一はたあまりひとつ。闘技大会に来た目的は……語るほどの事でもござらん。拙者よりも強い者に出会いに来た、と言った所。ヒノクニでは中々歯ごたえのある相手もいなくて退屈でござった」

「その紅鎧も、腰に提げている大太刀も……凄まじい業物です。それほどの装備とその体躯であれば確かに並大抵の冒険者は相手にはならないでしょうね」

「恐縮でござる。しかしそう申されるイレヴン殿も……相当の腕前とお見受けする。試してみたいものでござるな……」

「……私も闘技大会にマスターと共に参加いたしますので、お互いに勝ち抜けばいずれ戦うこともあるかもしれません」

「ほう……それはよき話を聞けた。楽しみが増えたでござる」

「俺がアウトオブ眼中なんよね」

『みゃあ……』


 ちょっとお話しただけでもすごいバーサーカー感あるなサザンカさん。

 声は清楚オブ清楚なんだけど、血の気が多いというか……イレヴンの強さも気配で読み取ったらしい。怖。

 彼氏関係は教えてもらえませんでした。ちぇー! でも旦那さんがいたら流石に連れてくるだろうからまだ独り身だと思いたいですね。俺に惚れねぇかなぁ!!


 まぁそんな感じでヒノクニの事とかこの国の事とか色々話してたらギルドが見えてきたのでお邪魔する。


「おっじゃまー」

「お、ロック……って何だそれ!?」

「フッ……俺の将来の女候補だぜノックスさん……」

「マスターは呼吸するように錯乱するので真に受けないでくださいねサザンカ」

「面白い男子おのこでござるな」


 ノックスさんに鎧武者姿のサザンカさんに驚かれつつも、まぁ問題なく受付にサザンカさんを案内できた。説明を聞きながら参加申請用紙を書いてるサザンカさんから少し離れてイレヴンと共に申請終了を待つ。

 しかし……強力なライバルがまた一人って感じだな。


「……イレヴン、さっきサザンカさんと話してた時……組手に誘わなかった理由聞いていい? ヴァリスタさんやケンタウリスのみんなにはあんなにお願いしてたのに。……やっぱヤバい?」

「ええ、相当の使い手です。大太刀の経験値が常軌を逸している……魔獣もも相当斬っているでしょう。歩き方も一切体幹にブレがありませんでした。常在戦場が呼吸をするように自然とできている。よほどの地獄を潜り抜けていますね、彼女は」

「勝てそう?」

「負けるとは言いません。ですが今は私の力を隠しておきたいと考えてしまうほど……間違いなく強敵となるでしょうね」

「コワーイ」


 さっきの会話での違和感をイレヴンに聞いてみたらやっぱりイレヴン曰くとんでもない腕前らしい。

 まぁそうやろな……身長もだけど雰囲気がすごいもんな。人々があれだけ近づけなかったのもそういう隙のなさとか殺気とか感じてた説ありよりのありけり。

 でもこうしてちょっと話してみた感じ、決して悪って感じでもないんだよな……もちろん俺の感覚だけど。デカパイ美女だって点を差し引いてもいい人、のように俺には感じられる。

 文化の違いなんかね。まぁイレヴンは実力を警戒してるけど俺としては仲良くしたいと思っています。

 なのでもうちょっと世話焼いてあげましょうね。決して俺の欲望のままに動いてるわけじゃないです。人助けです。


「……うむ、無事に参加申請が出来たでござる。ロック殿、改めて感謝申し上げる」

「いいんスよ、お力になれてよかったっす!! ……で、サザンカさんはこの後泊る宿とか決まってないっすよね?」

「ん? うむ……ある程度の路銀はある故、どこか安宿でも泊れればと考えていたでござるが……」

「甘い! だいぶ考えが甘いっすよサザンカさん! 今この街は闘技大会の観光客や参加者がめっちゃ集まってますから宿はどこも満室です! ですが幸いなことに俺んちに空き部屋があるからサザンカさんなら無料で泊ってもろていいで」

「せいっ」

「ンゲゴボーッ!」


 サザンカさんが宿とるの絶対苦労するだろうから俺んちに大会まで泊ることを提案しようとしたらイレヴンの肘が脇腹に刺さった。痛ァい!

 なんで。別にそこまで変な事言ってないよね? 他国から来た人に親切な提案してるだけだよねぇ!?


「……すみませんサザンカ。マスターがどうにも暴走していまして……」

「ああ、いや。煩悩にまみれた主を持って苦労されておるなイレヴン殿は……」

「……よう、ちょっと話に混ざっていいか?」

「ん。どうしましたノックス」

「いや、実を言うとロックの話、そんな的外れでもねぇんだよ。今王都の宿が殆ど満杯になってんのはマジな話だ」

「おや」

「……そう、なのでござるか?」


 俺が悶絶していると、しかしそこでまさかのノックスさんからの援護射撃が入る。


「ロックの言う通りで、他国から相当な人数が王都に一気に集まってきちまっててよ。どこもいっぱいなのはマジなんだ。普段宿借りて暮らしてる冒険者なんかは一旦宿引き払わせて観光客用に値段上げて貸してる宿屋とかもあってよ」

「へぇ。知らんかった」

「マスターお前マジ……」

「……んで俺にその辺の相談が国から来ててな。見知った顔の冒険者なんかを合い部屋にしたり、空き家を一時的に使わせたりして宿の部屋空けてるんで……あー、サザンカ、っつったか? もしアンタがいいって言うなら、ロックの家に泊るってのもありだと思うぜ。下世話な話で悪いけど今はどこの宿も高いしいっぱいだ。部屋探すのも苦労するかもしれねえ。野宿ってのも悪いしよ」

「……ふむ」

「別に変な事しないっすから!! お風呂もありますよウチには! ちっこい同居人もいるけど平和なモンすよ! ご飯もでますよ!!」

「ノックスにそう言われてしまうと私も何とも……サザンカ、どうしますか。勿論マスターの家に来られても、私がマスターに釘を刺しておきますのでうかつなことはさせませんが」

「……ならば、袖振り合うも多生の縁。困っていた拙者を助けてくだすったロック殿のご温情となれば突っぱねるのも失礼という物。ロック殿、その申し出、有難く受けさせていただくでござる」

「ヤッター!!」


 そして結果としてサザンカさんをご自宅に招待する事に成功したのであった。

 やったぁ!! 俺んちのドスケベ密度が高まる!! これまでイレヴンだけだったしリンも時々泊まりに来るティオもスケベちからが不足してたけどドスケベデカパイが二乗になって100倍だ!! 100倍だぞ100倍!!

 

「じゃあそうと決まったら早速帰ろ!! ウッヘヘ! 夕飯は豪勢にしちゃおーっと!!」

「リンが喜ぶでしょうね。……まぁ、これも何かの縁ですか。ではサザンカ、僅かでもマスターが失礼なことをしたらすぐ私に申し伝えください。勿論ご自身で折檻いただいても結構ですので」

「奇妙な信頼関係でござるな其方等そなたら。うむ、甘えさせていただこう」

「ティオはケンタウリスクランで、カトルはヴァリスタの家で泊らせてっけど……ロックの家はもう数人入るか? 他にも冒険者泊めてもいいか?」

「男はNGなんで俺んちOKの女性がいたらいくらでも受け入れますよノックスさん!!」

「んじゃ誰も行かねぇな」

「なんでや」

『みゃあ……』

 

 その後はとりまサザンカさんを連れて自宅に帰ることになった。

 有難うなじーさん……俺にこの家を遺してくれて……!!(感謝)




※    ※    ※




 さて自宅に帰ってきましたわよ。


「おかえり、ロック……お、おおー!?」

「あはは、やっぱりびっくりした。ただいま、リン」

「ただいま戻りました、リン」

「失礼する。闘技大会までロック殿に宿を提供いただくことになったサザンカと申す。リン殿でござるな? なるほど、これが竜人……まだ子供というのに凄まじい気を纏っておられる」

「わ、わ、わ……? おばけー!!」

「オバケではないです」


 玄関開けて、一足先に帰ってきてたリンが出迎えてくれたが、俺の後ろにいる鎧武者を見てめちゃくちゃびっくりした顔を見せて来た。可愛いなコイツ。

 まぁそりゃ驚くだろうな……こんな鎧なんて王都じゃまず見ないしね。

 しかしここからが俺のお楽しみタイムです。

 流石のサザンカさんもお家の中でまで甲冑を着っぱなしなんてことはないはず。

 その面頬の下のご尊顔を拝見させていただけるんだよなァ!!


「ぐへへ……ぬへへへ……」

「何を期待されているか丸わかりでござるな」

「申し訳なさが無限に募り続けます。……とはいえ、室内でまでその鎧を着用し続けるのも大変でしょう、サザンカ。緩めてもらっていいですよ」

「うむ。まぁ……拙者などヒノクニでは凡百の顔でござる故、あまりそう期待しないで貰いたいものでござるが。では失礼して……」


 リビングに移動して、とうとうサザンカさんがその鎧を外し始める。

 かちゃりかちゃりと兜を脱いで、面頬を外し、全身の甲冑も脱いで腰に提げていたアイテムボックスに仕舞った。

 そしてお披露目となったお顔は。


「─────美しい……瞳を永遠に見つめていたい……ッ!!」

「カスが」

「ロックはカス……」

「ははは……照れてしまうでござるな。ロック殿は口が巧い」


 大和撫子の塊のようなデカパイ美人さんだったよなぁ!!!

 ッシャァアッ!! 今夜は眠れねぇぜ俺がッ!!



※※※



~登場人物紹介~


■サザンカ

デカパイ高身長大和撫子。21歳。色白美人。

腹筋チョットワレテル程度のメスマッチョ。頭はいつでもチェスト薩摩。



~設定紹介~


■ヒノクニ

異世界ファンタジー小説によくある日本に似た国。

修羅の国になってる。かつての廃プレイヤーのレベリング場。

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