第258話 そこで部下の話は!
「ああ、幸せだわ……」
「うん、俺もだよ」
まだ実家のフロイデンシュタット邸に帰るには早いだろう、もう少し二人きりの甘い時間を楽しもう。俺の胸に可愛い唇をそっと寄せてくる姉さんのライトブルーの髪を手櫛ですいてあげながら、まったりとピロートークの時間だ。
「なんだか、もう一人くらい欲しくなっちゃったなあ」
「え?」
いやいや、二人目にはまだ、早すぎないか。水属性の姉さんは避妊魔法持ちだからって、さっきはすっかり安心して目一杯ハッスルしてしまったけれど……もしかして、今日の俺たちはノーガード戦法でインファイトを交えてしまったのか? それってやばくね?
俺のびびりっぷりが伝わったのか、リーゼ姉さんの口角がいたずらっぽく上がる。
「ふふっ。さすがに、すぐ次の子を作る気はないよ。しばらく軍務に打ち込まないといけないだろうし……ちゃんとデキないように魔法をかけているわ。あらルッツ、露骨にほっとした顔するのね。ちょっと傷ついちゃうわよ」
しまった、そんなにわかりやすかったか。
「ご、ごめん。姉さんとの子なら何人でも欲しいんだけど、ティナが産まれたばかりだからしばらく作らないんじゃないかって思ってて……びっくりしたというか何というか」
「そうね、私の身体は治癒魔法で完全回復しているからすぐ二人目でも構わないのだけど、今はティナの将来を考えてあげるほうが大事かもね」
ああ、わかってくれたみたいで、ほっとした。
姉さんとの関係は、決して遊びじゃない。確かに正式な妻にはできない女性だけど、間違いなく大事な家族だし、二人の間に愛の結晶ができるのならそれはすごく幸せなことだ。だけど今はファニーやティナのことでいっぱいいっぱいで……これ以上「不思議」を抱え込める余裕がないんだよね。
「……あっ、そういえば!」
突然何かを思いついて、いたずらっぽい表情をする姉さん。なんかロクでもないことを言い出しそうな、そんな顔だ。
「私が通常軍務に戻るタイミングで、ルッツには約束していたアレを果たしてもらわないといけないのよね」
「約束?」
う~ん、何だっけ? あまたいる妻や愛人たちにいろいろな約束をさせられているから、正直何のことだか、すぐには思い出せないんだよね。姉さんの口ぶりからすると軍に関係しているみたいだけど……あ、ひょっとして。
「もしかして……アントニア卿のこと?」
「もちろんよ、他に誰がいるっていうの? 私が子作りできるように、一生懸命支えてくれた女性だし、ベアトリクス殿下への忠誠も問題ないわ。そして、彼女は何よりも魔法を愛していて……それを操るに必要な強い魔力を、心の底から欲しているのよ。ルッツがそれを与えてあげたら、彼女は一生の感謝を捧げ、絶対裏切らない味方になってくれるわ」
うん、姉さんの言っていることは、よく理解できる。アントニア卿の価値観は魔法バカ一代、一に魔法で二に魔法、三四がなくて五に魔法みたいだからなあ。最初はあれほど姉さんを敵視していたのに、目の前で氷槍魔法を見せてやったとたん、忠実なワンコにチェンジしちゃったのには驚いたけどね。
そんな魔法オタクの彼女が、優れた子供を与えるだけでなく、自身の魔力をも飛躍的に高めてくれる俺の「神の種」を熱望するのは、まあ当然の成り行きだよね。男女の愛とは無関係に、知らない女性と「そういうこと」をするのにも慣れてしまった俺としては、それに応えることにやぶさかではないわな。
「でも大丈夫かな、彼女はこないだ、四十歳になっちゃったんだよね。さすがに十七歳のルッツには、抵抗あるよね?」
「う~ん、少しはね。でもそんなに気にならないよ」
そう、四十歳といえば、ばっちり俺たちの母親世代。早婚を旨とするベルゼンブリュックでは、孫がいるのが普通っていう年齢だ。まあ、この世界の男にとっては、相当抵抗あるはずだ……ほいほいオッケーするのは、カネ目当てのツバメ役くらいだろう。
だけど幸か不幸か、俺にはまだ、元世界の感覚がたっぷり残っているんだ。定年を迎えた俺にとって、職場にいる四十歳の女性なんて「若い子」だったわけなんだよね。全然イケるよ。
「ふふっ、ルッツの守備範囲が広くて助かったわ。うん、じゃあ近々セッティングするから、よろしくね!」
さっきまで俺を好きだ好きだって繰り返し切なげな声で言ってくれていたのに、コトが終わったら冷静な調子で自分の部下をあてがおうとする姉さん。これがこの世界の女性ってものなのか……いや、そうでもないな。ベアトやグレーテルは最初のころ、俺が他の女のもとへ行くとき、涙を流していたしなあ。今はすっかり慣れて「いってらっしゃい早く帰ってね」程度になってしまったけれど。
「う、うん……」
「だけど、アントニア卿が本気になっちゃわないか、ちょっと心配なのよねえ」
ちょっと、リーゼ姉さん。妙なフラグを立てるのは、やめてもらっていいかな?
◆◆◆ 近況報告に二巻の書影をアップしました! ◆◆◆
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