(cache)のりまきからさくらへ～あわさくらの性別移行記（あわ☆さくら） - 【01】白金の三光町にうまれて~みんなに囲まれて~

　1990年1月7日。　河田テレビジョンの"ちびぃかくこちゃん"という後に長寿番組となっていくアニメが放映を開始したり、３か月後にバブルが崩壊するなど、日本の社会情勢が目まぐるしく変わりつつあるころであった。　喜多見(きたみ)紗良、もとい旧名・喜多見紀寿(きたみのりひさ)は、同日の朝東京都渋谷区広尾にある赤日(せきにち)医療センターでこの世に生を受けた。　名前の紀寿は、祖父で零細な町工場・白金板金所を営んでいた喜多見紀蔵(きたみ　きゅうそう)から一文字もらったのである。　戸籍上の住所は、東京都港区白金にある北里大学至近の父親の実家(祖父母)に置き、物理的には品川区戸越公園にある自宅に在住する単身赴任にも似たスタイルで生活を始めた。　白金・戸越公園。どちらも、閑静な下町情緒あふれる街である。　生まれたときには、紀寿には兄・悟史がいた。　悟史は、国鉄が分割民営化されるかされないかの1987年に生まれ、年は3才ほど先を進んでいた。　性格は、まさに兄貴肌そのもので、時にはちょっかいを出すこともあった。　父親の喜多見博康(ひろやす)は、朝鮮戦争の終結した1955年。母親の喜多見美紗重(みさえ)は、東京タワーと同い年の1958年。　両親は、まさに"映画・いつもの四丁目の夕日"のワンシーンにある昭和30年代に幼少期を過ごし、高度経済成長期を肌身で感じ取りながら青春時代を謳歌した昭和の生き字引そのものである。　博康は、真面目な人柄だが怒らすとムチが飛ぶこともしばしば。　美紗重は、優しい母親のいち面もあるが、昔ながらのしつけ癖が強く、言うことを聞かないとお仕置きも多かったような覚えがある。　そんな恵まれた環境・家族の中、紀寿は年を重ねてゆくこととなる。

【01】白金の三光町にうまれて~みんなに囲まれて~

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