視覚障害者が実際の車両使って駅で乗り降りの訓練 国交省

視覚障害がある人が駅のホームから転落する事故が後を絶たないなか、関係者が都内の駅に集まり、実際の車両を使った乗り降りの訓練が行われました。国の検討会で作成された項目に沿って行われた初めての訓練で、国土交通省は今後、こうした訓練を普及させたいとしています。

駅のホームからの転落事故を防ぐため、利用客が多い駅を中心にホームドアの設置が進められていますが、多くの費用や時間がかかるほか設置が難しい場所もあり、ホームドアだけではない対策の実施が課題になっています。

こうした中、視覚障害者の団体や有識者などでつくる国土交通省の検討会は、実際の駅や車両を使った訓練プログラムの案を作成し、16日、これに沿った初めての訓練が東京 多摩市にある小田急電鉄の唐木田駅で行われました。

訓練は視覚障害がある7人と歩行訓練士がペアになって行われ、はじめに「白じょう」と呼ばれるつえの先端が駅のホームと車両の隙間に入ったら立ち止まることなど、基本的な事柄について確認しました。

続いて車両を使った乗り降りの訓練も行われ、つえで車両と自分の位置を確認したあと、つえを持っていない方の手で車両に触れながら乗車することなど、状況ごとに必要な動きを確認していました。

訓練後には意見交換が行われ、参加者は慣れを防ぐために訓練の頻度は2年から3年に1回がいいと思うとか、ほかの駅や空港などさまざまな場所で訓練をできるようにしてほしい、などと話していました。

参加した60代の女性は「一番危ない電車の乗降について、改めて手順通りに動作を確認できたことが大きな収穫でした」と話しました。

50代の男性は「いつも時間に追われて電車に乗っていますが、時間をかけて本来すべき一つ一つの動作を確認できました。ホームドアや車両が目の前にないと、荷物などの障害物につまずいて転落する危険が常にあると感じています」と話しました。

国土交通省は16日出た意見などを踏まえて今後、プログラムを完成させ、鉄道事業者の協力を求めながら訓練を普及させたいとしています。

視覚障碍者の転落事故 後を絶たず

国土交通省によりますと、視覚障害がある人が駅のホームから転落する事故は、昨年度までの10年間に、全国で611件にのぼっているということです。

このうち20件では転落後に列車と接触しています。

死亡事故も起きていて、2021年1月に東京 板橋区にある東武東上線の下赤塚駅で、2020年11月に東京 江東区にある東京メトロ東西線の東陽町駅で、いずれも60代の男性がホームから転落して列車にはねられました。

ホームドアや点字ブロックの設置状況は

転落事故を防ぐため、駅ではホームドアや点字ブロックの設置が進められています。

国土交通省によりますと、ホームドアの設置は当初、1日あたりの平均利用者数が10万人以上の駅で優先的に進められ、現在は利用者数に関係なく、必要性に応じて行われているということです。

去年3月末の時点で、全国の1日あたりの平均利用者数が10万人以上の235駅では、7割以上にあたる180駅で設置済みだということです。

ただ、全国すべての9407駅では設置が完了しているのは1割余りの1129駅にとどまっています。

また、JIS=日本産業規格を満たした点字ブロックが設置されている駅は、全国9407駅のうち3割弱の2682駅となっています。

点字ブロックの設置も利用者が多い駅が中心だということです。

設置にあたっては、大幅な改修工事やそのための費用などが事業者の負担になっているとみられるということです。

国土交通省は、補助金の制度や、整備費用を運賃に上乗せして利用者に負担してもらう制度の活用を促すなどして設置を進めたいとしています。

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