福島大は2025(令和7)年度、大学院共生システム理工学研究科博士後期課程の学生が研究に専念できるよう研究費年間30万円、生活費年間216万円(毎月18万円)を交付する新制度を設ける。大学院修了後の進路を見据えて民間企業などと連携して実習なども充実させ、産業振興や経営の感覚に優れた専門人材を輩出したい考えだ。
15日に福島市で開いた定例記者会見で発表した。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの一層の復興に貢献できる人材を育てる。具体的には、高度情報処理技術や再生可能エネルギー関連などの県内企業関係者らを「外部協力委員」として学内に招き、講義や企業訪問などを展開する。大学によると、博士課程修了者は国立の研究機関や大学などの教育機関への就職がほとんどだという。産業界との連携を強め、研究職にとらわれない多様な働き口の確保につなげる。
博士課程を卒業すれば「博士」の学位を取得でき、日本の科学技術の将来を担う存在となる。ただ、経済的な理由や修了後のキャリアへの不安などから博士課程へ進学を断念する学生がいるのが実情だ。2014(平成26)年度以降、共生システム理工学研究科博士後期課程の定員6人に対する充足率が100%を超えたのは2021、2023両年度しかなく、先端科学を支える博士人材の養成と確保は大きな課題となっていた。
現在、博士後期課程には19人が在籍している。初年度となる2025年度は最大5人の学生を支援する予定で、2月に選考を始める。事業統括者を務める長橋良隆共生システム理工学研究科長は「専門的な発想力や創造力を生かし、県内企業をはじめ多様な分野で活躍できる人材を育てる」と決意を示した。
福島大は昨年12月、科学技術振興機構(JST)の次世代研究者を育成するプログラムに県内の大学で初めて採択された。国の財源を活用し人材育成に取り組む。東北大なども同様の制度を設けている。