オリンポス山、“太陽系最大”を返上?

2010.12.03
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火星のタルシス高地にある4つの火山の1つ、アルシア山の衛星画像。

Image courtesy THEMIS/NASA
 火星にあるオリンポス山は、アメリカのアリゾナ州とほぼ同面積で、長い間「太陽系最大の火山」とされてきた。しかし最新の研究によると、その地位から陥落する可能性があるという。 オリンポス山の付近にはアルシア山、パボニス山、アスクレウス山という3つの火山があるが、最新研究では、4つの火山は幅7000キロに及ぶ超巨大な火山体の一部なのだと論じている。つまり、タルシス高地として知られる巨大な隆起台地全体が1つの火山であり、新たな「太陽系最大の火山」の記録保持者になるという。

 研究チームの一員でイギリスにあるオープン・ユニバーシティの地質学者アンドレア・ボルジア氏は、「大きな尺度でとらえれば、オリンポス山はほかの小火山と同様、タルシス高地の一部をなす小さな側火山(寄生火山)の1つとみなすことができる」と話す。

 ボルジア氏の研究チームは数学モデルを用いて火星のタルシス高地を分析した。すると、地球のイタリア南部シチリア島にあるエトナ山と物理的特性が非常によく似ていると判明した。エトナ山は現在でも活発に火山活動を続けており研究も進んでいる。

 エトナ山は、地質学的には拡散性を持つ火山として分類されている。このタイプの場合、山頂が比較的軟弱な岩石層の上に築かれており、火山が大きく重くなるにつれて、噴出する溶岩が水平方向に広がっていく。

「溶岩をザラメ糖に例えてみよう。硬いテーブルの上であれば時間がたっても山は安定している。しかしハチミツの層の上に盛ると、横に広がっていき、中央がつぶれていく」とボルジア氏は説明する。

 研究チームのモデルによると、タルシス高地は単純に“巨大なエトナ山”なのだという。例えばエトナ山には、中心の噴火口以外の亀裂から溶岩が流れ出る小さな側火山がたくさん存在する。今回の最新研究では、タルシス高地の4つの火山が、エトナ山の側火山とよく似た特徴を持っていることが示されている。

「火山の定義に、小さいか大きいかは関係がない。噴火口からマグマが噴出し、噴き出た物質が積み重なって特定の地形を築く。これが火山だ」とボルジア氏は述べる。「タルシス高地は全体で1つのとてつもなく巨大な火山体なのだ」。

 ボルジア氏は、「新説の証明には時間がかかるだろう」と言う。真実を明らかにするためには、火星のタルシス地域に無人あるいは有人の探査機を送り込む必要があるからだ。

 火星の現地調査といえば、双子の火星探査ローバー「スピリット」と「オポチュニティ」が有名だが、調査対象は赤道地域でありタルシス高地から離れている。2011年末に打ち上げ予定のNASAの次世代ローバー「マーズ・サイエンス・ラボラトリ」でも、4カ所まで絞られている着陸候補地はタルシス高地から遠い。

 ボルジア氏は次のように話す。「今回の新説を実証するには詳細な現地調査が欠かせない。事情が許すなら、私自身が現地に飛びたいね」。

 今回の研究成果は、2010年9月発行の「Geological Society of America Special Paper」誌470号に掲載されている。

Image courtesy THEMIS/NASA

文=Andrew Fazekas

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