NTTコム、量子サイバー攻撃に備え 新型暗号通信を実証
NTTコミュニケーションズ(コム)は15日、新たな暗号通信を使ったオンライン会議の実証実験に成功したと発表した。国内外で開発が進む量子コンピューターを使ったサイバー攻撃を防ぐ狙いがある。将来の「量子時代」に備え、機密データを保護する仕組みを整える。
「秘匿性の高いデータを扱う金融機関などでは新たな暗号通信への移行が検討され始めている」。NTTコムが同日開いた説明会で、イノベーションセンターの森岡康高主査はこう語った。商用化に向けて顧客企業との協議も進めているという。
暗号通信は電子商取引(EC)などに使われる。クレジットカード情報などを暗号化し、途中で盗み見られたとしても内容が分からない点が特徴だ。現状は数学の素因数分解を応用した仕組みが主流だが、量子コンピューターには解読される恐れがある。
課題解決に向けて柱となるのが、米国の国立標準技術研究所(NIST)が公開している「耐量子計算機暗号(PQC)」だ。数学の格子問題などを応用し、量子コンピューターでも解読が難しいとされる。
NTTコムはさらに暗号処理の特許技術を組み合わせて安全性を高めた。この日の実証実験では、PQCを施した通信と独自の暗号処理により、オンライン会議アプリが正常に動くことを確認した。今後は他のアプリでも実証実験を積み上げていく。
量子コンピューターの本格的な実用化時期は不透明だ。1月に開かれた米テクノロジー見本市「CES」では、半導体大手の米エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)が「実用化までに20年程度かかる」との見方を示している。
とはいえ、実用化されると現状のコンピューターを大きく上回る性能が見込まれる。電子証明書大手の米デジサートのアミット・シンハCEOは「既存の暗号が一気に破られる」と予測する。
次世代暗号への移行は待ったなしの課題だ。インドの調査会社のマーケッツ・アンド・マーケッツはPQCの世界市場が29年に約18億ドル(約2800億円)と23年の約9倍に膨らむと予測する。
NISTは米国で35年までに、量子コンピューターで解読できない次世代暗号へ切り替える目標を掲げている。日本では金融庁が24年7月にPQCに関する検討会を立ち上げたほか、東芝やソフトバンクなども新技術の開発を進めている。
NTTコムはかつて主力だった長距離・国際通信サービスが縮小し、サーバーやクラウドなどを含むソリューション事業が売上高全体の約4割を占める稼ぎ頭になった。次世代の暗号通信で先行し、新たなソリューションサービスを打ち出したい考えだ。
日本総合研究所の長田繁幸シニアエキスパートは「暗号通信は競争と同時に国際協調が必要になる領域だ」と指摘する。NTTコムの成長加速には競争と協調のバランス感覚も重要になる。
(田中瑠莉佳)
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