阪急阪神HD、宝塚歌劇団を法人化 俳優死亡受け統治改革
阪急阪神ホールディングス(HD)は14日、子会社の阪急電鉄が運営してきた宝塚歌劇団を分離して法人化すると発表した。新会社に管理・内部監査部門を設けるほか、所属俳優の大半の契約を業務委託から雇用契約に移行する。2023年9月の女性俳優の死亡を受け、ガバナンス(企業統治)改善につなげる。
新会社は阪急電鉄の100%出資で4月に設立し、7月をめどに公演の企画・制作や出演に関する業務を引き継ぐ。劇場の保有やチケット販売などは引き続き阪急電鉄が担う。新会社の取締役の過半数を外部出身者とする。
労働時間や処遇の改善に向け、俳優との契約形態も見直す。入団6年目以降のうち、「専科」に属するベテランを除き、興行単位である5つの「組」に所属する俳優との契約を3月以降に雇用契約に切り替える。従来、入団5年目までは雇用契約で、6年目以降は「タレント契約」と呼ばれる業務委託契約に移行していた。
自主活動とされてきた稽古時間も、3月以降は参加が求められるものは労働時間として扱う。演出助手やプロデューサー補の裁量労働制も見直し、勤務実態に即した労働時間管理を導入する。
宝塚歌劇団では23年9月、宙(そら)組所属の女性俳優がパワーハラスメントを受けて死亡した。同年11月に西宮労働基準監督署による立ち入り調査を受け、歌劇団は24年3月までに俳優の長時間活動やパワハラ14件を認めて遺族側に謝罪していた。同年9月には西宮労基署から俳優の労働実態について是正勧告を受けていた。
ガバナンスを巡っては俳優死亡当時、阪急阪神HDの角和夫会長が宝塚音楽学校の理事長と宝塚歌劇団の理事を務めていたことから、角氏や同社への批判が高まった。角氏は24年2月に宝塚歌劇団と宝塚音楽学校の役職を辞し、12月には阪急阪神HDの会長も退任した。
エイチ・ツー・オーリテイリングと東宝は14日、角氏が両社の取締役職を同日付で辞任したと発表した。
阪急阪神HDは14日、中核子会社において社外から取締役や監査役選任を進め、ガバナンス体制を強化することも発表した。
宝塚歌劇団を巡っては外部有識者によるアドバイザリーボード(助言機関)を設置するなどして、興行数や稽古スケジュールの見直し、相談窓口拡充などに取り組んできた。