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人生に意味なんかいらない:ナンセンスギャグ漫画に見る「禅的」自由とは?

「ナンセンスギャグって臨済禅っぽいよね」って話をしようと思ったんだけど、話が長くなりそうだから、その理由を手短にまとめてやろう。詳しく知りたい人は、ウィキと電子ZINE『季刊ドスケベ8』をチェックしてほしい。

エンタメを素直に楽しめない理由

意味ありげなものほど、遠ざけたくなる。率直に言えば嫌いな部類だ。なぜなら、世の中の多くの作品が「思い出」や「エモさ」に頼ってるからだと思う。人はそれぞれ、自分なりの美しい思い出や思い入れがあって、それを作品と重ねて感情移入するのだけど、自分にはその感覚がない。思い出を美化したり感傷的に振り返ったりする経験が、これまで一度もなかったからだ。

世間では「過ぎた時間が美しいほど現実は辛くなる」なんて言うけど、幸か不幸か、過去を美しいと思ったことなど一度もないから、逆に過去に囚われることもなく、現実を淡々と生きてる。

だから惹かれるのは、人生の中でほとんどの人が経験する、ありふれた、そしてしばしば気が滅入る出来事を滑稽に描いた作品だ。

たとえば『男おいどん』や『独身アパートどくだみ荘』のようなLoserもの、吾妻ひでお・つげ義春・山野一・桜玉吉のように生々しい現実をどこか滑稽に描いた作品、あるいは惨めさを超えた先にあるライフスタイルを描いた、現代版『喜劇新思想大系』ともいえる”灰”春群像劇の『ヤニねこ』など。

人生の意味なんか、最初から放り投げてるナンセンスギャグが、子どもの頃から大の好みだった。

センチメンタルな作品が刺さらない理由

感傷的な物語とか、フクザツな人間関係を描いた青臭い作品、あるいはそれをスノッブな文体で弄り倒すブンガク的な批評。そういうのって、根底には「それでも人生には意味がある」っていう信念があると思う。でも、自分みたいに「そもそも人生に意味などない」と確信している人間には、まったく響かない。「そんな生き方は味気ない」と思うこともあるけど、「三つ子の魂百まで」だから、どうしようもないじゃん。

その点、ナンセンスギャグは違う。すべてを諦めたような、まるで退廃と敗北をきわめた人間であろうと「笑い」というシンプルな感情を届けてくれる。

笑いは、それだけで「生きる意味」という楔(くさび)を超越し、「人生に意味なんかいらない」という考えを肯定してくれる。だから自分にとってナンセンスギャグは、ただの漫画じゃなくて、人生の指南書そのものなんだ。

ナンセンスギャグが教えてくれる「無意味という自由」

人間は社会的集団であり、換言すれば、数多くの作品は社会でバランスが取れない「葛藤」と「克服」を描くことで成立している。それは人間の成長を描いているのかもしれない。だが、ナンセンスギャグは、その枠組みすらも破壊する。そこに自分は「禅の息吹」、自由闊達な禅的精神を感じたのだ。

古くは『がきデカ』のこまわり君、最近だと『ワタシってサバサバしてるから』の網浜さん。こいつらは、自己成長も反省も葛藤もなく、ただただ傍若無人で自由奔放。それでいて妙に魅力的だ。人生の重苦しさとか人間関係の煩わしさなんか全然なく「無頼」を超えた「超人」のような存在だと思う。

そこにこそ禅的な解放感を感じる。『臨済録』なんかもそうで、言葉や理屈に縛られてガチガチになった自我をタコ殴りにして完膚なきまでにブッ壊してくれる。それってナンセンスギャグと相通じるところがあると思うんだ。

音楽の世界でも、電気グルーヴが徹底して無意味な歌詞を貫いてるのが面白い。彼らのスタンスはテクノだけど精神的にはパンクで、それが逆接的に言葉への真剣な向き合い方に感じさせる。だから「N.O.」みたいに、青臭くて割り切れない心情をストレートに吐き出した曲が特別な輝きを放っている。

ナンセンスギャグは、ただの漫画じゃなくて人生そのものだ。

話がそれた。まとめると、無意味こそ人生であること。そしてナンセンスギャグというのは現代に禅的な自由を蘇らせてるんじゃないかということだ。自分を縛る理性・論理・感覚を、一切合切の思い込みを捨てることで、人生を乗り越えていかなくてはならない。

もし、みずからの矮小な自我を手放したいと思ったなら、『臨済録』を開けば良い。言語や理屈に縛られた閉塞的で不自由な自我を、徹底的に粉砕してくれるだろう。べつに『臨済録』でなくても構わない。

『天才バカボン』『メッタメタガキ道講座』『不条理日記』『がきデカ』『こち亀』『マカロニほうれん荘』『Dr.スランプ』『おじゃまんが山田くん』『純情クレイジーフルーツ』『おぼっちゃまくん』『コージ苑』『サルまん』『ぼのぼの』『ねこぢる』『稲中』『珍遊記』『しあわせのかたち』『マサルさん』『新家族計画』『ギャグマンガ日和』『でんぢゃらすじーさん』『ねぎ姉さん』『ヒナまつり』『山本アットホーム』『ポプテピ』『極道主夫』『犬のかがやき』『ヤニねこ』『もちづきさん』でも良い。

究極的には匿名掲示板「2ちゃんねる」「4chan」のコピペでも構わない。

大切なのは、それらを通して何を感じ取るかである。ナンセンスギャグを「読む」「聞く」「見る」ことは、あなたの「将来」を考えることだ。

人生は消耗戦だ。すべての前線で戦いを続けなければならない。一つを倒しても終わりは来ない。俺は混沌の世界で意志を通そうとした。負け戦だ。だが退くわけにはいかない。やめようと思ったこともあるが、しかしどうしてもだめなんだ。」(ハービー・ピーカー)


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人生に意味なんかいらない:ナンセンスギャグ漫画に見る「禅的」自由とは?|虫塚虫蔵
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