pixivは2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴

arca
虹 - arcaの小説 - pixiv
虹 - arcaの小説 - pixiv
1,810文字
23218
2020年2月15日 23:23

 なに、これ。
 すごく。
 美味しい。
 美味い。
 美味。
 これは誰の血。
 私の血?
 私は私の血を飲んでいたみたい。
 驚きである。
 なるほど。
 昨日。
 私がひざ小僧をすりむいた。
 その時に、出した血を。
 咲夜はおゆはんに混ぜたのね。
 なるほど。
 驚きである。
 でも。 
 美味しかったです。
 天にものぼる。
 心な気持ち。
 ふわふわ気分。
 ぷかぷか気分。
 あ。
 駄目だ。
 のぼってる。
 私。
 本当に。
 のぼってる。
 のぼっていってるみたい。
 いつのまにやら。
 紅魔館がずっと下のほうに見えた。
 私は今。
 空へと。
 まい上がってる。
 太陽の。
 陽の光がまぶしい。
 ややあ。
 私は死んだ。
 どうやら。
 本当に昇天してしまったようだ。
 私は今。
 天国にいます。
 吸血鬼だって。
 天国にもいけるみたい。
 驚きである。
 驚きではあるが。
 まあ、驚きである。
 天国はとても明るくて。
 暖かくて。
 いいにおいがして。
 色々と色は黄色がかって。
 すれ違う人はみんながみんな。
 笑っていた。
 笑顔がすてきな国だね。
 天国。
 天の国と書いて。
 天国。
 はて。
 私は天国でなにをすればよいのかしら。
 どうしたらよいか。
 どうしようもないか。
 端っこのほうに座って。
 思いをはせる。
 そういえば。
 咲夜は心配していないだろうか。
 おゆはん食べてたら急にのぼっちゃったから。
 ついでにそのまま昇天しちゃったから。
 きっと、心配してると思う。
 ……寂しいな。
 お姉さまは。
 お姉さまはどうだろう。
 私のこと、心配してくれてるかな。
 してくれてたら。
 ……うれしいなって。
 思う。
 思うと。
 急に。
 涙があふれてきた。
 ふたつの瞳から。
 ぽつり、ぽつりと。
 涙はおちて。
 おちて。
 おちていく。
 それは、雨みたい。
 次第に激しく。
 雨は降りしきり。
 涙はたまって。
 水たまりになって。
 そこの底から。
 虹がはえてきた。
 はえた虹は。
 ぐんぐんと伸びて。
 のびのび伸びて。
 私の足元に着地した。
 どうやら、ここが。
 虹の終着駅のようだ。
 きっと、誰かが。
 虹の根元を探す旅にでたのなら。
 私を見つけてくれるに違いない。
 旅の終わりに。
 七色の宝石をみて。
 きっと、誰かは。
 私を虹の人だと思うだろう。
 それは、ちょっと素敵かもね。
 なんて。
 考えてたら。
 お姉さまがきた。
 お姉さまがのぼってきた。
『お姉さまだ』
『あら、フランドールじゃない。どうして天国なんかにいるの?』
『おゆはん、食べてたの』
『へえ、私は貴女を探して飛び回っていたら急な雨にやられちゃってね』
 私のせいだったのか。
 でも。
 姉の死因は私の涙。
 そう考えると。
 なんだか、ロマンティック。
『ほら、さっさと帰りましょう』
『帰れる?』
『当たり前じゃない。私を誰だと思ってるの』
『お姉さま』
 お姉さまはお姉さま。
 私のお姉さまだ。
 私だけのお姉さまなんだ。
 そんなお姉さまの。
 ちんまい手にひかれて。
 私たちは。
 虹からすべり落ちた。
 天国にいたからわからなかったけど。
 あたりはもう。
 真っ暗で。
 空にはお星さまがきらきらと輝いていて。
 私たちが勢いよくすべるものだから。
 お星さまも負けじとひゅんひゅん流れてた。
 きっと。
 叶わない願いなんてない空だし。
 私もお姉さまもその一部になってた。
 時間にしたら一瞬だったけど。
 もう終着駅。
 でもとっても楽しかったから。
 着地することなんてひとつも考えてなくて。
 私とお姉さまは、虹のすべり台から。
 ふたりでごろごろって。
 そのまま転がってかえった。
 湖のまわりを転がり。
 大扉を転がり開けて。
 私の部屋へと転がりはいった。
 そのまま。
 お姉さまと一緒に。
 ベッドに転がりこんだけど。
 なかなか眠たくはならなかった。
 わくわくとして。
 そわそわとした。
 お姉さまを見ると。
 おんなじような、目をしてて。
 ふたり、ふふりとわらった。
 どうやら。
 私たちはまだ、気分が高揚してるみたいだ。
 



 吸血鬼は。
 死んだらハイになる。
 

23218
2020年2月15日 23:23
arca
コメント
フィボナッチ数列
フィボナッチ数列
素晴らしい作品をありがとうございます
2020年2月16日
フィボナッチ数列
フィボナッチ数列
最ッ高にハイってやつだぁ!は死んでたんですね
2020年2月16日

ディスカバリー

好きな小説と出会える小説総合サイト

pixivノベルの注目小説

  • 遺跡の奥の世界を探せ
    遺跡の奥の世界を探せ
    著者:夕月 イラスト:黒井ススム
    ゲーム化ノベルコンテスト最優秀賞受賞作が装いも新たに登場!GAMEアツマールでゲームも配信開始!

関連百科事典記事