pixivは2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴
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『うわーん、お姉さまが仏陀』
レミリア、悟りの境地である。
これはフランドールもほっとけなかった。
久々にと、レミリアの部屋を訪れたフランドールが。
最初に目にしたのが悟ったレミリアだったのである。
これは、違うのではないのか。
フランドールは思った。
もしかしたら。
もしかしたらだけれども。
これは、違うのではないのか、と。
フランドールは思ったのであった。
悟りといえば、さとりである。
種族的にも仏陀なのは古明地である。
フランドールはレミリアに言いたかった。
言った。
『お姉さま、それ、違う』
『ほっとけい』
フランドールは深く沈黙した。
レミリアといえば。
私、悟ってます、みたいな悟り顔をして。
坐禅を組んでいる。
その目は遠くを見ているような。
近くを見ているような。
そんな曖昧な視線であった。
その先にはなにがあるというのか。
フランドールは思った。
思いつつも視線の先を探した。
見つけた。
ケーキがあった。
『なるほど』
フランドールは理解した。
なんやかんや悟ったといっても。
どうしようもなく、レミリアはレミリアなのである。
昔のままのレミリアであるならば。
甘いものが大好きで。
大好きで。
妹の洋菓子まで。
当然のように。
口に入れる。
そんな。
ひどい姉であった。
ひどい姉だ。
ケーキに目がないのは当然だ。
そう、フランドールは理解した。
理解して、気づいた。
『ああ、これは、ホットケーキではないか』
ケーキはホットケーキだった。
フランドールは泣き崩れた。
ホットケーキといえば仏。
仏といえばホットケーキである。
現在、紅魔館で。
一番ホットなケーキ。
それがホットケーキである。
だが。
そんなことより。
お姉さまは変わってしまわれた。
フランドールは絶望した。
絶望しつつホットケーキを食べた。
『おいしい。お姉さまも、たべる?』
『ほっとけい』
蜂蜜に汚れたお口をナプキンでぬぐい。
ホットミルクにお口をつけて。
フランドールは考える。
どうしたら元に戻るだろうか。
仏陀化した姉の治し方。
フランドールはそんなもの知らなかった。
知りたくもなかった。
しかし、今は知らなければいけないことだ。
壊れたテレビは叩いたら治りますよ。
ふと、昔、咲夜が言っていたことを思い出す。
ぶっ叩いてみようか。
フランドールは右手をあげた。
その手を、右斜め四十五度から。
ふりおろす。
こつり。
レミリアの頭にあたった。
レミリアは頭をかかえている。
レミリアの頭にこぶができていた。
レミリアの頭はテレビではないのだ。
レミィの表情はうつりにかわり。
まるで、テレビのようだねえ。
昔、パチュリーがそんなことを言っていたのを。
フランドールは思い出した。
でも。
でも、と考える。
それはレミリアの顔。
顔がテレビでも。
頭はテレビじゃない。
フランドールは心配になり。
しゃがみこみ。
うつむく姉の顔をのぞいた。
涙目であった。
『大丈夫? お姉さま』
『痛いよ! 考え事をしてる人をいきなり、叩くとはなんなのよ!』
『……怒った?』
『もう、我慢の限界だよ、ばか、痛いよ』
『もどった、よかった』
レミリアは元に戻った。
あんなにも仏の顔だったレミリアは。
戻っていたのだ。
フランドールは喜んだ。
はしゃいでいると。
頭をはたかれた。
『うわーん、お姉さまがぶった』