pixivは2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴

arca
仏顔 - arcaの小説 - pixiv
仏顔 - arcaの小説 - pixiv
1,608文字
仏顔
02523
2018年9月24日 23:04


『うわーん、お姉さまが仏陀』

 レミリア、悟りの境地である。

 これはフランドールもほっとけなかった。

 久々にと、レミリアの部屋を訪れたフランドールが。

 最初に目にしたのが悟ったレミリアだったのである。 

 これは、違うのではないのか。

 フランドールは思った。

 もしかしたら。

 もしかしたらだけれども。

 これは、違うのではないのか、と。

 フランドールは思ったのであった。

 悟りといえば、さとりである。

 種族的にも仏陀なのは古明地である。

 フランドールはレミリアに言いたかった。

 言った。

『お姉さま、それ、違う』

『ほっとけい』

 フランドールは深く沈黙した。

 レミリアといえば。

 私、悟ってます、みたいな悟り顔をして。

 坐禅を組んでいる。

 その目は遠くを見ているような。

 近くを見ているような。

 そんな曖昧な視線であった。

 その先にはなにがあるというのか。

 フランドールは思った。

 思いつつも視線の先を探した。

 見つけた。

 ケーキがあった。

『なるほど』

 フランドールは理解した。

 なんやかんや悟ったといっても。

 どうしようもなく、レミリアはレミリアなのである。

 昔のままのレミリアであるならば。

 甘いものが大好きで。

 大好きで。

 妹の洋菓子まで。

 当然のように。

 口に入れる。

 そんな。

 ひどい姉であった。

 ひどい姉だ。

 ケーキに目がないのは当然だ。

 そう、フランドールは理解した。

 理解して、気づいた。

『ああ、これは、ホットケーキではないか』

 ケーキはホットケーキだった。

 フランドールは泣き崩れた。

 ホットケーキといえば仏。

 仏といえばホットケーキである。

 現在、紅魔館で。

 一番ホットなケーキ。

 それがホットケーキである。

 だが。

 そんなことより。

 お姉さまは変わってしまわれた。 

 フランドールは絶望した。

 絶望しつつホットケーキを食べた。

『おいしい。お姉さまも、たべる?』

『ほっとけい』

 蜂蜜に汚れたお口をナプキンでぬぐい。

 ホットミルクにお口をつけて。

 フランドールは考える。

 どうしたら元に戻るだろうか。

 仏陀化した姉の治し方。

 フランドールはそんなもの知らなかった。

 知りたくもなかった。

 しかし、今は知らなければいけないことだ。

 壊れたテレビは叩いたら治りますよ。

 ふと、昔、咲夜が言っていたことを思い出す。

 ぶっ叩いてみようか。

 フランドールは右手をあげた。

 その手を、右斜め四十五度から。

 ふりおろす。

 こつり。

 レミリアの頭にあたった。

 レミリアは頭をかかえている。

 レミリアの頭にこぶができていた。

 レミリアの頭はテレビではないのだ。

 レミィの表情はうつりにかわり。

 まるで、テレビのようだねえ。

 昔、パチュリーがそんなことを言っていたのを。

 フランドールは思い出した。

 でも。

 でも、と考える。

 それはレミリアの顔。

 顔がテレビでも。

 頭はテレビじゃない。

 フランドールは心配になり。

 しゃがみこみ。

 うつむく姉の顔をのぞいた。

 涙目であった。

『大丈夫? お姉さま』

『痛いよ! 考え事をしてる人をいきなり、叩くとはなんなのよ!』

『……怒った?』

『もう、我慢の限界だよ、ばか、痛いよ』

『もどった、よかった』

 レミリアは元に戻った。

 あんなにも仏の顔だったレミリアは。

 戻っていたのだ。

 フランドールは喜んだ。

 はしゃいでいると。

 頭をはたかれた。


  

『うわーん、お姉さまがぶった』

仏顔
02523
2018年9月24日 23:04
arca
コメント
作者に感想を伝えてみよう

ディスカバリー

好きな小説と出会える小説総合サイト

pixivノベルの注目小説

関連百科事典記事