pixivは2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴
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『お姉さまが倒れてる!』
レミリア、出血多量である。
これには、フランドールも驚きであった。
吸血鬼が。
血を吸う鬼が。
血を流して倒れたなら。
それは既に、出血鬼である。
さておいて。
フランドールはさておいた。
レミリアを見る。
じっくりと見る。
『顔がまっしろではないか!』
レミリアの顔の白さは。
フランドールの想像をこえていた。
『まっしろではないか!』
フランドールは想像をこえた驚きを表現する為に。
二回言った。
フランドールは動揺していたのだ。
おろしたての純白ドロワのようになってしまった姉を見て。
ただ、体の震えが止まらなかった。
さておいて。
フランドールはさておいた。
吸血鬼は血を流し続けると、死ぬ。
死ぬかもしれない。
ただ、考えてもみて欲しい。
吸血鬼にとって『血液』とはなんだろうか。
血とはなんだろうか。
フランドールは持論を述べた。
『私たち、吸血鬼にとって血とはなんなんだろうね?』
フランドールは特に持論を持っていなかった。
『飲むとおいしいよ、飲みたい』
急な渇きを訴え始めたフランドールの喉。
からからと渇いた、そこに。
紅茶を流しこむ。
一杯。
お腹もいっぱいになった。
嬉しかったです。
さておいて。
フランドールはさておいた。
そして、気づいた。
『こんなこと、してる場合じゃない』
レミリアは出血多量で倒れていた。
フランドールは急ぎ血をレミリアに分け与えようと思った。
いわゆる、献血である。
問題があった。
フランドールは献血の経験がなかった。
普通、人間などが行う献血は。
注射器などを使うのではなかっただろうかと。
思い至り。
部屋をいろいろと探してはみるのの。
注射器などある筈もなく。
途方にくれる。
どうしたものか。
どうしたものやら。
どうしてやろうか。
フランドールは少々。
焦りが苛立ちへと。
変化してきたようで。
『……そうだ』
そう一言つぶやくと。
横たわるレミリアの。
横に横になっている。
横向きのグングニルをひろった。
『これは、注射器である』
注射器である。
フランドールは己に言い聞かせ。
そう思いこもうとした。
先端が細い。
それだけの共通点。
いや、一つでも共通している場所があるならば。
あるいは同一だと言えるかもしれない。
そういう場面だって、ある。
だから、注射器だと信じ、希望を抱いた。
『これでお姉さまを、救える』
問題も大きかった。
『……まず、私から血を抜かなくちゃ、だめだ』
レミリアに血をいれるには。
フランドールから血を抜かなくてはいけない。
どうしようもない現実。
『でも、頑張らないとね』
ここぞという時のフランドールは迷わない。
グングニルという名の注射器を自身のお尻にさす。
『いたい』
痛いであろう。
辛いであろう。
苦しいであろうに。
それでも、フランドールはやめません。
『そりゃっ』
深く。
更に深く。
もっと深くへと。
さし込む。
『どうだ』
どうだろうか?
問題があった。
この注射器は血を吸い上げる。
そういった機能がなかった。
『……もしかして』
グングニルは注射器ではなかったのか。
グングニルは注射器ではなかったのだ。
フランドールは根本的な間違いをおかしていた。
グングニルは注射器ではなかったのである。
これにはフランドールも苦笑い。
『……どうしようも、ない』
どうしようもなかった。
『どうしよう』
フランドールはお尻にささるグングニルをみた。
目をそらしたい。
だが、見ないわけにもいかない。
このままでは。
椅子にも座れない日々が。
フランドールを待ち受けている。
抜くべきなのだろう。
抜かないわけにはいかない。
いつか抜く日が訪れるであろう。
それは今なのだ。
意を決して。
フランドールはグングニルを引き抜き。
あふれでる知らない感情に戸惑った。
『……なに、これ』
感情は頭に溜まり。
あふれでて。
それは、目からぽたぽたと落ちていった。
『そっか、私……泣いてるんだ』
フランドールは泣いていた。
初めての涙であった。
これまで辛いこともあった。
悲しいことも。
苦しいこともあった。
けれども、涙だけは流さなかった。
流れなかった。
その涙が、でた。
ついでに、お尻からは血がでていた。
いや、そんな生易しいものではなく。
噴出していた。
『やばい、お尻が号泣してる!』
止まりそうにもない、尻血。
このままでは。
フランドールは尻血鬼になってしまう。
かもしれない。
『そうだ』
フランドールはお尻をレミリアに向けた。
尻血で救おうと、考えたのだ。
吹き出る血をレミリアの体にかけていくと。
みるみるとレミリアの顔色が青から白へ、そしてピンクへと。
変わっていくではないか。
フランドールの試みは成功といって良かった。
先ほどまで息浅く、苦しそうであったレミリアも。
幸せそうな顔をして寝息をたてている。
『よかった、お姉さま』
フランドールは薄れていく意識の中。
姉の姿を確認し。
眠るように倒れた。
『フランドールが倒れてる!』
フランドール、出血多量である。