pixivは2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴

arca
献血 - arcaの小説 - pixiv
献血 - arcaの小説 - pixiv
2,413文字
献血
26663
2018年9月24日 23:02


『お姉さまが倒れてる!』

 レミリア、出血多量である。

 これには、フランドールも驚きであった。

 吸血鬼が。

 血を吸う鬼が。

 血を流して倒れたなら。

 それは既に、出血鬼である。

 さておいて。

 フランドールはさておいた。

 レミリアを見る。

 じっくりと見る。

『顔がまっしろではないか!』

 レミリアの顔の白さは。

 フランドールの想像をこえていた。

『まっしろではないか!』

 フランドールは想像をこえた驚きを表現する為に。

 二回言った。

 フランドールは動揺していたのだ。

 おろしたての純白ドロワのようになってしまった姉を見て。

 ただ、体の震えが止まらなかった。

 さておいて。

 フランドールはさておいた。

 吸血鬼は血を流し続けると、死ぬ。

 死ぬかもしれない。

 ただ、考えてもみて欲しい。

 吸血鬼にとって『血液』とはなんだろうか。

 血とはなんだろうか。

 フランドールは持論を述べた。

『私たち、吸血鬼にとって血とはなんなんだろうね?』

 フランドールは特に持論を持っていなかった。

『飲むとおいしいよ、飲みたい』

 急な渇きを訴え始めたフランドールの喉。

 からからと渇いた、そこに。

 紅茶を流しこむ。

 一杯。

 お腹もいっぱいになった。

 嬉しかったです。

 さておいて。

 フランドールはさておいた。

 そして、気づいた。

『こんなこと、してる場合じゃない』

 レミリアは出血多量で倒れていた。

 フランドールは急ぎ血をレミリアに分け与えようと思った。

 いわゆる、献血である。

 問題があった。

 フランドールは献血の経験がなかった。

 普通、人間などが行う献血は。

 注射器などを使うのではなかっただろうかと。

 思い至り。

 部屋をいろいろと探してはみるのの。

 注射器などある筈もなく。

 途方にくれる。

 どうしたものか。

 どうしたものやら。

 どうしてやろうか。

 フランドールは少々。

 焦りが苛立ちへと。

 変化してきたようで。

『……そうだ』

 そう一言つぶやくと。

 横たわるレミリアの。

 横に横になっている。

 横向きのグングニルをひろった。

『これは、注射器である』

 注射器である。

 フランドールは己に言い聞かせ。

 そう思いこもうとした。

 先端が細い。

 それだけの共通点。

 いや、一つでも共通している場所があるならば。

 あるいは同一だと言えるかもしれない。

 そういう場面だって、ある。

 だから、注射器だと信じ、希望を抱いた。

『これでお姉さまを、救える』

 問題も大きかった。

『……まず、私から血を抜かなくちゃ、だめだ』

 レミリアに血をいれるには。

 フランドールから血を抜かなくてはいけない。

 どうしようもない現実。

『でも、頑張らないとね』

 ここぞという時のフランドールは迷わない。

 グングニルという名の注射器を自身のお尻にさす。

『いたい』

 痛いであろう。

 辛いであろう。

 苦しいであろうに。

 それでも、フランドールはやめません。

『そりゃっ』

 深く。

 更に深く。

 もっと深くへと。

 さし込む。

『どうだ』

 どうだろうか?

 問題があった。

 この注射器は血を吸い上げる。

 そういった機能がなかった。

『……もしかして』 

 グングニルは注射器ではなかったのか。

 グングニルは注射器ではなかったのだ。

 フランドールは根本的な間違いをおかしていた。

 グングニルは注射器ではなかったのである。

 これにはフランドールも苦笑い。

『……どうしようも、ない』

 どうしようもなかった。

『どうしよう』

 フランドールはお尻にささるグングニルをみた。

 目をそらしたい。

 だが、見ないわけにもいかない。

 このままでは。

 椅子にも座れない日々が。

 フランドールを待ち受けている。

 抜くべきなのだろう。

 抜かないわけにはいかない。

 いつか抜く日が訪れるであろう。

 それは今なのだ。

 意を決して。

 フランドールはグングニルを引き抜き。

 あふれでる知らない感情に戸惑った。

『……なに、これ』

 感情は頭に溜まり。

 あふれでて。

 それは、目からぽたぽたと落ちていった。

『そっか、私……泣いてるんだ』

 フランドールは泣いていた。

 初めての涙であった。

 これまで辛いこともあった。

 悲しいことも。

 苦しいこともあった。

 けれども、涙だけは流さなかった。

 流れなかった。

 その涙が、でた。

 ついでに、お尻からは血がでていた。

 いや、そんな生易しいものではなく。

 噴出していた。

『やばい、お尻が号泣してる!』

 止まりそうにもない、尻血。

 このままでは。

 フランドールは尻血鬼になってしまう。

 かもしれない。

『そうだ』

 フランドールはお尻をレミリアに向けた。

 尻血で救おうと、考えたのだ。

 吹き出る血をレミリアの体にかけていくと。

 みるみるとレミリアの顔色が青から白へ、そしてピンクへと。

 変わっていくではないか。

 フランドールの試みは成功といって良かった。

 先ほどまで息浅く、苦しそうであったレミリアも。

 幸せそうな顔をして寝息をたてている。

『よかった、お姉さま』

 フランドールは薄れていく意識の中。

 姉の姿を確認し。

 眠るように倒れた。

 



 

 

『フランドールが倒れてる!』

 フランドール、出血多量である。

献血
26663
2018年9月24日 23:02
arca
コメント
Average
Average
無限ループって怖くね?
2021年12月18日

ディスカバリー

好きな小説と出会える小説総合サイト

pixivノベルの注目小説

関連百科事典記事