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パズル - arcaの小説 - pixiv
パズル - arcaの小説 - pixiv
4,965文字
パズル
30191
2018年9月24日 22:38

 パズルに嵌った。

 かなり楽しい。

 今やっているのは500ピース。

 簡単な方だ。

 で。

 今しがた終わりそうな所である。

 ……終わりそうな所であった。

 しかし。

 しかしだ。

 足りない。

 ピースが足りない。

 1ピース足りない。

 ない。

 終わらない。

 最後の最後。

 後もう少しで終わり。

 というか1ピースで終わりなのに。

 ない。

 何故だ。

 何処にいった。

 机の下。

 ベッドの下。

 本棚の上。

 ポケット。

 タンス。

 口。

 コップの中。

 ヤカン。

 ない。

 本当にない。

 何故だ。

 もしかして。

 誰かが盗んだ?

 怒るよ、しかし。

 流石にそれはないと信じたい。

 信じたいが可能性はないとも言えない。

 何も考えず姉が持って行ったかもしれない。

 ありえる。

 何となくでそういう行動に出るのが私の姉だ。

 もしかしたら咲夜が掃除の時に捨てたかもしれない。

 ありえる。

 何でもかんでも捨てるのが家のメイドだ。

 お母さんか。

 どうしたものか。

 既に完成といっても差し支えないほどに完成しているパズル。

 正直、絵も全体像が見えている。

 1ピースなくてもそれはそれで。

 まあ何となく完成している。

 だが。

 駄目だ。

 微妙だ。

 何か物足りない。

 実際ピースが足りない訳だが。

 やはりおかしい。

 どうするか。

 探しても良いのだが見つかる気がしない。

 何せ館は広いのだ。

 館中探すのは骨が折れる。

 疲れるしね。

 どうしよう。

 作るか?

 足りないピースを自作するか。

 そうするか。

 しかしだ。

 問題がある。

 そのなくしたピースがどんな模様かわからない。

 いや。

 想像はつくのだが。

 わからない。

 確かパズルが入っていた箱に完成図が描いていた筈だが。

 箱は既に咲夜に捨てられてしまっている。

 駄目か。

 私の想像力では難しいかもしれない。

 後、絵心ないし。

 どうしよか。

 いや。

 待てよ。

 1ピース足りていない、ほぼ完成しているパズルを見る。

 もしかして。

 もしかしてなのだが。

 ……白か。

 足りないピースはもしかして白の部分ではなかろうか。

 完成してるじゃない。

 絵としては完成してるじゃない。

 足りないだけで完成してるじゃない。

 いいか。

 もういいか。

 遠目で見たらわからないだろ、これ。

 完成。

 できました。

 やったね。

 満足感。

 ないな。

 駄目だ。

 やっぱり駄目。

 未完成。

 つくるか。

 白い所だけどつくるか。

 ちょっと待って。

 白くないかもしれない。

 ほんのちょっとだけど絵が入ってるかもしれない。

 逆に難しい。

 有るか無いかの境目の模様とか私描けないよ。

 無理だよ。

 難易度高すぎるよ。

 駄目。

 やっぱり探すか。

 いや。

 もし探して。

 探して探して。

 見つからなかったらどうしよう。

 絶対へこむ。

 無かったらへこむ。

 あったら喜ぶけど。

 なかったら泣く。

 泣きたくない。

 有るという確証がないと探せない。

 どうだ。

 確信にいたれるか。

 駄目だ。

 五分五分だ。

 あるかもしれないしないかもしれない。

 そんな不確定な行動を私は起こせない。

 そういう性格なのだ。

 面倒くさい性格だ。

 止めだ。

 新しいの始めるか。

 諦めて違うのを始めて忘れるか。

 忘れられるだろうか。

 無理だな。

 今回のは結構思い入れがあったりなかったり。

 まあ別にないな。

 新しいの始めるか。

 待って。

 思いついた。

 全く同じパズルから足りないピースを抜きとれば良いのでは?

 それだ。

 完璧だ。

 それしかない。

 そうしよう。

 駄目だ。

 同じパズルとか持ってない。

 買わなきゃいけない。

 しかし。

 勿体なくはないだろうか。

 1ピース抜いたらそれはもうお払い箱。

 1ピース足りない499ピースの無駄の完成である。

 何だかなあ。

 そのパズルを無駄にしない為には、また新しいパズルを。

 それを無駄にしない為に新しいパズル。

 それ。

 新しい。

 パズル。

 ループ。

 終わらないパズル地獄。

 というか。

 そんなに同じパズルしてたら飽きるわ。

 飽き飽きしちゃう。

 飽きちゃう。

 せっかく見つけた趣味なのに飽きちゃう。

 飽きたらまた新しい趣味を見つけなきゃならない。

 新しい趣味か。

 趣味ね。

 いっその事パズルを捨てて違う事を始めるか。

 何が良いだろうか。

 ルービックキューブとかどうだろうか。

 パズル的な要素もあるしね。

 嘘。

 私はまだ諦めてはいない。

 全く思いつかないけど何か手は有る筈なのだ。

 足りないピースを足らす方法。

 逆転の発想。

 ピースのピースは平和のピース。

 足りない空間には世界の平和が詰まっているのだ。

 素晴らしい答だと思う。

 もしかしたら、それが正解なのかもしれない。

 パズルは私にそれを伝えたかったのかもしれない。

 きっとそうだ。

 そうに違いない。

 え?

 違うの?

 じゃあどうしろと言うのさ。 

 というか急に喋らないでよ。

 いや、喋るのは悪くないんだけどね。

 急にだったから驚いたんだ。

 というかパズルって喋れたっけ?

 口は何処さ?

 ああ。

 ピースが足りない所が口なのね。

 つまり。

 ピースを埋めないと貴方は喋り続けると。

 それは駄目だ。

 怖い。

 埋めたら良いのね。

 パテで良い?

 駄目。

 くそ。

 私はどうしたらいいのか。

 思いつかない。

 思いは届かない。

 間を置くか。

 少し時間をあけたら。

 何か良い案がでるやもしれない。

 ……。

 何をしようか。

 物を失くした時にする行動。

 何だろうね。

 寝るか。

 寝て起きたら。

 思いつくかもしれない。

 しかし。

 思いつかないかもしれない。

 そういうものだ。

 しょうがない。

 取りあえず布団に篭ろう。

 あっ。

 眠くない。

 全然眠くない。

 生きてきた中で一番目が覚めてる。

 布団に何て篭ってられない。

 布団から出るか。

 出てどうするのか。

 出て何をするのか。

 私は少し考え方が狭まっていた気がする。

 パズルなんてどうでもいい。

 その位の気持ちの方が気が楽で良い。

 どうでもいい。

 本でも読むか。

 そういえば。

 途中まで読んでいた本があったな。

 あれは何処に置いてあったか。

 机の上。

 本棚の中。

 椅子の下。

 ベッド。

 ポケット。

 床。

 ない。

 何処にもない。

 本がないのはおかしいのではないか。

 パズルの欠片がないのはわかる。

 小さいしね。

 しかしだ。

 本だ。

 結構なサイズ。

 これだけ探せば普通はあるだろう。

 ないけど。

 わかった。

 無くしたものは、もう出てこないんだ。

 私の部屋はそういうものなんだ。

 理解した。

 諦めよう。

 部屋が悪い。

 思い返してみれば。

 今までたくさんの物達が私の前から姿を消していった。

 何かあるな。

 この部屋には何かある。

 謎がある。

 見渡してみると。

 あった。

 謎はあった。

 色々ないくせに謎はありやがった。

 その謎は部屋の隅でぐるぐる渦巻いてやがる。

 なにこれ。

 穴?

 奥の方はなにも見えない。

 真っ暗。

 闇。

 いつからあったんだろう。

 机に置いてある筆ペンを入れてみる。

 あ。

 吸い込まれて消えた。

 これだ。

 お前犯人だろ。

 手を突っ込むべきだろうか。

 しかし、怖い。

 消滅とかしたら怖い。

 棒とか差し込むか。

 ちょうど姉のグングニルが床に転がっている。

 先っちょを入れる。

 まだ奥がある。

 もっと入れる。

 まだまだ。

 更に入れる。

 奥は深いぞ。

 もう入らない。

 持ち手の部分しか残ってない。 

 一度抜いてみる。

 よいしょ。

 グングニルは無事だった。

 特に傷も付いておらず。

 穴の中に危険はないらしい。

 入ってみるか。

 足から行くか。

 右足から。

 ゆっくりね。

 入れる。

 ひゃあ。

 引っ張られた。

 誰かに足引っ張られてる。

 怖い。

 右足蝙蝠化分離緊急脱出。

 ふう。

 難は去った。

 この穴にはもう触れないでおこう。

 とりあえず。

 穴に向かってグングニル。

 投げておいた。

 さて。

 結局の所、なくしたピースはもうないのだろう。

 多分穴の中。

 つまりパズルは完成しないということだ。

 パズルは完成しない。

 本当にそうだろうか?

 私は無言で499ピースパズルを持つ。

 穴に優しく入れた。

 完璧。

 これで穴の中。

 穴の中で500は全て揃ったことになる。

 足引っ張った奴が完成させてくれるだろう。

 多分。

 よかった。

 解決。

 したのかな?

 まあ良いだろう。

 私の前に残ったのは。

 ……何にもないな。

 パズルもねえ。

 本もねえ。

 ついでに姉のグングニルもねえ。

 筆ペンもだ。

 忘れてた。

 どうしようかな。

 穴は今後ゴミ箱として活用しよう。

 それ以外に考えつかない程にゴミ箱として有用すぎる。

 まさにゴミ箱。

 ゴミ箱として生まれてきた穴。

 ゴミ穴。

 上から降ってきたりしてね。

 捨てたゴミが。

 そんな話あったな。

 上を見る。

 天井が見える。

 当たり前である

 ん?

 隅に汚れがあるな。

 目を凝らして見る。

 ……。

 本があった。

 天井の隅にあった。

 そうか。

 天井の隅に貼りつけたんだった。

 私が。

 自分で。

 忘れてた。

 とりあえず取る。

 これこれ。

 そうそう。

 問題編まで読んでさ。

 解決編にいく前に自分で推理しようと思って。

 しおり挟んで。

 しおりだ。

 あったよ。

 最後のピースあったよ。

 そうだよ。

 しおりに使ったんだった。

 ああ。

 私は馬鹿だ。

 何で天井の隅などに。

 ……この本の影響ね。

 密室のトリックに使ってると思われる。

 まだ解決編読んでないから私の推理だけど。

 それで実践したんだね。

 はいはい。

 見事に私は私を欺いたわね、ばか。

 まあ忘れていただけだけど。

 うん。

 私に残されたもの。

 一つの欠片。

 あと本。

 さっきよりはマシか。

 いや、とんとんね。

 まあ。

 よかった。

 見つかってよかった。

 私は何も描かれていない最後の欠片を掴み穴に向かって投げた。

 音も立てずに吸い込まれていく。

 渦を巻いて吸い込まれていく。

 くるくると。

 くるくると。

 下に着いたかしら?

 なら。

 きっと。

 穴の下で誰かが喜んでいるだろう。

 多分。

 そうだといいね。



『お母さん、サンタさんにパズル貰った』

『よかったわねえ』

『筆ペンもだよ』

『よかったわねえ』

『あとグングニル』

『!!!』

『もう少しで足も貰えそうだったのに』

『!!!!』

パズル
30191
2018年9月24日 22:38
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