「沖縄は独立したがっている」「琉球人は中華民族だ」…中国が進める「沖縄工作」の最前線

安田 峰俊, 週刊現代 プロフィール

不穏な動きはネットだけにとどまらない。

9月3日、香港紙『星島日報』が、中国遼寧省にある大連海事大学の、沖縄関連の研究を目的とした「琉球研究センター」の設立計画を報じた。目を引くのは、設立準備シンポジウムで飛び出した過激な発言の数々だ。

「琉球(の帰属)問題は国家安全と祖国統一に関わる」

「『琉球問題』を明確な研究対象として政治的な研究を強化し、(中国の主張の)国際的な影響力を強めるべきだ」

発言の主はそれぞれ、高之国・中国海洋法学会会長、徐勇・北京大学教授という、各学界の重鎮たちだ。高之国は過去、中国が南シナ海の島嶼部の領有の根拠とする「九段線」を歴史的な国境だと主張してきた国際法研究者。徐勇はかねてから沖縄の日本帰属に疑義を唱えてきた歴史研究者である。いずれも御用学者的な立場の人々だ。

中国海洋法学会会長の高之国(百度百科より)
 

近年、中国は戦後の日本の主権範囲を定めたサンフランシスコ講和条約は無効であると強調しはじめた。それをもとに、学者やネット世論が「琉球独立」や「沖縄の中国復帰」を一方的に主張する流れが生じつつある。

「中国の、一種の外交戦略であると感じます。近年の日本政府は、台湾問題をはじめ中国の『国内問題』にくちばしを突っ込み、中国の不興を買っている。現在の中国は、そうした不快な動きに『反撃』するようになっています」

北京出身の張世險峰氏(55歳)は、一連の動きをこう話す。彼は沖縄の華人団体の元幹部で、現在は日本に帰化して中城村議選に挑戦中。日中いずれの政情も知る立場からの意見だ。

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