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漫画家の終活 紙原稿どうする

漫画家と自作の生原稿。
各漫画家でその価値は大きく異なることでしょう。
ご本人の考え方もありますがとりまく環境で全く違ってきます。
有名作家様は生原稿は資産でありそれこそ税金も絡んできますから
個人の考え方だけではどうこうできないケースも多いのではないでしょうか。

私の考え方ですが、生原稿は痛々しいです。
自身の原稿はもちろんですが大作家さんの展示されているものでも、
修正ひとつでもきれいに処理されている先生、
一方、意外とこの先生、生原稿汚いんだなというのも。
それらを見るのが嫌、ということではなく作業の苦しさのようなものが
まず先に感じられてしまいます。
特にある時代までの雑誌印刷は今より精度の劣る活版印刷が主で、
処理が汚いと見える作家さんも活版に置き換えられた状態を熟知した上での
熟練の技ともいえます。
生原稿はそういった作業の厳しさ、締め切りのつらさなど、それに関わった先生、アシスタントさん、編集さん、印刷屋さんの念みたいなものが
抜けずに残ってる感じがして気軽に見れないんですね。

あと生原稿は単純に管理が面倒。
いわゆる紙原稿はある一定期間が過ぎると出版社から返されます。
これらを封筒から出して見返すことは私はほとんどありません。
まず、ネームを張り付けた接着剤が経年で劣化しボロボロと落ちるのが
嫌で仕方ありません。
多分ほとんどの50過ぎの漫画家さんは同じことを思っているでしょう。
とにかく見なかったことにしておこうと封筒に戻しますが、この時落ちたよくわからない文言が記された写植が落ちているという漫画家んちあるあるですね。

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さて、ショートメインの私ですが90年代はそれなりに本数をこなしており、その時の原稿が段ボールの中にしまわれてます。原稿自体には未練はないのですが、とにかく原稿に限らず紙って重いんです。特に漫画の原稿用紙は。
事業ゴミとして出してしまってもいいんですが押し入れから出すのも面倒、
おまけに漫画家初期の原稿は実家に送ってしまっており2か所で処分とか
考えたくないまま昨年60還暦を迎えてしまいました。
ちなみに作風からこの話をするとだいたい笑われるのですが現在はフルデジタルで紙の原稿は一切存在しません。

そんな自分に救世主が

なにかBSの健康食品CMのような流れですが結果から申しますと
こちらの願ってた通りの対応をしていただきました。
こちらは秋田県の横手市増田まんが美術館がメインで窓口として
受け付けている基本は文化庁の事業ですね。
しかし漫画家は全人口の中で、そう多くはないとはいえ無名有名、自称を含め全ての原稿を受け付けていたら倉庫の規模はわかりませんが膨大な量に
なってしまわないか、そこにはそれなりの基準があるのではないか、
そんな思いで二の足を踏んでおりました。
傷つくじゃないですか。
「あなた如きの実績の作家さんに当館の貴重なスペースを費やす余裕はございません」的な断られかたされたら。(もしくは無視)・・・
しかし杞憂でした。
問い合わせ約2時間後に先方様から直接電話。
「是非、お預けいただくこと前提にお話を」との由。

嬉しかったですね。
仕事でもないし、こちらになんら実入りもありませんが
ここのところ自分の都合が通らないことばかりでしたのでこれは
かなりの朗報でした。
基本預けるという形でそこに費用等かからず、必要ならばその原稿も手元に戻せる。預けるにあたってはセンターの人が直接受け取りに来られる・・・
え?秋田から?
しかもうちのように現仕事場(東京)と実家(神奈川)に分かれている場合もそれぞれ取りにきてくれる。
こちらが都合よく想像していた以上のご対応でした。
関東の場合明大の漫画図書館に用事がある際上京されることが多いようで
それに合わせてこちらも用意するという形でしたね。
日をずらして実家のほうも、と予定してましたがそちらの都合は合わず
こちらで着払いで送ればいいということになりました。

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実家に残されていた分

持ち出し当日、アーカイブセンターの方が一名、電話で連絡をくれた方が終始対応していただいた形でした。屈強な若い方でしかも某漫画主人公と同じお名前で、まさにこの事業に特化されたような方でした。
あっさりうまくいきすぎて些か拍子抜けでしたが、私の20代30代を支えた原稿たちは私の手元から離れていきました。そしてこれがきっかけで長年利用していた仕事場もたたむ決意もつきました。

先にも述べたように私の場合ショート、4コマメインで30年のキャリアでも
オール紙は8年くらいでしたのでまだちょっと面倒くらいで済みましたが
毎週20ページ以上、紙一筋みたいな作家さんは自前の倉庫くらいの考えでしょうか。

まずひとつの問題はクリアしましたが、さらに漫画家終活にいろいろ
問題は山積みなんです。        つづく


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