「二次創作は否定せず」ゲーム大手各社が知的財産権保護訴え 任天堂〝最強法務部〟も登壇

知的財産の重要性をアピールするゲーム大手の法務部門担当者=10日、東京都江東区
知的財産の重要性をアピールするゲーム大手の法務部門担当者=10日、東京都江東区

コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は10日、都内で開催されたイベントで任天堂やカプコン、セガなど大手ゲーム各社の法務部門の担当者が知的財産の重要性をアピールする座談会を開いた。各社は無許可の動画配信や二次創作は著作権の侵害にあたるとしながらも、ファンやゲーム開発者を重視する姿勢から容認している事情を明かし、権利保護への理解を求めた。「最強法務部」といわれる任天堂の担当者は、携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」で横行していた海賊版ソフトを遊べるようにする機器「マジコン」への対応事例などを紹介した。

「声を大きくして言いたいが、二次創作を否定はしていない。オタク文化に寛容な会社と自負している」

コーエーテクモホールディングスの西村智稔常務執行役員は著作権侵害にあたる可能性がある二次創作に対して、寛容な姿勢を強調した。日本では、年に2回、世界最大規模の同人誌即売会「コミックマーケット」が開催されるなど、ゲームや漫画、アニメの二次創作が根付いている。そのことが日本独自のアニメやゲーム文化につながっている。

一方で、デザインのみが発表された未発売のゲームの二次創作や女性キャラクターの過度なアダルト同人誌など、「本来のファンや作り手の気持ちを守る」ために販売を差し止めたケースも挙げた。画像投稿サイトをはじめとするのSNSでは削除件数が年2000~3000件に上るという。

「海賊版」への対策強化

任天堂知的財産部の西浦光二担当部長代理は「海賊版が遊べると、ソフトメーカーの正規ビジネスにも悪影響を及ぼすので違法なツールへの対策を強化している」と話した。世界で1億5000万台以上を売り上げる大ヒットとなったDSで横行していた海賊版ソフトが遊べるマジコンに対して、技術的な争点で不正競争防止法違反を勝ち取った「マジコン訴訟」や、家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」のコントローラーの模倣品を電極部分の特許で防いだ事例などを紹介。人気ゲーム「スプラトゥーン」がヒットし、中国で類似のスマホゲームが相次いだ際には、キャラクターを盗用したものには著作権で、ゲームシステムをコピーしたものには特許で対抗したことを明かした。西浦氏は「さまざまな権利を組み合わせて多角的に保護していくことがゲーム業界の健全な発展にも重要」と主張した。

任天堂は1982年、ゴリラのゲームキャラクター「ドンキーコング」が米映画会社ユニバーサル・シティ・スタジオに「キングコング」の著作権侵害で訴えられた際に、逆転勝訴するなど、知的財産に関する数々の訴訟を勝ち抜き、「最強の法務部」といわれている。

カプコンの知的財産部の奥山幹樹部長は「知的財産の保護がないとコピー品が生まれて、ゲームのブランド価値が落ちる」と業界を挙げた知的財産の保護を訴えた。セガの桝本菊夫上席執行役員は「(ゲーム会社同士が)真似することは別に悪いことじゃないと思う。ただ許されない真似と許される真似がある」と話し、コナミデジタルエンタテインメント法務部・知的財産部の村瀬俊介部長はゲーム開発費が100億円規模に高騰している現状を踏まえ「権利行使をすることが悪いことかのようなゲームユーザーが一定数いる。(知的財産権を侵害する)フリーライドを放置すると、面白いゲームが生まれなくなってしまう」と締めくくった。

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