「中電病(なかでんびょう)」という言葉が、首都圏のJR運転士の間でささやかれている。中央・総武線の各駅停車(三鷹―千葉)で運転士の体調不良によるオーバーランなどが相次ぎ、所属する職場(旧・中野電車区)に原因があるのではと心配する声が出ているためだ。JR東日本は現場の水質や空気成分検査に乗り出したが、原因はわからないまま。神主を呼んで安全祈願もして、職場環境も改善したが状況は変わらず、謎は深まるばかりだ。
JR市ケ谷駅で2024年11月20日、三鷹発千葉行き電車が停止位置の約7メートル手前に停車した。JR東日本首都圏本部によると、30代運転士は「駅到着時に睡魔に襲われ、居眠りしてしまった」と説明。乗車前の点呼で健康状態に問題はなかったという。
翌21日にはJR四ツ谷駅で、停車中の中野発津田沼行き電車の30代運転士が体調不良を訴えた。運転士交代のため、運転は約20分間ストップした。
どちらの運転士も、JR中野駅近くの「中野統括センター中野南乗務ユニット」に所属する。24年9月までは「中野電車区」(通称・中電(なかでん))と呼ばれた100年余の歴史を持つ職場で、中央・総武線の各駅停車を担当する運転士約220人が配属されている。
問題は、3年ほど前からこの「中電」で運転士の体調不良によるオーバーランなどが相次いでいることだ。首都圏本部によると、運転士が体調不良を理由に乗務中断する事例が、24年11月末までの過去3年間で計43件発生。今年度に限っても19件にのぼる。
同じく中央・総武線各駅停車を受け持つ「津田沼統括センター乗務ユニット」は、運転士数がほぼ半分とはいえ、今年度は2件のみだ。山手線など他線区のデータはないというが、JR関係者は「せいぜい年間数件程度」という。
運転士の間に「職場の飲み水に睡眠成分でも混入しているのでは」と不安がる声も上がったことから、JR東は24年夏から本格的な原因調査に乗り出した。職場内の水道やポットの水質検査に始まり、空気成分まで測定したが、いずれも異常は見つからなかった。
同年8月には神主を呼んで安全祈願も行ったが、それ以降も5件発生している。
ある運転士経験者は「特別に緊張するような線路でもなく、運転に気を使う旧型車両というわけでもない。夜勤などの勤務態勢も他の職場と変わらない」と首をひねる。
JR東は環境改善のためとして、泊まり部屋と更衣室のベッドやロッカーを交換し、壁紙も張り替えた。産業医を交えた対策チームを立ち上げ、原因究明も続けている。
担当者は「体調不良者に共通原因は見つからず、寝不足や暑さにやられた例もある。お客様に影響が出ないよう対策を続けていく」と話している。
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