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パキスタン人急増の江別市~市民が取り組む交流への第一歩

  • 2024年12月18日

人口減少や人手不足を背景に、北海道で暮らす外国人の数は増加していて、ことし初めて6万人を超え、過去最多となりました。そうしたなか、江別市では、近年、パキスタンからの移住者が急増しています。私は、去年8月までインドのニューデリー支局で取材をしていた経験から、以前、浦河町で増えるインド人の話題を取材したことがきっかけで「北海道の外国人」をテーマに取材を続けていました。今回、江別市に増えるパキスタン人と、地域住民とのつながりをつくろうと始まった取り組みを取材すると、今後の地域社会のあり方のヒントが見えてきました。
(NHK札幌放送局・森下 晶)

江別市で急増するパキスタン人

江別市の郊外に、外国人が集まる場所があると聞き、訪ねました。雪が降るなか、平屋のプレハブの建物に多くの人が集まってきました。実はここ、イスラム教徒が祈りを捧げる「モスク」です。祈りを終えて出てきた人に話を聞くと、多くはパキスタン人でした。このモスク、3年前に作られたと言います。

江別市内の在留外国人の数は、統計を取り始めた2013年以降年々増え続けていて、ことし初めて1000人を超えました。そのうち、パキスタン人の数は237人(2024年12月1日時点)で、市内で最も多い外国人になっています。

なぜ江別市にパキスタン人が増えた?

なぜパキスタン人なのか?実は、パキスタンでは中古車ビジネスが盛んで、日本車が多く取り扱われていることから、日本に住むパキスタン人には、そのビジネスに携わる人が多いと言われています。ではなぜ、北海道の江別市なのでしょうか。江別市で中古車の販売や輸出の会社を経営するウマール・アリさんに聞きました。ウマールさんによると、日本車はパキスタンだけでなく、アジアや中東、アフリカなど、世界中で需要が多いと言います。さらに、北海道は本州に比べて競合が少ないうえ、中古の乗用車のほかにも、中古の建設機械や農業が盛んな北海道ならではの農業機械も入手しやすいと言います。さらにウマールさんは、江別の理由を教えてくれました。

ウマール・アリさん
「江別市には、大きなオークション会場もあって車を入手するのにとても便利です。とても広いスペースがありますし、いい場所です。私たちのような中古車ビジネスをする人は、江別市を選ぶのだと思います」

ウマール・アリさん

ウマールさんは、パキスタンに比べると北海道はとても寒いですが、ずっと北海道には住んでビジネスをしていきたいとも話していました。

パキスタン人の事を知ろう!~市民が始めた取り組み

しかし、江別市内で町の人に聞くと、パキスタン人が市内に増えていることはあまり知られていないようです。そうしたなかで、江別市や近隣に暮らすパキスタン人を招いて、交流するイベントが始まっています。

このイベントを企画・運営しているのは、北海道大学で働く平田未季さんです。平田さんは、北海道大学で言語学を研究し、江別市の外国人向けの日本語教育にも携わるなかで、パキスタン人が増えていることに気づきました。しかし、あまりにも市民との距離が遠いことに問題意識を感じていたと言います。

北海道大学 高等教育推進機構 准教授 平田未季さん

北海道大学 高等教育推進機構 准教授 平田未季さん
「私も江別市に住んでいるので分かるんですけど、“パキスタンの方が増えてるんですよ” “こういう仕事してるんですよ”と言うと、ほとんどの人が“えっ”という返事で、知らない人がほとんどです。今後もし、何か日常的なトラブルが起きたり、例えば災害が起きたりしたときに、いきなり知らない外国人と出会うと、びっくりして、さらにパニックになるかもしれません。いざというときに全く交流がないコミュニティーが共存している地域というのはそういった特別な事態に対応ができないんじゃないかと思ったんです」

平田さんが始めたこのイベントは、市内のパキスタン料理レストランで開かれています。3回目の今回は、8年前から江別市に暮らし、中古車の販売や輸出会社を経営するハッサン・マンズールさんを招きました。イベントでは、平田さんがハッサンさんに質問形式で、パキスタンに関する知識や、江別市に暮らすパキスタン人の事、中古車ビジネスの仕事内容について尋ねていきました。

平田さん 
「パキスタンの公用語は?」

ハッサンさん 
「ウルドゥー語ですね」

平田さん 
「今パキスタンから来る従業員は何歳の人が多い?」

ハッサンさん 
「30歳より下ですね」

平田さん 
「仕事で怒られたらどうします?」

ハッサンさん
「人に朝から怒られたら1日ずっと落ち込みます」

この日参加したのは、江別や近隣の町の人たち38人。会場は一杯になりました。ほとんどの人がパキスタン人の話を間近で聞くのは初めてです。ハッサンさんがユーモアを交えながら包み隠さず自分の気持ちを話すのを聞くうちに、最初は少し緊張した顔で聞いていた人たちにも笑顔が見えるようになりました。

 

イベントの最後、平田さんが場を締めようとしたとき、ハッサンさんは立ち上がって参加者に向かって話し始めました。

「外国人なので、日本のマナーやいろいろわからないことがあります。何かミスしていることがあったら教えてもらいたいです。間違えた人は、わざとやっているんじゃなく、知らないだけかもしれないので、教えてもらえたら助かります。みなさんは、私たちの顔が怖いと思っているかもしれないですけど、本当は、中身は全然怖くないんです」

参加者からは、笑い声とともに大きな拍手が沸き起こりました。

参加した高校生
「いままで近寄り難い存在だったんですけど、きょうのお話を聞いてパキスタン人にも話しかけていいんだなとわかりました」

参加した男性
「パキスタンの人たちが、江別に本当に溶け込みたい、日本のことを知りたいと考えているのが分かったので、これから接するときにも参考になります」

参加した女性
「逆に、私たちの文化ももっと伝えていきたいと思わせるようなお話だったので、ぜひ周りに広めたいと思います」

まずは互いに知ることが安全安心な地域社会への第一歩

平田さんは、日本人も外国人もまずは互いを知ることが、安全安心な暮らしへの第一歩と考えています。

「実際にパキスタン人に会ってひとりひとりと話せば持っていたイメージも大きく変わると思います。「パキスタンの人が増えていて怖い」と言う人がいたとしても、それってハッサンさんのことだよねと、イメージできるようになれば安心できるし、互いを知っていることが、その地域の強さにつながっていくと思います」

取材後記

私は去年8月まで4年間、インド・ニューデリーで暮らしていて、日本とインドとのギャップに驚くこともありました。例えば、待ち合わせのとき、インド人のなかには5分、10分、ときには30分遅れてくる、なんていう人もいます。最初は戸惑うこともありましたが、実際に会って話をすると、インド人の時間の流れ方と私たちの感じ方が異なるだけ、逆に日本人がいろいろ気にし過ぎる面もあるのだと気づかされることもありました。そうして理解が深まると、親近感も湧き、よい付き合い方ができるようになりました。
今後、北海道でも、外国人がすぐそばに暮らしている状況は増えてくると思います。普段関わりがないから、知らない国の人だからと遠ざけたり、無関心でいたりするのではなく、まずは“ご近所さん”として知っていく、その一歩が大切だと取材を通して感じました。

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  • 森下晶

    NHK札幌放送局 映像取材

    森下晶

    2002年入局  2023年8月まで4年間ニューデリー支局でインドを中心に南アジア諸国を取材。 インドでは、貧富や男女の格差が多い農村からニューデリーやムンバイなどの大都市まで全土を駆け回って自ら取材・撮影してきました。札幌局では、海外や外国人と北海道とのつながりをテーマに取材を続けています。

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