転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件   作:友(ユウ)

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マブラヴ オルタネイティヴ編
プロローグ


 

 

 

「パンパカパーン!! おめでとう!! 君は選ばれた!!」

 

「…………は?」

 

気が付いた俺に、そんな陽気な声が掛けられる。

そちらを見れば、何とも軽そうな雰囲気の金髪天然パーマの男がクラッカーを鳴らしていた。

 

「…………どちら様?」

 

「聞いて驚け! 僕は神だ!!」

 

「……………………はあ」

 

俺の問いに『神』を自称する男。

思わず返事が曖昧になってしまう。

 

「おや? どうやら信じてないみたいだね?」

 

「いきなり目の前に出てきて神を名乗られても、困惑しか出てこないと思うが………」

 

「ふむ、『困惑』ね………『否定』はしないわけだ」

 

「まあ、こんな超常的な空間に居る時点で、自分の常識が通用するとは思えないんで」

 

今俺がいる場所は、まるで宇宙空間のような場所だ。

全方位360°闇の中に、星の様に無数の光が輝いている。

 

「なるほど、現実は見えているわけだ。意外と冷静だね」

 

その男は面白そうにそう言う。

 

「ところで、俺をここに連れてきたのはあなた様という事で間違いないので?」

 

「その通りだ。さっきも言ったけど、君は選ばれた」

 

「『選ばれた』………何に選ばれたんです?」

 

俺がそう聞くと、その男はフッと笑みを浮かべ、

 

「『神の気紛れ』だ!」

 

「…………はい?」

 

その答えに俺は思わず素っ頓狂な声を漏らした。

いや、意外にも程があるだろ?

テンプレによくある、間違って殺したとかそういう事を可能性として考慮してたんだが………

『神の気紛れ』とか予想外にも程があるだろう!?

 

「……………俺って死んだんですか?」

 

俺は大事な事を確認する。

 

「そうだね。君の運命をちょいちょいと弄って、見事にトラックに轢かれて人生終了したよ」

 

運命弄ったとか言ったぞコイツ………!

 

「……………で? 俺に何をさせようと?」

 

「おや? 怒らないのかい?」

 

「人の運命弄れる存在相手に如何しろと?」

 

「ははは! いいねいいね。君はちゃんと身の程を弁えている様だ。もし創作小説によくある様に神に対して感情のままに暴言を吐いたら、地獄行きや存在そのものを消滅させるところだったよ」

 

「あぶねぇな………まあ、それ以前に突然終了して怒るほどの人生じゃ無かったって事もありますが」

 

俺の生前は安月給の中小企業に勤めるパッとしない男。

40歳にもなってアニメやゲーム、漫画、ネット小説などが趣味のオタク側の人間だ。

その所為で、金なし、嫁無し、序に運も無い。

生きがいも、生きる意味も見つけられなかったつまらない人生だった。

それが強制終了させられたとて、目くじら立てて怒るほどでもない。

 

「それで? もう一度聞きますが、俺に何をさせるつもりですか?」

 

「ああ。簡単に言えば、僕の暇潰しに付き合って欲しい」

 

「………暇潰しとは?」

 

「君の世界にある創作小説でよくある異世界への転生って奴だよ」

 

「異世界転生っ………!」

 

そのキーワードに思わず期待感が高まる。

 

「因みにどの様な世界ですか……!?」

 

俺は心を落ち着けながらそう聞くと、

 

「BETAと呼ばれる地球外生命体に侵略されて、人類滅亡まであと10年と言われている別の世界の地球さ!」

 

「………って、それってもしかして、マブラヴオルタネイティヴの世界!?」

 

「その通り!」

 

「殺す気ですか!?」

 

俺は思わず詰め寄ってしまった。

 

「安心しなよ。簡単に死なない様に特典を付けてあげるから……………うん、そうだね………」

 

神(?)は思案顔になると、

 

「よし! 君への特典は、君の好きな量産型の機体にしよう!」

 

思いついた様にそう言った。

 

「何で量産型!? ワンオフ機でいいじゃないですか!? ダブルオーとかストフリとか!!」

 

BETAの大軍に対して量産機で挑むなんて死ねと言っているようなもんだろ!?

 

「はっはっは! 単なる無双ゲーなんてつまらないじゃないか!」

 

「こっちは命掛かってるんですけど!?」

 

「どれだけ駄々を捏ねても認めませーん! これは決定事項でーす!」

 

こいつ絶対邪神の類だろ!?

しかし、これ以上突っ掛かって心象悪くすると、さっき言われたように地獄行きや存在を消滅させられる可能性もある。

俺は何とは自制して、何としても生き残る方法を模索する事にした。

一先ずは量産型の中でも強力な機体を選ばねば…………

 

「量産型………量産型…………………………ん?」

 

俺は自分の知識の中からふと思いついたものがあった。

もしこれを認めさせることができれば、生存確率はグッと上がる。

 

「すみませーん! いくつか質問宜しいでしょうか?」

 

俺は手を上げて問いかける。

 

「質問かい? 別に構わないよ」

 

そう返事をする神(?)。

 

「では、まず一つ目。『量産型』という括りは一体何処までなのでしょうか? 名前に量産型○〇と付いていなければいけないのか、それとも量産型という設定があればいいのか。それとも複数作られていれば量産型と判断するのか。どれですか?」

 

「ふむ………その中であれば量産型という設定がある事が条件だね。だから、複数製造されたからと言って、デストロイガンダムとかを選ぶのはNGだ」

 

「そうですか………では二つ目。その機体のポテンシャルを100%発揮する為に特別な能力が必要な機体がありますが、その辺は如何にかしてくれるんですか?」

 

「と、言うと?」

 

「例えば量産型キュベレイを選んだ場合、ファンネルを使う為にはニュータイプ能力か強化人間になる必要がありますよね。その辺りの必要な能力なんかは特典に付けていただけるんでしょうか?」

 

「ああ……なるほど………そうだね…………まあ、その機体に必要な能力なんかはサービスでつけてあげよう」

 

その言葉を聞いた俺は小さくガッツポーズをした。

そうであれば、俺の答えは決まっている。

 

「分かりました。では、俺が選ぶ機体を言います」

 

「おや? もう決まったのかい?」

 

「はい。俺が選ぶ機体は、勇者王ガオガイガーに出て来る『ジェイアーク』を選びます。そんで、俺自身をJジュエルのエヴォリュダーにして下さい」

 

「……………はい?」

 

神(?)が素っ頓狂な声を漏らす。

 

「いやいや、ちょっと待ちたまえ。何でジェイアークなんだね? あれは明らかに特機だろう?」

 

「いえいえ。ジェイアークは歴とした量産型ですよ。三重連太陽系赤の星で合計31機建造されたアーク艦隊の内の1機です」

 

「………た、例え量産型と言えど、特別な主力艦はNG………」

 

「アーク艦隊の主力艦は小説の方に出てきたジェイバトラーでっせ? 因みに最近コミカライズされているFAINALの前日譚に当たる物語では、主力艦はジェイバトラー、ジェイアークは量産型とハッキリ明記されてるよ」

 

「ぐぅ………!?」

 

お、ぐぅの音が出た。

 

「因みにエヴォリュダーに関しても、Gストーンに出来るなら、Jジュエルに出来ても不思議はないですよね? ついでにイークイップでソルダートJのようなアーマーを装着できれば尚ありがたいんですが」

 

俺はついでに要望の追加をしておく。

すると、神(?)は虚空からノートパソコンを取り出し、何やら調べ始めた。

神(?)もパソコン使うんかい!

そして、

 

「…………なるほど、確かに君の言う通りの様だ」

 

神(?)は諦めた様に溜息を吐く。

 

「悔しいが神にもプライドはある。二言は無いよ。君の要望を叶えよう」

 

「よっしゃ!」

 

俺は思わずガッツポーズをする。

 

「はぁ………まさかこんな抜け道で来るとは…………でも、全部思い通りにさせるのは癪だし…………」

 

神(?)はブツブツと呟きながらノートパソコンで何やら調べ始めると、ある所で手が止まり、ニヤリと笑みを浮かべた。

その笑みに悪寒を感じた俺は、

 

「一体どうしたので?」

 

思わず問いかけた。

 

「いやいや、何でもないよ。ジェイアークについてもう少し詳しく調べていただけさ」

 

「………………メインコンピューターのトモロを無くすとかはやめてくださいよ」

 

いくらジェイアークでも、メインコンピューターのトモロが無かったらただの巨大な置物だ。

 

「いやいや。流石の僕もそこまで鬼ではないさ」

 

そうは言うが、人の不幸を楽しむような雰囲気があるこいつの笑みは不安しかない。

 

「じゃあ、さっそく転生させようか」

 

神(?)がそう言うと、どこからともなく紐が垂れてくる。

そして神(?)はその紐を掴んだ。

その瞬間、俺は直観する。

これは一昔前に流行った落とし穴転生か!

落とし穴転生とは読んで字の如く、転生する者の足元に穴が開き、そこに落下することで転生するという雑な転生方法である。

俺は神(?)の最後の嫌がらせかと思い、慌てないように心構えをする。

こいつの思い通りになるのは何か癪だからな。

そして神(?)がその紐を引っ張った瞬間、

 

「………え?」

 

俺は物凄い勢いで打ち上げられた。

足元がスプリングの様に飛び出し、上空に吹っ飛ばされたのだ。

 

「おわぁあああああああああああああああああああっ!?!?」

 

落下する事には心構えは出来ていたが、逆に飛ばされることを想定していなかった俺は思わず悲鳴を上げた。

 

「あはははははははははは! 引っかかったな! た~まや~!!」

 

最後に聞こえた神(?)の笑い声が、とても耳障りだった。

 

 

 

 

 

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