【企業・自治体コラボ】無名の大学生がフィギュア塗装のプロになる……かも!
協力・監修:桑原冷熱株式会社
執筆:4年 井野敢太
お世話になってます。北見工業大学の井野です。
今日は前置きなし! 新プロジェクトの解禁です!
今まで外部に漏らせなかったのですが、やっと公開できる……!
うちのサークルにもついに来ましたよ!
企業・自治体と一緒にデカいことをやる時がね!
2024年9月、おとなりの企業から1通のメール
ことの始まりは9月末。
本学の学生支援課経由で、北見工業大学模型部に1通のメールが届きました。
「模型部の技術を見込んで依頼したい案件があります」
要約するとこういった趣旨でした。
送り主は 桑原冷熱株式会社 さん。
北見工業大学の真正面にある KIT FRONT という建物をオフィスとして運営している会社です。
2年前にこの建物ができた際、テナントとして日本最北端のスターバックスが大学の目の前に誕生し、当時は本学の学生も盛り上がっていた記憶があります。
そのため、北見工業大学の学生に対して KIT FRONT は
「大学の前のスタバの建物」
と言った方がわかりやすいかもしれません。
その KIT FRONT を作った企業こそが桑原グループです。
北見市で創業し、桑原冷熱をはじめとして、桑原電工や桑原電装といった複数の企業からなるグループで、本拠地は北見の西の方にあります。
そして本学の前の KIT FRONT では、3Dプリント事業やDJI製ドローンの販売代理店など、様々な事業を展開しています。
なんだか桑原グループの広報になったかのような気分ですが、回し者ではないですよ〜(笑)
桑原冷熱さんがどんな企業なのか、なんとなーくわかったかと思います。
そんな、大学おとなりの企業からの1通のメールが全ての始まりでした。
2024年10月、オフィスでお話を聞くことに
はじめての対面
さて、企業からの依頼という初めての事態に直面した北見工業大学模型部はKIT FRONT にある桑原冷熱さんのオフィスに出向いて詳細を聞くことになります。
部長が忙しそうだったので先代部長の横田と井野の2人で、できたばかりのハイカラなオフィスにお邪魔してお話を伺います。
建物に通されるとまず社員の方2人が出迎えてくださり、お互い挨拶をしたのち、企業としてどのような業務を行なっているのか、3Dプリント事業の説明などを最初にしていただきました。
実際に依頼品の出力を行なっている、たくさんの3Dプリンターが置かれた部屋でお話を聞いたのですが、普段自分が模型制作で酷使している大学の3Dプリンターとは比べ物にならない強力な設備ばかりで、見ているだけでもずっと興奮していました。光造形うらやましいなあと思って聞いていました。
3Dプリント事業の説明を受けている際は、自分もいちいち食いついて質問をしてしまうので、本題に入る前にかなり白熱してしまっていた気がします。
そしてお互いに緊張感が薄れたところで、本題に入ることになります。
(ちなみにお2人のうち片方はつい数年前まで北見工業大学にいた、僕たちの先輩にあたる人でした。縁ですね。)
告げられる衝撃の依頼内容
次に打ち合わせのためにローテーブルを挟んだソファに通され、出してもらった缶コーヒーを頂きながら目の前で告げられたのは、衝撃の内容でした。
その依頼内容とは、
某所に納品する光造形フィギュアの組み立て・塗装
です!
詳細は公開できませんが、某所からオリジナルフィギュアを制作する依頼を受け、1年後にそれを納品する予定とのこと。
もう1つだけ付け加えると、あるイベントでお披露目するための作例、ということでした。
そして、
・パーツ出力を桑原冷熱さん
・組み立て・塗装を北見工業大学模型部
でそれぞれ担当したい、というのが今回の依頼内容だったのです……!
当然ながら報酬も出るとのお話。
すごい話すぎて頭が追いついていませんでしたが、端的に言うとですね。
無名の学生モデラーがプロとしてフィギュア制作を担当する
ということですよ!!
とんでもない話になってきた。
依頼の背景
しかしよく考えてみれば、行政からの依頼という大仕事のパートナーとして何の実績もない学生モデラーを抜擢するというのは突拍子もない話です。
そこでさらにお話を伺うと、某所からの依頼を北見市の企業として受けるにあたり、折角なら隣にある北見工業大学の学生と協力して、地元の力で一緒に案件を成功させられたら面白い、ということでした。
その上で、北見工業大学模型部がX(旧Twitter)やUMA北海道のnoteで発信している活動や作例なども目を通してくださり、それを踏まえた上で今回お話を持ちかけて下さった、ということでした。
しかし本サークルの学生はガンプラをはじめとしたキャラクターモデルを作っている人が多く、スケールモデルも作る人が少しいるかな、という状態。そのためガレージキットを始めとしたフィギュア塗装の経験がある部員はおらず、SNSでの発信にもフィギュアの作例はありませんでした。
そのためフィギュア制作を依頼するにあたり、技量を判断する材料になる作例を持っている部員がいないかと質問された際は、泣く泣く上記のように回答することに。
お見せできる作例もない素人ばかりということで、この話は立ち消えになってしまうかと思われました。しかし、まだ終わりません。
お前の力を、見せてみろ
フィギュア制作に関しては素人ばかりの本サークルでしたが、今回のお話はまだ終わりません。
桑原冷熱さんから、さらに以下のご提案を受けました。
実際の依頼品を納品するまでは1年の猶予があることを踏まえて!
案件への参加意思がある学生それぞれに!
技量の判断材料としてフィギュア1体を制作して欲しい!
とのことでした。
というのも、実際に某所へ納品するフィギュアは3Dデータも制作前の段階であり、仕上げ担当者も今すぐ決定する必要はないとのこと。
そこで、フィギュアの3Dデータを販売しているサイトから適当に引っ張ってきたキットを桑原冷熱さんの方で光造形出力するので、それを組んできて欲しい、ということでした。
そして、提出した作品の組み立て・塗装のクオリティを以て、実際に案件として依頼をするかどうかを判断する、という流れです。
お仕事として任せられる腕前かを判断する、もうプロテストですよこれ。
さあ、とんでもない話になってきましたよ(2回目)。
2024年11月、壮絶なトライアウト開始
課題キット決定
僕たち2人は興奮冷めやらぬまま、一度この案件をサークルへ持ち帰ります。
そして数日後、作例を提出するキットが決定されました。
それがこちら。
僕も大好きな 暁佳奈 先生の名作『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の主人公、ヴァイオレットのフィギュアです。
ちなみに暁佳奈先生も北海道在住で有名な作家さんです。たぶん桑原冷熱さんも意識して選定してます。
ということで模型部で参加希望者を募り、今回のフィギュア制作トライアウトに参加する4名が決定しました。
その内訳はこちら。
・渡邊くん(1年・写真右下)
・原くん(1年・新部長・写真下)
・山﨑くん(2年・副部長・写真右)
・井野くん(3年・元副部長・写真左)
最後は筆者です。自分に「くん」付けするの気持ち悪いですが、流れなのでご容赦ください。
そして気になる納期が発表されます。
その期間、なんと1ヶ月。
……さあ、とんでもないことになってきましたよ(3回目)。
【写真】狂乱の1ヶ月スナップ
ということで、桑原冷熱さんが光造形3Dプリンターで出力してくれたキットを受領してから、きっかり1ヶ月のフィギュア制作期間が始まりました。
ほとんど年末に提出なので、間に合わなければ僕らに新年は訪れません。
そんな気分での挑戦です。
制作が終わったいま振り返ると、今年のうしろ半分はずっとこの案件の作業をやっていたような気がしてきます。本当にそれくらい長かった。
しかし、作業している最中は締切に間に合う気がせず、寿命を削って進み続けるような焦燥の中で戦っていました。
ただ、参加者4名がそんな極限状態の中お互いに励まし合い、トライアウトに参加していない部員からも激励をもらいながら完成を目指した時間が本当に楽しかったのも事実です。
ということで、このコーナーではそんな僕たちの様子を捉えた写真を残していきたいと思います。やっと文章だけの状態から抜け出せる……!
(冒頭で使えるような打ち合わせ写真とか撮ってなくてごめんね!)
ではどうぞ。
後ろにはキットを受け取ったスタバの袋も
まだ余裕があった頃
もう立派なエアブラシ使い
こっち見てるのこわい
真剣
後輩を奮い立たせる最上級生の姿が
画角いいね
窓の外から1枚
真剣
どうした
背中で語る
やり直し中
井野(3年)・原(1年)・渡邊(1年)・中根(1年)・藤井(1年)
真剣
よそみすんな失敗するぞ
ドヤ顔
真剣
真剣
映りたがる4年生
映りたがる4年生
よそみすんな失敗するぞ
いいね
映りたがる4年生
大学のタオルかぶって眠る井野
1人だけ1.5倍サイズ出力のキットを担当した渡邊くん。パーツデカい。
デカい
最後に全員の写真をもう一度
2024年12月、運命の納品
2024年12月26日、ついにその日がやってきた
激闘の1ヶ月を終えて、ついにその日がやってきました。
桑原冷熱さんに作例を納品するときです。
審判の日がついに訪れましたよ。
井野が部室で完成させた時の写真です。
1ヶ月という厳しいスケジュールですが、なんとかギリギリ完成させたので、いざ納品へ向かいましょう。あとは依頼主の評価に身を委ねるのみ。
いってみよう。
渡邊くん(1年)の作品
諸事情あって、1人だけ1.5倍サイズでパーツ出力されたキットを担当したのが、1年生の渡邊くん。作業する上で取り回しが悪く、苦労していました。
そんな彼の納品した作品がこちら!
原くん(1年)の作品
1年生ながら学祭のコンペにおいて1位を獲得した実力派の原くん。
来年度の新部長でもある彼の作品がこちら!
山﨑くん(2年)の作品
おそらく今回のフィギュア塗装案件に対して、誰よりも熱い想いを持って臨んでいた山﨑くん。
ガンプラやスケールモデルが主だった他の参加者に比べて、ガールキットやフィギュアに対する意欲が一際強いモデラーでもある彼の作品はこちら!
……と言いたいところなのですが、ある事情があってまだお見せできる写真がないのです……。
後日更新しますのでご期待ください!
井野くん(3年)の作品
はい。くん付けしてますが筆者です。
やっぱり自分にくん付けするの気持ち悪いですが、見出しを統一したかったので許して。
ということで僕の作品はこちら!
(この記事では作例それぞれの写真を1枚ずつで済ませますが、各々の作品の制作過程や詳細な完成写真などは後日、別の記事で投稿しますので、ぜひお楽しみに〜!)
大学の前の KIT FRONT へ直接フィギュアを持ち込んで桑原冷熱さんに作例を納品し、今までやりとりをしてきた社員のお2人から対面で作品に対しての印象や質問などをお聞きして、ひとまず今回のフィギュア制作トライアウトは幕を下ろしました。
ちなみに今回はプロテストなので報酬はないですが、お礼としてスターバックスカードをいただきました。桑原冷熱さんの隣のテナントがスターバックスなので、すぐ使えます。ありがとうございます……!
2025年1月、戦いの終わり、そして……
他の3人はどうなってるかわかりませんが、年末の1ヶ月はヴァイオレットの制作のことだけ考えて生活していたと言っても過言ではないので、僕は作品を納品してから、何をすればいいのかわからないような状態になっていました。オフって何すればいいんだっけ。
シーズンが終わったプロサッカー選手とかもこんな気分なんじゃないかな。
ということで今は、桑原冷熱さんと某所(大元の依頼主)の決定を待っている段階です。
実を言うと
「北見工業大学の模型部から仕上げ担当者を選出するかどうか」
以前に
「某所が桑原冷熱さんにフィギュア制作案件を依頼すること」
自体、まだ正式に契約をしたわけではないということなんですよね。
なのでここから先は、果報は寝て待て、ということで、寝て待とうと思います。あとは運命を委ねるのみ。
今回は、桑原冷熱さんも会社の活動内容として今回のフィギュア制作を発信するということで、北見工業大学模型部の側でも情報公開を解禁しました。
このまま上手く事が運べば!
今回トライアウトに参加した学生の中から!
本サークルの部員として初の!
プロモデラーが輩出されることになります!
日本最北端の国立大学『北見工業大学』で、無名のモデラーが模型のプロになる未来が楽しみです。続報をお待ちください!!
それでは、またお会いしましょう。
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執筆者プロフィール
井野敢太
2002年生まれ。北の果ての工業大学生。UMA北海道(北海道学生模型連盟)のnote運営立案者。3D設計ロボット・フィギュア造形・フルスクラッチ。なんでもやるモデラー。趣味がたくさん。サッカーが好き。
当たり前だけど選挙はちゃんと行く。
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