今までは1話完結でしたが、今回は続きます。
最初に監査する部活動は──
「部活動監査ですか?」
「ええ。部活動の設立、運営を担ってるのは生徒会です。本来は全ての生徒に公平かつ平等であるべきですが、部活動という明確に"結果"が出る活動においては、どうしても部費に差が出ます」
「それは……仕方のないことではありますが、我が校ではどの部活動も結果を出していると聞き及んでおります」
「勿論。結果には報酬を。ですが、部活動の結果により付いたスポンサーの数は多くありません。なにせ、あまりに結果を出すスピードが速すぎた。たまたまこの代が豊作だっただけであって、この高校にスターを生み出す力は無いと考えているのでしょう」
「つまりは、部費にあてる資金にも限界があり、それを勘案しながら各部に振り分けていく、と」
「ええ。その役割をアナタに担っていただきたいのです。副会長」
「──仰せの通りに、会長」
──パシャッ。
芝居がかった礼をすると、頭上で謎の音が鳴った。
☆☆☆
──というわけで、私は部活動の監査をすることになった。
会長から賜った大切な仕事だ。しっかりと厳しい目で見なければね。
本来監査は会長が行うべきことなのだけど、彼女もまたバスケットボール部のキャプテンを務めていることもあり、彼女が部費の監査を行ってしまうと内外で文句を言われる恐れがある。
……幾ら会長が公明正大だと全生徒に信頼を置かれていたとしても、必ずどこかで疑いという綻びが生まれてしまうことがある。
彼女もそれを分かっているから私に任せてくれたのだろう。
あぁ、さすが会長だ。誰よりもこの学校のことを想っている。
そしてそんな大事な役目を私に信を置いて任せていただいたことに胸が熱くなる。
この大役、見事に私が引き受けようではないか。
☆☆☆
「会長さ。なんで監査を副会長に任せたわけ?? 自分がバスケ部のキャプテンだから?」
放課後の生徒会室。
その場にいるのは、会長である
彼女らの間には剣呑な雰囲気が漂っており、どうやら会計は会長が副会長に監査を任せたことが気に食わないらしい。
「はい? あぁ、各部活動の労いのためですよ。彼女らは副会長のために部活に励んでいますからね」
副会長が聞けば割と本気で落ち込むことを会長は何の気なしに言った。
実のところ会長は副会長の生徒会活動としての能力もしっかり買っているのでこれが全てというわけではないものの、会計に弱みを見せたくないため現段階では秘めている。
「なにそれ、客寄せパンダってこと?」
「どちらかというと"接待"だと思いますよ。彼が引くレベルの歓待を受けるでしょうから。それと、別に私が監査をしたところで誰も文句は言いませんし言わせませんよ。全国優勝してますしね」
さらりと言い切る会長に、会計はげんなりとした表情で顔を歪めた。
「うへぇ……これだから完璧超人ってやつは……。でもさ、しばらく放課後は監査にかかりきりでしょ? 会長的にはミスったんじゃないの〜? というか会えなくてボクが普通に嫌なんだけど?」
「そうですね。だから監査に行かせたのです。私は彼から監査の書類を受け取るという役目があるので確実に会えますし」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべた会計は、会長からそんな言葉を聞くなり座っていた椅子を蹴っ飛ばして怒気を放った。
「はぁ〜〜!? 職権乱用って知ってるぅ!?」
「使えるものは何でも使わないといけませんよ。アナタみたいに性癖拗らせて餌付けしてる程度じゃ無理だと思いますがね」
「は? 黙れよヘタレ処女ちゃんがさ」
「へ、ヘタレではありません。機が熟すのを待っているだけです」
「熟さねーよ。それ多分卒業間近まで言ってるよ、絶対」
睨み合う二人。
剣呑な空気は「はぁ……」と二人同時に吐いたため息で終息を迎えた。
「「副会長とヤりたい……」」
二人の乙女は、目的の終着点だけは重なっていた。
☆☆☆
「最初はどの部活にしようかな……。在校生が多いだけあって部活動もそこそこあるんだよね」
運動部から行こうか、文化部から行こうか。
確かサッカー部とバレー部は大会が近いって話だったし、今日は文化部の──将棋部にでも行こうかな。
うちの将棋部は強い……らしい。
どうにでも結構伝統があるらしく、ここの将棋部出身でプロ棋士になった人もかなりいるみたい。
そしてなぜか将棋に詳しくない私でも知っている『竜王』のタイトルを冠する人物が、我が校の将棋部にいるとのこと。
いや、実際賞状渡したことあるから容姿を見たことはあるんだけどね。
しかも明後日の全校集会で
『竜王』を取ったとは思えないほど『普通』が似合う少女だったけれど、この歳にして自分よりも歳上の大人たちを薙ぎ倒してタイトルを取ったということは、非凡でもあり、きっと辛く厳しい努力をし続けてきたのだろう。
「そうだ。実績や環境で部費の増減を決めるのも大事だが、実際に1日ほど部活動を体験してみて感じられることもあるだろう。頼んでみようかな」
邪魔にならないように見学だけに留めようとは思うけどね。
本気で頑張っている者に私が茶々を入れるわけにはいかない。
そこら辺の線引きは大事。
「よし、部室についた」
監査を行うという話はすでに周知してあるとのことなので、私は遠慮なく部室の扉をノックした後に入る。
「失礼します。部費の監査のために来ま──え?」
──そこには異様な光景が広がっていた。
かなり広い部室だ。和室で、縦に長いのが特徴の部屋。
とはいえ横幅もそれなりにあって、掛け軸や和の雰囲気が齎す空間は祖父母の家を思い出す。
本来なら太陽が差し込み心地良いはずの空間は、途轍もない重圧で覆われていた。
部員21名。
そのうち20名が、ズラッと部屋の両端に一列ずつ正座していた。すこぶる真顔で、圧を感じさせるように。
部屋の中央には見知った少女が、将棋盤の前に座っていた。
いや、
その姿は、私が知る彼女とは程遠かった。
「どうぞおかけください、副会長。まずは一局、いかがですか?」
その少女は──『竜王』を史上最速最年少で奪取し、つい先日『棋聖』のタイトルを獲得した神童。
「随分な歓待だね。まさか
「そんな構えなくても構いませんよ。軽く指しながら
どう見ても軽くではない。彼女の射抜くような視線を見れば分かる。
きっと何か部費とか色々と不満があるのだろう。
将棋を指すと人柄や相手の考えていることが分かると言う。
無論、その境地に達するのは一部の強者だが、創生さんは十分に……いや、私じゃ計り知れないくらいの強者だ。
きっと将棋を指すことで私の考えを見抜き、何か譲歩を引き出させるつもりに違いない。
……正直私は将棋をルールしか知らない。
だけどね。この勝負は将棋に勝つことが勝利ではない。
私は私の意見と、会長から託された監査役をこなし、公明正大に評価する。
それさえできれば私としては勝ちなのだ。
──この勝負、負けられない。
※TAK(たぶん あなたの 考えすぎです)
みんな大好き将棋部の化け物が登場。
竜王取って棋聖も取りました。化け物です。
え、現実ですか? F・S棋士? 知りませんねぇ。
今話は下ネタが少ないって?次回に期待だぜYeah!
熱明けそうそうに書いたんで、どっかでこの話の前半部分を書き直す可能性があるので、ご留意を。好評だったらこのままにします。