貞操逆転世界の生徒会副会長   作:恋狸

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ここから物語を動かしていきたい。そんな気がする。


補習授業という名の大講義

 さてさて、生活相談会が終わった……あれ? 結局悩み相談されてないのでは……?

 うーん、寿さんが途中で気絶してしまったから敢え無く終了させてもらったが、これは副会長として反省すべきかもしれない。

 どうにも私と話した人は何人か気絶するのだけれど、なんでだろうか。貧血持ちが多い世界なのかな? もしかして。

 

「寿さんには後で謝っておこう。──うん? 何か落ちてるな」

 

 寿さんをお姫様抱っこで保健室まで送り届けた後、生活相談会を行った部屋まで戻ると、そこには何かの機会が落ちていた。

 しげしげと拾って眺めてみると──

 

「ボイスレコーダー? 何のために? 寿さんの私物かな。ボイスレコーダーを私物にしているのはなかなか聞いたことがないけれど」

 

 規則的には勉学と関係のないものを持ってきてはいけないのだが、これくらいはまあ、問題ないだろう。

 彼女ならば何かに悪用していることは無いだろうし。

 

「これも謝る時に返しておこうか」

 

 あ、もしかして教師の授業を録音して復習に使っているのかもしれない。

 勉学においても非常に優秀な成績を誇っている寿さんだ。きっとそうに違いない。

 

「私も何においても気を抜かないように頑張らないと。模試も全国一位逃しちゃったし」

 

 副会長だから。生徒会所属だから。

 そんな言い訳はしたくないし、現に会長は模試全国一位をずっとキープし続けているのだ。

 尊敬する会長が勉学も生徒会も部活動も両立しているのだから、私もきっとできる。努力し続けるのは昔から得意だという自負があるしね。

 

「おっと、時間が……急がなければ」

 

 ふと時間を見ると時計は16時を指すところだった。 

 私は走らないように……けれども早足で大講義室へと向かった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

「ごめんね。少し遅れちゃった。それじゃあ今日も頑張って勉強していこうか……!」

 

 大講義室──数百人入っても問題ない講堂には、()()()()()()()ズラリと沢山の生徒たちが並んでいた。

 低く見積もっても全校生徒の半分ほどはいるのではないか。

 

 【特別補習会】。

 これも私が副会長になった時、校長と会長から許可を取り正式に活動を始めたイベントになっている。

 まず、全校生徒から補習会の希望者を募り、週に一回私が教師役となり国語、数学、英語をローテーションしながら教えていく流れになっている。

 

 目的としては、生徒の学力の底上げ。

 1年生は予習のため。2年生は学期末考査や、模試の傾向と対策のため。3年生は復習と受験に使えるテクニックなどを学ぶため。

 

 放課後に2時間ほど時間を取って行っている【特別補習会】だが、当初は希望者は数人単位だと思っていた。いや、なんなら一人も希望者が出ない可能性まで危惧していた。

 だって、勉強なんてしたくないのが当たり前だろう。

 私は勉強……ひいては学ぶことが好きだが、そんな人間が少ないことくらい流石に分かっている。

 

 それでも学習意欲のある生徒のために開くことを決意したのだが────まさか数百人が参加希望を出すとは思っていなかった。

 それに、参加のできない生徒は大抵部活や習い事……または家の用事など仕方のない理由がある者がほとんどで、それ以外の生徒は全員参加と言っても過言ではない。

 

 さらに嬉しいのは、不登校の生徒が通常の授業は行きたくないが、【特別補習会】だけなら行くと言ったことだ。

 これを機に是非とも勉学の素晴らしさを知ってほしい。

 

 

 ──あ、ちなみにだけど私は高校3年生までの知識は全て頭に入れているから、一応先輩たる3年生にも教えることができる。

 だからローテーションで今日は1年生向け、今日は3年生向け……のような形を取っているが、それでも全員が参加するのだから、やはり学習意欲の高い生徒が多くて私は感動して泣きそうだ。

 

「それでは今日は3年生向けの講座を始めていきます。1、2年生の皆さんは、事前に配布したテキストを進めていてください。分かんないことがあったら周りと小さな声で相談するのも良いよ」

 

 というわけで、今日は先輩への講義だ。

 1年生と2年生は先週取り組んだ授業をもとにテキストに取り組んで貰おう。そのテキストはちなみに私が作った。

 

「それでは今日は複素数平面について──」

 

 

☆☆☆

 

 

「はぁぁ〜♡凛々しい! 今日も凛々しいわ、副会長!」

「補習会の学習テストで優秀な成績取ったら副会長とヤれるって噂マジ?」

「副会長の言葉なんて一言一句暗記してるわ。面白いことに思い出すだけでなんか問題解けるのよね。なんでかしら」

「年上好きのあたしが何で年下にこんなキュンとするのよ……!!! ちゅき!!!!!」

 

 ※すべて小声で、ちゃんと講義の話は聞いてます。

 

☆☆☆

 

「このテキスト、どこにも売ってないんだけど副会長はどこで見つけてきたんだろ。実践問題の解答例とかめちゃくちゃ分かりやすいんだけど」

「あーー、それ副会長の自作ッスよ。夜なべして作ったとかほざいてたッス」

「マジ??? この分量を??? 辞書ゾ???」

「あの人にプライベートな時間とか無いッスからね。趣味ってなんかあるんスか? って聞いたらあの人生徒会業務とか言ってたッス」

「はええええ〜。卒業したらどうするんだろ」

「国が副会長ってポスト作りそう」

「草」

 

 

☆☆☆

 

「……今日の授業はここまで! 分からないこととか聞きたいことがあったらアンケートのフォームに書いておいてくださいね」

 

 ふぅ。なんとか無事に授業を終えることができた。

 上級生にものを教えることは意外と気が張る。この後輩生意気だな、とか思われてなければいいのだけど。

 そういった罵りがあっても、最終的にみんなの学力が上がってくれれば私としてはただただ嬉しい。

 

「このヤケに見やすいアンケートフォーム、副会長がプログラミングして作ったらしいよ」

「あの人やばすぎ」

 

 授業が終わると、ざわざわと講堂が人の喧騒であふれるようになる。

 本当は質問とかがあったら直に受け答えをしたいんだけど、補習会の第1回目にそうしたら長打の列で凄いことになったので、体制を変えてアンケートページを自作することで代用した。

 すべてを読むのは大変だけれど、しっかり目を通して返信もしている。

 

 

「ふぅ」

 

 ぐぐっと腕を伸ばして、私はこそっと講堂から出た。

 

 夏の空はすでに夕暮れ模様で、西陽の射す廊下には風情があった。私の心も雲一つ無い空のように晴れ渡っている。

 さてと。1時間くらい生徒会業務をしてから帰ろうかな。

 

「会長は流石に帰っただろうし、夢咲さんも【特別補習会】で疲れているだろうし──」

 

 そんな思考をしつつ生徒会室の扉を開けると、そこには銀髪ロングの少女がいた──

 

「あぁ、久しぶり。来てたんだ、響さん」

 

「やほ、久しぶりだね、副会長。ボクがいたらダメかな?」

 

 生徒会会計──(ひびき)香織(かおり)さん。

 私と同じ2年生で生徒会を共にする仲間だ。あんまり学校にも生徒会にも来てないけれどね。

 

「まさか。君が来てくれて嬉しいよ。今日の作業はちょっと一人だと終わりそうになくてね。助かった」

「ほ〜、一人じゃあ終わらなさそうな作業を一人でしようとしてたんだ、副会長は。毎回言ってるじゃん? 仲間を頼れって」

「これでも十分頼ってるつもりなんだけれどね。むしろ頼りすぎだ」

「どこがぁ〜? ハァ、まあボクがいて助かったね。()()()じっくりと作業しよっか。二人で」

「うん? そうだね。手伝ってくれると嬉しいよ」

「ハァ……。あ、そういえば差し入れ冷蔵庫に入ってるから後で食べてね」

 

 ため息を吐きながらやれやれと首を振る響さん。

 彼女には事あるごとに説教されているが、なかなか面目がない。人に頼る前に自分でやってみろ、と昔言われた経験がどうにも今もなお私を縛っているらしい。

 それ自体は間違っていないとは思うのだけどね。

 

 それはそうとまた差し入れしてくれたんだ、響さん。

 私を少食の病弱だと思っているのか分からないけれど、なぜか響さんは私と会うと高確率で食べ物を差し入れてくる。

 最初は申し訳なくて断っていたが、断るとすっごく悲しい顔をするから受け取るしか無かったよ……。

 

 そんなに細く見えるかな? 多少鍛えてはいるんだけどね。

 

 うーんと悩みながら作業をしようとパソコンを開くと──ガチャっという音とともに夢咲さんと会長が入室してきた。

 

「あ、やっぱり一人で作業しようとしてたッスね〜、この先輩は。あ、ってか響先輩いるじゃないスか。どもッス」

「議事録と監査の資料作りですか。最終的に承認するのは私なのですから、最初から頼りなさい。非効率です。あと響さん、アナタはちゃんと学校にも生徒会にも来なさい。()()()()()でしょう?」

 

 夢咲さんと会長の言葉に私はうっ、と項垂れる。

 どうやら私の行動を私以上に分かっているようだ。彼女たちには二重に手間を取らせてしまった。申し訳ない。

 

 だけれど、会長の見計らった、とはどういうことなのだろうと疑問に感じていると、正面に座っていた響さんが露骨に不機嫌そうな表情で「チッ」と舌打ちをした。

 

「流石は会長ですねぇ。ボクの行動がすべて分かっているみたいだ」

「いや、響先輩行動全部SNSに載っけるじゃないスか……そりゃ分かるッスよ……」

「お陰でいつ生徒会に来るのか分かるので助かります」

「しまったSNS廃人が仇になったか……」

 

 よく分からない会話をしているけれど、仲良さそうで何よりと私はにっこりと微笑んでおいた。

 ちなみに私はSNSは通話とメッセージのアプリくらいしか入れていない。情報収集は新聞とテレビで事足りるしね。

 

「みんな、来てくれてありがとう」

 

 とりあえず私が見せられる最大限の笑顔で彼女たちにお礼を伝えると、夢咲さんは顔を真っ赤にして俯き、会長はなぜか後ろを向き、響さんはニマニマと嬉しそうな顔をしていた。

 

「それズルいッスよ……」

「ふぅ……はぁーーー……機は全然熟していませんので落ち着け私」

「何やっても絵になるなぁ、副会長は」

 

 ……?? とりあえずお礼が伝わって良かった!




生徒会のメンツはこれで揃いました。

生徒会長  術恵子(すべ けいこ)
副会長   副会長(こいつの名前が明かされていないことを読者は知っているだろう。副会長は副会長)
生徒会書記 夢咲愛(ゆめさき あい)
生徒会会計 響香織(ひびき かおり)


副会長からの信頼度。

生徒会長≫≫超えられない壁≫≫書記≫会計。

あくまで信頼度なので、恋愛感情はこれっぽちもない。
どんまい会長。
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