感想はすべて拝読しており、とても嬉しく存じます(小並感)
「おはようございます!」
「ファッ!? お、おはようございますありがとうございます」
「ん? 挨拶ありがとうね」
「でゅへへへ……」
今日も今日とて朝の挨拶運動の時間だ。
朝の挨拶運動……生徒会のたすきを纏い、校門に立って登校してくる生徒たちに挨拶をするという運動である。
まあ、どの学校でもこういうのはあると思うけどね。
前世の頃の私は、挨拶されれば挨拶するが、自分から進んで挨拶をしようなんて気持ちは無かったし、朝の挨拶運動なんて「早起きするの大変そうだなぁ」としか思ってなかった。
なにせ相当数無視されるし、メンタル的にも参ってしまいそうだったから。
だけども、この世界に転生して理解した。
挨拶の重要さを。する側もされる側も。
まず単純に、挨拶は気持ちいい。
声を出すのが億劫でも、おはようございますの一言だけで心が晴れやかになるような気分になる。
なんというか……声を出すハードルが低くなるみたいな感じかな。
それと、挨拶を返した生徒たちの笑顔を見るのが好きだ。
どうやら生徒たちも挨拶を気持ちいいと感じているようで、私が挨拶をすると、全員が全員嬉しそうな顔をする。
この学校では挨拶運動はこれまで実施していなかったから、私が校長に直訴して始めることの許可を得たという経緯があるが、やはり生徒たちも挨拶をしたかったに違いない!
許可を取る際に『え、本当に良いの? 大丈夫? いや、不登校の子も来そうだけどさ。マジ? こっちとしてはありがたいんだけどさ。こんな男いんの? マジ?』と校長に酷く困惑気味な表情をさせてしまった。
私としては校長の年齢が30歳と、とても若いことが驚きなんだけどね。
どうにもこの世界で教職はかなり人気の職業らしい。
人が飽和するあまり、優秀な者から優先的に配属先を選べるようなシステムになっているらしく、教員採用試験は世界観が違うような血で血を争う闘争が繰り広げられているらしい。
……なんで教職が人気なんだろうか?
まあ、かくいう私も卒業後は教職に就きたいと考えているのだけどね。
本来男性は職に就かずとも国から大量の助成金が毎年送られるのだが、勿論私はそういったものに頼らず自分でお金を稼ぎたいと考えている。
前世は前世で今世は今世。当然助成金で暮らしている男性を揶揄する意図は無いが、私が個人的に嫌というだけなのだ。
「おはようございます!」
「お、おはようございましゅ。ほ、本日はお日柄もよく……」
「そうですね。良い天気ですね!」
「は、はしゅ……うふふふふふふ」
ふふ、やはり挨拶というのは素晴らしいものだね。
今日は朝の挨拶運動から始まり、放課後は生活相談会と、私主導で行う補習活動がある。
忙しいが、沢山の人に頼られるこの環境は、とってもやり甲斐があると思う。
☆☆☆
「それで……なにか困ってることがあるのかい? えーと、
「わ、わたくしの名前を憶えていてくださったのですか……!? こ、光栄ですわ……!」
「さすがに全校生徒の名前は7割程度しかまだ憶えていないけれど、隣のクラスの人くらいは憶えているさ」
「7割も憶えていらっしゃるんですわね……」
生徒会副会長であるならば全校生徒の名前を憶えておきたいと思っているが、この学校の全校生徒は千人ちょっとなので、流石に難航している。
会長は全校生徒の名前、容姿、趣味まですべて把握しているというのだから、流石素晴らしい会長だとしか言えない。
さてさて、今日の生活相談会の相談者は隣のクラスの
どうにもかなり良いところの生まれらしく、言葉遣いや所作には上品な香りが漂っている。
黒髪ボブで、丸いメガネをかけている彼女は緊張しているようで、動きがかなりぎこちない。
同級生なんだからそんなに緊張しなくても良いと思うんだけどなぁ、と苦笑しながら、私はまず緊張を解きほぐそうと考えた。
「寿さんは確か弓道部だったよね。最近の活動はどうだい?」
「は、はい。全国で一応……その、優勝しましたわ」
「優勝!? それはすごい! おめでとう!」
「きょ、きょ、きょ、恐縮ですわ……!」
私が驚きつつも笑顔で祝福すると、私の顔を見た寿さんが頬を真っ赤に染め上げて挙動不審になった。何かしてしまったかな……?
いやはや、それにしても優勝とはすごいなぁ……。
なぜか我が校は私が入学した時から文武ともに途轍もない成果を出すようになったのだけれど、きっと校長が代替わりしたり我が生徒会長が色々な取り計らいをしたからに違いない。
尤も、一番素晴らしいのはその成果をあげるために努力した生徒たちだけどね。
「私からも祝わせておくれ。なにかして欲しいことがあったらなんでもするよ」
「────ッ!?!?!?!?!? な、なんでも……ですか」
「うん? まあ、私にできることがあればだけどね。君が勝ち取った栄誉に報いることができれば私は満足だよ」
「ふーっ……ふーっ……落ち着けわたくし……副会長はいつもこんな感じ……調子に乗るな……掟を忘れるな……くっそエロい顔してますわね」
すると、考え込む仕草でブツブツと何かを呟く寿さん。
その表情は傍から見てもかなり鬼気迫る表情で、ちょっぴりだけ怖い。
そんなに考えることじゃない気がするんだけどなぁ。
「わたくしから触れるのは掟破りだからNO。過度なお願いは副会長に恐らく断られるでしょう。……けれどわたくしから触れなければ良いのでは? かつ、貞操観念がどことなく男性にしては緩すぎる副会長ならしてくれそうなこと……考えなさいわたくし。今までなんのために勉強してきたんですの? そう、エロいことに活かすためですわ。数学の勉強も、国語の勉強も、突き詰めればきっとどこかでエロいことに使えるんですの。思い出しなさい、わたくしの信念を。わたくしは神にうんこ食ったらイケメンとセ◯クスさせてあげると言われれば笑顔でクソを食らっても良いんですわよ。……まあ、最高級のイケメン神たる副会長を発見してしまったので、わたくしはただのイケメン程度じゃクソは食らいませんがね。副会長とセ◯クスできるなら、わたくしは世界に反逆しても良いし、王水もガブ飲みしますわよ……よし、わたくしの灰色の脳細胞がいい考えを思いつきましたわ」
ギリギリ私に聞こえない声で呟き続ける寿さんの表情はコロコロと変わっていて、今度ばかりは傍から見れば面白い状況下になっていた。
──5分後、ヨシ! と覚悟の決まった表情をした寿さんは、ごくっと生唾を飲み込んで言った。
「ふ、副会長っ、わ、わたくしとセッ……まちがえた──わたくしにハグをしてほしいんですの!!」
──なるほど?
私はポカンと口を開けて固まった。
「なんだ、
とっても考え込んでいたから、弓道部の部費を二倍にしろとか言われるのを覚悟していたんだけどね。実際優勝を機に部費は上げるから大丈夫だけど、個人的なお願いとは露にも思わなかった。
ハグ……ハグね。そんなことで良いならいくらでも私は身を切るさ。これで本当にやる気として還元されるのならだけども。
「エッ、いいんですの?」
「もちろん。君のやる気になるなら」
「な、なります! なりますわ!! オモチャの矢で脳髄ぶっ壊せるくらいにはやる気出せますわ!!」
「物騒だね?? まあ、それなら良かった。じゃあ早速──」
寿さんに向かって一歩を踏み出そうとすると、彼女は「ちょ、ちょっと!」と手で制して私を止めた。
あれ? やっぱり嫌になったのかな?
「あ、あの──強く抱きしめて耳元で『よく頑張ったね』って囁いて欲しいんですの」
「え、うん。構わないよ」
なるほど? オプション的な?
うーん、私の声でそんなよくあるイケメンみたいなことできるのかなぁ。耳障りじゃなきゃ良いのだけど、求められたのなら応えるまで。
私はもう一歩踏み出す。
今度は止められることなく彼女の前まで行くことができた。
立ちすくむ寿さんの顔は耳まで真っ赤で、熱があるんじゃないかと心配になるほどだった。
「それじゃあ──するね?」
「ひゃ、ひゃいっ」
──ゆっくりと私より身長の低い寿さんの体を抱きしめる。
暖かい人の温もりが広がる中で、私に抱きしめられた寿さんが痙攣するように何度かびくびくっ! と動いた。……大丈夫かな?
そして、約束を忘れる前に、私は彼女の耳元で──
「──お疲れさま。よく頑張ったね。えらいよ」
と囁いてみせると──
「────────ア゛ッ゛」
──寿さんは白目を剥いて気絶した。
……どうしよう。
あーあ、また壊れちゃったね(性癖)。
もうASMRでしか無理だね(副会長オンリー)。
当然おわかりかと思いますが、この学校はごくごく普通のマンモス校でした。
まあ、進学実績はかなりのものでしたが、どちらかというと勉学に重きを置くタイプで、部活動などはいけて地区優勝。
部活によっては大会に参加するのも危ういところもありました──が、副会長入学ですべてが一変。
新たに入ってきた
・革新を厭わない校長の存在。
・1年にして生徒会長の座を掴み取った伝説的会長の存在。
・スケベすぎる男に良いとこを見せたい肉食獣の爆誕。
これにより「部活動で実績出したら褒めてくれるんじゃね!?!?」的な直接アピールできないヘタれどもがこぞって部活動に入部。
結果として──
サッカー部 全国ベストエイト(男目当てでたまたま神童と呼ばれた存在が入部してきた)
野球部 甲子園出場(1回戦敗北)
バスケ部 全国優勝(生徒会長がいる)
卓球部 シングルス全国出場。
バド部 シングルス全国2位。
陸上部 十種競技すべて全国出場。
ソフトテニス部 ダブルス全国優勝。
吹奏楽部 全国金賞。
美術部 世界的有名なコンテストに入賞。
写真部 大人も参加する全国写真コンテストで金賞。
文芸部 部員の一人が書籍化。
将棋部 三段抜けでプロになってすぐ竜王取った。
こ う な っ た 。