まさかいけるとは思ってなかったので3度見した。
「──会員番号492番。恐れ多くも
「ハッ、中学一年生の頃に書いたポエムを20万フォロワーを抱えるSNSで投下いたしました。これでしばらくは黒歴史に苛まれるかと」
「よろしい。犯そうとしたのならばこんなものじゃ済ませないですがね。まあ、触れようとした程度でしたらこれくらいで許して差し上げましょう」
暗闇に包まれる巨大な空間──講堂には多くの人間がいた。
軽く見積もっても300人はいる人間たちは、皆一様に黒いフードを被り、【♡副会長♡】とポップ体で書かれた缶バッジを胸につけていた。
──彼女らは通称【ファンクラブ】。
正式名称【副会長の平穏な日常を守りつつ何らかの形でおこぼれをもらってイチャイチャし隊】のメンバーたちだ。
彼女らは現在、報告会と呼ばれる──彼女らが信奉する副会長に危害を加えようとしたものに対する罰則の報告、または違反者の報告などを行う定例会の最中だった。
講堂の中心にいる人間が淡々と指示を出していくのを、周りの人間たちは固唾を呑んで見守るとともに、戦慄していた。
「ごくっ──あれが《
「まあ、副会長に触ろうとしたんだもの、当然の処遇だよね。黒歴史の開示だって個人情報は隠されてるんだし生易しいさ。ボクならソイツはファラリスの雄牛の刑にでも処すよ」
「殺意高杉ィィ!! ハッ、というか貴方様は……!!」
【液ロス】の処遇に恐れ慄く一般教徒がボヤいていると、不意に後ろから小柄な人間が殺意の高すぎる怨嗟を迸らせる。
思わず突っ込んだ一般教徒だったが、殺意の高い彼女の声を聞いてその正体を察する。
「信仰3位……
「人聞き悪いなぁ。副会長は些か細すぎるんだ。ボクは彼を健康にしているだけに過ぎないよ」
高カロリー差し入れ続けているのは健康なのか? と周りの教徒たちを思ったものの、報復が怖いため心の中でツッコミをしておいた。
なにせ彼女は【ファンクラブ】の中でも過激派で有名だからだ。
行き過ぎた制裁を提案することが多く、大抵の場合は【ファンクラブ】実質のリーダー的存在である【液ロス】によって却下されているものの、たまに【液ロス】も行き過ぎた思考の発展により暴走することがあるため、教徒たちは彼女たちを宥めるのに日夜必死なのである。
「やあ、【液ロス】。元気かい? そろそろボクの性癖を理解する気になった?」
「【ファッティア】ですか。遅刻ですよ。それと、あなたの性癖については同意しかねますね。体重の増加と運動不足により、体育の際に排出される体液が多くなる点については喜ばしいことですが、体重の増加というものに頼って吐き出される体液は──華がない。よって、却下です」
「ちぇっ。相変わらず【液ロス】は頑固だよねぇ。まあ、別に性癖は人に押し付けるものではないから構わないけどね。お互いに不干渉なのがココの鉄則でもあるし」
「ええ。それについては同意です」
【ファンクラブ】にはルールが存在する。
まず、この集まりの根幹たる絶対ルール。
・自ら副会長に触れることの禁止。
これに尽きる。
学校の治安はこのルールによって保たれており、これを違反しようとしたものは裏で内々に処理される。
程度が低ければ此度の黒歴史の開示程度で済むが、もしも副会長を犯そうとしたものがいれば、社会的に完全に抹殺され、二度と表社会で生きていけなくなってしまう。
もちろん、自ら触れなければいいので、副会長からの接触は罰則なしではある──が、血涙とか色んな汁を出しながら悔しがられるそう。
そして次に大事なルールは──
・教徒同士の詮索の禁止。
これは、教徒たちは日常生活では普通に生活をしているただの女子高生だからである。
彼女らは教徒でもあり生徒でもある。
その平和的世界を維持するためにも、素性をフードで覆い隠し、プライベートな会話は禁止されている。
あとは社会的抹殺後に犯人に報復されるのを防ぐためである。
令和の傘連判状である。
──他にも様々な細かいルールがあるものの、彼女らは学校内の治安維持に一役買っている。
【ファンクラブ】が無ければ、今頃学校は無法地帯の肉食獣たちであふれ、
それが分かっているからこそ、【ファンクラブ】の面々は学校内での監視を欠かさない。
いつ誰が違反するのか分からないからこそ、監視をやめることができない。
【ファンクラブ】は最早、六波羅探題のような働きをしていた。
「さて、報告会はこれくらいにして──この後は鑑賞会のコーナーといきましょうか」
信仰1位の【液ロス】がそんな号令をすると──
「「「ウオオオオオオオオオオ!!!!!」」」
とんでもない叫び声が講堂を……いや、学校中を揺らした。
※副会長は帰宅済みです。
鑑賞会──それは簡単に言えば副会長の盗撮展示会である。
各々がパシャリと盗撮した写真を捨て垢で【液ロス】に送り、それを彼女がまとめてスライドショーとして流すのだ。
鑑賞会が終わればデータは自動で破棄される徹底さもあり、実のところ盗撮とは言ったものの、副会長の許可は出ているのだ。
鑑賞会を最初に行う際は批判が出た。
『これは明確な違反ではないのかと』
その瞬間──
──スッと信仰6位の、副会長を見続けた結果、視ること全てに興奮するようになった通称、【ヴォイヤー】が音声データを取り出した。
『私の写真? ああ、別にいつ撮っても大丈夫だよ。許可もいらないさ。もしかしたら他学年には私の顔が広がってない可能性があるからね。写真を通して知ってもらえたら嬉しいな。あ、でも他の人の迷惑になる撮り方はだめだよ。私との約束ね?』
『あ、ひゃいっ。もちろんでしゅぅ……あへへ』
副会長の魔性の声に教徒全員がうっとりとなる中、そのまま【ヴォイヤー】に無言での拍手──いや、スタンディングマスターベーションが送られた(※拍手です)。
そのため、教徒全員に他人の迷惑になる撮り方と、際どい部分や直接的な性を感じる撮影を全面的に禁止させた上で鑑賞会が行われる運びとなった。
※あくまで直接的な性が禁止だったため、各々の性癖が感じられるようなショットがある模様。
ちなみに、このルールを破った場合、今後の鑑賞会の参加禁止と、信仰4位が自作した簡易版拷問器具(※命の危険は一応無し)の実験台にされるため、破る者は誰もいなかった。
──こうして校内の自治は保たれている。
しかしあくまで保たれているのは
ちなみに信仰ランキングは入れ替わり制度がある。
その名を性癖演説バトルと言う。
各々の自作した5枚の性癖カードを開示し、その後1枚1枚たっぷりと説明し、一般教徒からより多くの支持を得たほうが勝ちというルールである。
このバトル制度のお陰で、なぜか校内から全国演説コンテストの優勝者が生まれる事態になったそう。
あ、教徒に教師はいます。
※密かに匿名外しました。なんかの間違いで商業化しないかな……。