「誘惑されておっぱい一つも触れない私なんて消えてしまえば良いんスぅぅぅぅううう!!!!」
気絶から回復するなり叫びながら去っていった夢咲さんに、私は小首を傾げる。
……うーん? 私のために頑張ってくれようとしたことは間違いないけど、エロスに対する免疫が夢咲さん自身にあんまり備わってなかったってことかな?
尚更彼女には無理させたようで、申し訳なさが芽生えてくる。
ごめんね、夢咲さん。
羞恥心は芽生えなかったけど申し訳なさは芽生えたよ……。
さて……はだけてしまった制服を着なければ。
もしもこんな姿を晒してしまえば、私は生徒たちから不真面目な副会長として罵りを受けてしまうに違いない。
……いや、さすがの私でも分かっている。この格好が見つかれば騒がれるということくらいはね。
ふぅ、と息を吐くと──不意に生徒会室の扉が開き、一人の女子生徒が入室してきた。
これはマズイ……と身構えたが、入ってきた女子生徒が黒髪ロングの怜悧な表情をしている女性だと分かると、私は途端にホッと安堵の息を吐いた。
女性は私の姿をジロリと一瞥するなり一瞬ピタッと動きを止めたが、すぐさま私を咎めるような視線をよこした。
「──生徒会室であなたは何をしているのですか?」
「あぁ、会長。すみません。ちょっと着替えようとしていて」
「そうですか。ここには他の女子生徒も来るのですから、横着せずに男子生徒用の更衣室で着替えてください。あなたの存在は風紀を乱します」
「これはこれは申し訳ありません。すぐに移動します」
「分かればよろしい」
女性……生徒会長の
着替える予定は特には……いや、確かこの後体育があったね。
丁度良いから体操服に着替えにでも行こうかな。
──にしても、万人が騒ぎ立てるだろう私の格好を見ても顔色一つ変えないなんて流石会長だなぁ。
この世界の女性は総じて男性に興味を持つ……というかなり尖った世界観なのだけど、会長だけは一度もそんな素振りを見せたことがない。
本当に興味が無いのならそれはそれで良いし……というか多分そうだと思うけれど、万に一つ興味があっても己を律し続けているというのなら、彼女は真に尊敬すべき人だと思う。
個人的にも会長には感謝しなければならないことが多い。
そもそも私が共学であるこの高校で副会長になることができたのは全面的に会長の手腕によるものだ。
この高校では、男性は副会長に立候補することができない。
投票制であることから、著しく公平性を損なうことになるし、男性目当てで生徒会に立候補する輩が多数出ることが予測されたためだ。
生徒会に入る気満々だった私は、この制度に酷くガッカリしたと共に、確かに納得できる理由ではあると断じた。
それでも、生徒たちのイジメや憂いを無くすためには一定の権力が必要だと考えていた私はどうしても生徒会に入ることを諦められないでいた。
──1年が経った高校二年生の時。
先んじて会長になられば
『あなたの存在は風紀を乱します。よって、副会長として私に監視されなさい』
──そんなことを言い放ったのだ。
私にとってはまさに渡りに舟。
どうにもこの言葉は事実ではあるものの、中学の頃の私の活動を鑑みてのものらしい。
嬉しかった。男性として贔屓されがちなこの世界で、ただ一人純粋に活動を評価して生徒会に引き入れてもらえたことが嬉しかった。
それから私は会長のことをすっごく尊敬している。
……まあ、彼女は私に対してかなり当たりが強いけどね。
☆☆☆
「フーッ! フーッ……! な、なんて格好を……っ、あの男はぁ……!! いつか絶対ぶち犯してやるぅ……!!」
☆☆☆
体育は好きだ。
体を動かすこと自体が気持ちいいし、この世界の女性は男性よりも力が強い。
だからこそ、力で劣る私は技術で対抗することしかできない──それはもう張り合いがあるというものだ。
「副会長! パス!」
「──っ、決めて!」
一人二人とドリブルで躱したが、立ちはだかる女子生徒たちはまだ多く、みんなしてやけに気合いが入っている。
このままゴールまで持っていくことは不可能だが──私は一人ではない。
手を上げてパスを要求する女子生徒にすべてを託したパスを送ると──
「ウオオオオオオオオオオ!!!!! どかんかいおのれぃ!! 副会長からのパス=せいこおおおおいいい!!!!!」
「過言じゃボケィ! 通すかゴミカスぅ!!」
「あたしはこのゴールを止めて副会長の曇った顔を見るんやァァァ!!!」
「お前味方だろうがよぉぉおおおお!!!!」
なんか敵味方入り混じるカオスな状況になっていたが、私がパスを送った女子生徒が、見事すべてを躱しきってシュートを決めきってみせた。
私は高揚感を覚えつつ、シュートを決めた
「やった! ナイスシュートだよ!」
「ッシャ! 受精完了ォ!」
「え?」
「あっ、嬉しいなって」
よく分からないことを叫んだ彼女だったが、どうやら嬉しさのあまり叫んだだけだったらしい。
うん、たかが授業と言ってしまえばそれまでだけど、全員の力を合わせて掴み取った勝利の余韻は良いものだ。
ふぅ……男性用下着を着け始めてから動きづらかったけど、ようやく慣れてきたかな?
パタパタと体操服で通気性を保ちながら暑さに耐える。
「くそエロい……」
「反則だろ、あの副会長……」
「どこの世界にチラリズムの需要を満たしてくれる副会長がいるんだよ。あ、ここか。
「頼めばヤらしてくれねーかな」
「シッ! ファンクラブの奴らにバレたら半殺しにされるぞ!」
「あいつら社会的に殺してくるから逆らえねーんだよな……」
私がチームメンバーと勝利を喜んでいると、敵チームの彼女たちはがっくりとした様子で膝をついていた。
体育の授業の勝敗で一喜一憂ができるなんて、私はつくづく周りの人間に恵まれたなぁ。
──共学なのに私以外の男性いないけど。
私は敵チームの面々に駆け寄って、リーダー格の女子生徒に手を差し伸べて──。
「ぐっどげーむ! 君たちも強かったよ」
「へあっ!? う、あ、汗が」
私の手を取ろうとして──途端にあたふたと手汗を気にする彼女の手を無理やり握って立たせて──
「全力で戦った後の汗なんて勲章さ。私は何も気にしないよ」
──と笑いかけると、彼女はしばらくぼーっとしてふらっと私に寄ってきて──後ろから別の女子生徒に羽交い締めされながら引き摺られていった。
☆☆☆
「おーけーサイン!! あれオッケーサインだからァァァ!! 互いの汗を交換するなんてそれもうセ◯クスだからァ! 離してぇ! 離してェ!! あたしは副会長とヤるんだよおぉおおお!!!」
「それお前の幻想! 幻想だから!! 副会長は誰にでもあんな感じでしょ!!!」
「あたしの性癖返してよおおおおおおおお!!!!」
「それはマジでそう!!!!!」
性癖ブレイカー系副会長。
その幻想をぶち壊す!! が1日に8回くらい起こってる。
罪な男やね。
面白いと思っていただいたそこのアナタ!
お気に入り、評価、感想よろしくナス!!
執筆のモチベはなんぼあってもいいですからね。