朗読の世界

★川上弘美「センセイの鞄」（全３５回）　朗読：神野三鈴 センセイと主人公、月子さんが出逢ったのは、二人が行きつけの居酒屋。ご近所の二人はここの常連客、物語は、ここでセンセイが月子さんに「卒業生ですね」と言葉をかけるところから始まる。以来、二人は酌をし合う“のでもなく”、示し合わすのでもなく、この居酒屋で吞み逢う回数を重ねて行く。そのうちに通い合うものが芽生え、一緒に帰るように“なったり”、市に出掛けるようになったり、ちょっと揉めたり、少しずつ・・月子さんはセンセイの家に寄るようになったり、少しずつ・・進展。センセイは、いつも愛用の鞄を提げ、どこに行くのにもこの鞄で行く。一緒に、月子さんとキノコ狩りや、お泊まり旅行にも行くようになったりするけど、月子さんの想いとは別にセンセイはいつもセンセイで、今ひとつ月子さんのところにはみえない。 でも、センセイにもセンセイの想いはあった。そして、そして、最後に月子さんの傍に鞄が残った。 ★朗読：神野　三鈴（かんの　みすず） 1966年2月25日生まれ、神奈川県出身。2012年「組曲虐殺」と「三谷版『桜の園』」で第47回紀伊國屋演劇賞個人賞、2020年「マクベス」と「組曲虐殺」で第27回読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。舞台を中心に活動する一方で、映像作品にも活躍の場を広げる。主な出演作にドラマ『アンチヒーロー』、『ブラックペアン シーズン２』、映画『37セカンズ』、『アングリースクワッド』など。2025年2月7日に『ファーストキス　1ST　KISS』が公開予定。 ★川上　弘美（かわかみ　ひろみ） 1958年東京生まれ。1980年お茶の水女子大学卒。在学中から執筆活動、４年間の教員生活を経て作家に。1994年「神様」で第１回パスカル短編文学新人賞、1996年「蛇を踏む」で芥川賞、1999年「神様」でドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞。2000年「溺レる」で伊藤整文学賞、女流文学賞、2001年谷崎潤一郎賞。2007年「真鶴」で芸術選奨文部科学大臣賞。2015年「水声」で読売文学賞などを受賞。そのほか「椰子・椰子」「おめでとう」「ニシノユキヒコの恋と冒険」「夜の公演」「ざらざら」「バスターマシンの幽霊」「機嫌のいい犬」「ぼくの死体をよろしくたのむ」「三度目の恋」など多数。