側壁は一面が白いタイルで覆われているが、現場付近の右側側壁は約15メートルにわたってタイルがはがれ、コンクリートが剥きだしになっていた。全焼車両があったためだろう、路面は今もはっきりと黒ずんでいるのが分かる。
《事故直後、皆見容疑者を含めた数人が避難連絡坑に気付き、上り線に脱出した。多重事故に巻き込まれた12台を含め、トンネル内には53台に76人が乗車しており、2人が死亡。消火を試みるドライバーもいたというが、皆見容疑者が参加することはなかった》
何事もなければ、1分足らずで抜けられるトンネル。外の光を見ながら、事故当時に聞いた運転手の言葉を思いだした。
「つぶれた車やひっくり返った車があり、車内に取り残されて血を流した女性もいた。呼びかけたが反応はなかった」
炎と黒煙に包まれ、パニック状態に陥った光景が思い浮かび、「もし自分も巻き込まれていたら」と改めて恐怖を覚えた。