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資金調達に挑む大学生が増加中 部活や課外活動の運営資金の一助に

2025年1月6日 12時10分 (1月6日 14時12分更新)
 共同研究などを通じて大学教員が外部資金を獲得するように、部活や課外活動などに集中して取り組むために自ら資金調達に挑む学生が増えつつある。学業の傍らに励むアルバイト収入では足らず、昨今の物価高騰も影響しているようだ。大学独自の助成金に応募したり、オンライン形式の調達イベントに参加したりと、学生たちは目標実現に向け模索する。(酒井博章)

製作する人力飛行機について説明する名古屋工業大の学生。材料費の高騰を受け、資金調達イベントに挑んだ=名古屋市昭和区の名古屋工業大で

名工大の人力飛行機研究会、オンライン形式の調達イベントに参加

 名古屋工業大(名古屋市昭和区)のキャンパスに、人力飛行機の製作に没頭する学生たちの姿があった。カーボン製のシートを丸めてパイプ状にし、飛行機の骨組みに。幅30メートルある主翼にはスチロール系の材料を使い、軽く、ある程度の耐久性も備えた人力飛行機に仕上げていく。来夏の大会に向け製作は順調そうに見えるが、内実は資金面の課題に直面していた。
 「材料費が数年前と比べて値上がりし、1機製作するために200万円かかっている」。人力飛行機研究会NIEWs(ニューズ)代表で、工学部2年の石塚甲峻(こうしゅん)さん(20)はそう打ち明ける。試験飛行などにかかる費用も合わせると、年間400万円近い出費になる。団体の預金は底をつき、メンバーからの部費で何とかやりくりしているのが現状だ。

物価高で資金難に直面、学業忙しくバイトも増やせず

 理系の同大では、学年が上がるにつれて授業で実習や実験が増えていく。学業で手いっぱいの中、課外活動のためにアルバイトの時間を増やすことはできなかった。そんな時に大学を通じ、オンライン形式で寄付を募る「ギビング・キャンペーン」の存在を知った。
 国内最大級の学生向け資金調達イベントで、今年は国内100大学から部活動やサークル、研究室など2千団体が参加。催しの特色は各団体の活動に対する応援機能だ。専用サイトでそれぞれの活動内容を公開、応援したい個人が投票する。投票自体に寄付は伴わないが、投票数に応じてスポンサー企業からの協賛金が分配される仕組みだ。
 名古屋工大からはニューズをはじめ4団体が参加した。石塚さんらは交流サイト(SNS)で積極的に発信し、4団体の中では最も多い投票数を獲得。2人分の年間部費相当額を得ることができたという。石塚さんは「キャンペーンのおかげで、資金面に余裕ができた」と喜ぶ。投票の際に応援メッセージを記してくれた人もおり、「寄付とともにメッセージが励みになり、メンバー全員が来年の大会には必ず出場しようと意気込んでいる」と語った。

調達イベント企画の会社「海外のような寄付文化が根付けば」

 この資金調達イベントは東京の新興企業「Alumnote(アルムノート)」が企画し、今回で5回目。発案者の中沢冬芽(とうが)代表取締役(26)は「物価高の影響も受け、やりたいことを存分に行うにも資金が足りないというケースは少なくない」と指摘。キャンペーンは海外大学の寄付イベントを参考にしたといい、「海外のように日本にも寄付を行う文化や、自分が受けた恩義を後輩に返す『ペイフォワード』の精神が根付いていくきっかけになれば」と期待した。

名城大は大学独自の助成金で後押し

 学生の”熱意”を後押しする大学も出てきた。名城大(名古屋市天白区)は2016年から、「Enjoy Learning プロジェクト」(通称・Eプロ)という助成金制度をつくり、毎年、選考した団体に最大30万円を支給している。

名城大のEプロに採択されたアイデア・テックのメンバー。大学からの助成金を活用しながら、学びを深めている=名古屋市天白区の名城大で

 10月上旬、同大天白キャンパスの一室で学生たちがパソコンを開き、作業に集中していた=写真。Eプロに採択された学生団体「Idea×Tech(アイデアテック)」のメンバーで、ウェブアプリやゲーム制作などを通じて、エンジニアとして必要な知識を学んでいる。情報工学部4年の清水透真(とうま)代表(21)は「Eプロの資金で専門書を購入でき、関東を中心に開かれるコンペなどへの参加もハードルが下がる」と感謝する。
 学生数約1万5千人の同大は中部地方で随一の規模で、部活動やクラブ数は130ほど。ただ、個人の趣味の多様化などで加入率は3割ほどにとどまる。その一方で学生たちは、就職活動で自己PRができるように、学生時代に力を入れたこと、いわゆる「ガクチカ」が必要だとの認識はあり、Eプロを担当する同大学務センターの樋口義博課長は「『何かやらないといけない』という思いは強い」と話す。
 本年度もアイデアテックのほか、地元のプロバスケットボールチームの認知度を高めようと活動する研究会や、医薬品の適正使用を啓発する団体など、さまざまな学生たちの活動を支援する。樋口さんは「資金面で活動を支えることで、学生たちの自主的な学びの取り組みを広げてもらえれば」と話した。

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