後援会への架空貸付を決定するまで
①令和4年12月中旬ごろ,大石は選挙コンサルタントに「選挙運動収支報告書に自己資金として計上した2000万円を返してもらう方法はないか」旨,相談した。
②同年12月中旬ごろ,選挙コンサルタントは長崎県選挙管理委員会係長だったAに事実を伝えて処理方法を相談したところ「現金を元々手元に持っていたということでしょうね」旨の回答があった。
③同年12月中旬ごろ,選挙コンサルタントはこの話を参考に犯行の枠組みを立案し「元々現金が手元にあったことにする他ないよね。それを後援会に貸付けて,後援会から返済を受ける」という言葉に変えて,その旨大石に対してメールで報告し,承諾を得た。
④令和4年12月中旬ごろ,選挙コンサルタントは大石宛てメールに「金銭消費貸借契約書・令和4年1月12日付」を添付して送付,大石は金銭消費貸借契約書が「偽造」だとの認識のもとに県庁事務局に預けてあった小さい印鑑2種類「大石」「大石賢吾」を使用して押印した。
①真実は,大石が後援会に貸付けした事実はないにもかかわらず,令和4年12月末,選挙コンサルタントは,本件架空金銭消費貸借契約書等を後援会職員Tにメールで送付して,管理するよう指示し,後援会に貸付けを行ったものと誤信させた。
②令和4年度分の収支報告書作成とりまとめ時期の令和5年3月22日,後援会事務所にいた当時事務局長代理だったO,顧問契約していた税理士西方会計事務所MとTが在室しているところ,選挙コンサルタントから事務所に電話があり,M税理士に「2000万円の貸付は架空です。架空の貸付を計上して返済することにしました」旨,説明したところ,M税理士は「そういうことにするのですね」と了承した。その会話を聞いたTは,大石が後援会に2000万円を現金で貸付したことは架空だったことを初めて知った。そして,選挙コンサルタントの指示のもと令和4年度収支報告に後援会が大石から現金で貸付を受けたことを計上した。
③令和5年3月25日,大石からT宛に「O弁護士と選挙コンサルタントに収支報告書を確認してもらってよければ選管に出してください」旨,電話で指示があった。同月27日に,当時の事務局長代理O,税理士Mの3人で最終打ち合わせをした上で,同日,選挙コンサルタント宛メールに架空貸付を計上した令和4年度収支報告書を送付して確認してもらい了承を得た。そして,当時後援会顧問弁護士だったO弁護士に「架空の貸付金」が計上されていることを秘して,体裁を確認してもらったところ了承された。同日,Tは,大石に「選挙コンサルタントさんとO先生に確認してもらいました」旨,電話で報告した。
実行行為
①令和5年3月30日午前10時10分,Tは大石に対して、架空の貸付金に対する返済金を振込む先を聞くために「口座情報をお知らせください」旨,LINEメッセージを送ったところ,同日午前10時35分,大石から「県庁支店(133)普通口座〇〇〇〇〇〇」記載した返事があった。
②令和5年3月30日,大石は,後援会を統括していた選挙コンサルタントと共謀の上,大石は後援会代表者である立場を悪用して,後援会会員が後援会活動費と政治活動費の支援趣旨で振り込んでくる会費,寄付金等を詐取することを企てて,業務上預かり保管中の十八親和銀行本店営業部 に開設された大石賢吾後援会代表大石賢吾名義の普通貯金口座の貯金を,自己の用途に費消する目的(返済原資を得ること)で,後援会職員Tに指示して,十八親和銀行新大工町支店を介し,上記口座から,大石が管理する長崎市尾上町3-1(県庁内)株式会社十八親和銀行県庁支店に開設している大石賢吾名義の普通預金口座に4,600, 000円を振込入金させ,もってこれを大石は詐取したものである。
③令和5年3月30日午後5時26分,大石はTに対して「振込入金を確認しました。ありがとうございました」旨,LINE電話してお礼を伝えてきた。
④令和5年3月31日,Tは,後援会に2000万円を現金で貸付した事実もないのにもかかわらず,選挙コンサルタントの指示のもと後援会の令和4年分の収支報告書に,上記架空貸付を記載し,大石承認の元、これを長崎県選挙管理委員会に報告した。
⑤さらに,令和6年3月27日,選挙コンサルタントからTに「知事と話し合った結果,架空の貸付金の支払いを10回払いに変更しました。今回からこれで支払ってください」旨,電話があり,その後,メールに金銭消費貸借契約書が添付したものが送られてきた。
⑥令和6年3月27日,Tは,選挙コンサルタントの指示のもと,改訂版として渡された金銭消費貸借契約書のとおり,業務上預かり保管中の十八親和銀行本店営業部に開設された大石賢吾後援会代表大石賢吾名義の普通貯金口座の貯金を,自己の用途に費消する目的(返済原資を得ること)で,後援会職員Tに指示して,インターネットバンキングを介し,上記口座から,大石が管理する長崎市尾上町3-1(県庁内)株式会社十八親和銀行県庁支店に開設している大石賢吾名義の普通預金口座の5001006に,1,952,000円を振込入金させ,もって,大石はこれを詐取したものである。
⑦令和6年3月27日,大石はTに対して「振込入金を確認しました。ありがとうございました」旨,電話してお礼を伝えてきた。
⑧令和6年4月1日,Tは,後援会に2000万円を現金で貸付した事実もないのにもかかわらず,選挙コンサルタントの指示のもと後援会の令和 5年分の収支報告書に,上記架空貸付と返済金を記載し,これを長崎県選挙管理委員会に報告した。
以上が、大石と選挙コンサルタントが共謀して2000万円の架空貸付をでっち上げ、その返済金として、後援会から460万円と1,952,000円を詐取した全容です。