あれはほんの出来心だった。
夫婦喧嘩の末に夫から家を追い出されて以降、私はこれまで以上に真剣に離婚を考えるようになった。
保護された警察でも、離婚を勧められた。
避難先で色々と本を読んで離婚について勉強し、離婚を切り出す前に夫の財産を把握した方が良いことを知った。
離婚するにせよ、しないにせよ、夫の財産は把握しておいた方がいい。
夫は新婚当初から何かあるとすぐ「離婚だ!」と怒鳴る人だった。なので、収入に関する書類は結婚生活中に少しずつスキャンやコピーを取っていた。
会社員の他に副業もやっている夫は、確定申告用に必要な書類をクリアポケットファイルに保管していた。
普段の大雑把な振る舞いや部屋の汚さからは想像できないほどキッチリ整理されており、私は驚いたのを覚えている。
そしてあの日、荷物を取りに夫の家へ向かった。事前連絡はしてある。
荷物をまとめた後、私はふと思い立って夫のPCの電源ボタンを押した。
どうせロックがかかっているだろうとダメ元で押した電源ボタンだったが、
何のパスコードも求められず、デスクトップ画面はすんなりと私を迎え入れた。
飲みかけの錠剤シートやペンなどが乱雑にとっ散らかったPC机とは対照的に、
デスクトップはいくつかのフォルダが画面の隅にあるだけだった。フォルダは確定申告や家の購入に関するものだけ。
それ以外は仕事で使っているであろうアプリのアイコンがいくつかあるだけ。
とりあえず確認申告や家の購入のフォルダを開けるが、既にコピーを取った書類ばかりだった。
そして何気なく、デスクトップ上のアプリを開いた。