2024年12月

2024年12月30日

3-truck の Climax

C-Climax (1) F氏にお渡ししたのは 2-truck の Climax だったが、F氏はBob Stevenson氏にコンタクトし、もう1輌分とさらに1台車の部品を購入した。それを猛烈な勢いで作り始めた。

C-Climax (2) F氏は Bob に直接電話を掛け、詳しい話を聞いたそうだ。当初の 2-truck の部品は間違っていたところがあったようで、正しい部品を手に入れた。しかし、設計のまずさは如何ともならず、結局のところF氏は駆動部分をすべて自作することになった。車輪は心が出ていないので、完全に作り替えた

 様々な部品を手作りしたり、筆者の在庫品から融通して、2年近い時間を掛けて完成したのだ。この機関車の煙突は細いものになった。2-truck の方の太い煙突には、中に小型のスピーカが入っている。 

 滑らかな走りである。当初は押して動くようにするつもりであったそうだが、ギヤ比がある程度高い構造なので、下手をすると壊れる可能性がある。無理に押すのは遠慮している。

 塗装をするべきなのだが、ブラスの鈍い艶が何とも言えない。日本製のブラスではないので、緑がかった光沢である。F氏の奮闘を称えて、しばらくこのままで飾っておきたい。


2024年12月28日

Climax の rollout 

 F氏に組立調整をお願いしてあった Climax が完成した。帰省の途中に博物館に寄って下さったのだ。試運転を見せてもらった。よく走る。
 その後で、3階に資材を運び上げるのを手伝って戴いた(後述)。
 
B-Climax (3) この機関車のキットは Lobaugh の製品だ。1960年頃に発売になったが、それが走るところを見た人が居ないと言われて来た。
 144輌作られたそうだが、誰一人として完成させられなかったようだ。要するに、根本的に無理な設計であって、動くわけがないのだ。これは Rollin Lobaugh 氏が既に老齢で、直接手を下した模型ではなかったというのが原因だ。彼は動きにはうるさい人だった。筆者は何輌か持っているが、当時としてはよく出来た走行装置を持っている。モータはコアレスに替えるが、他は手を入れなくてもなかなかよく走るのだ。なんと潤滑油を入れ替えると、押せばかろうじて動くものがある。当時から2条ウォームを採用したものがあったからだ。ウォームの前後にはボールベアリングが装荷され、スラストを受けていた。そのボールベアリングのグリースが粘いので、洗って入れ替える必要がある。

 O Scale West などの会場で完成品をたまに見たが、staticな模型(動かない模型)であった。飾りに置いておくものだと言う。それにしては高かったので誰も買わなかった。。

B-Climax (1) それから30年、筆者の長年の友人の Bob Stevenson氏が Lobough の在庫、金型一式を買い取ったと知った。彼は筆者に電話を掛けて来た。
「Hey Tad、お前の好きなLobaugh の Climax だぞ。買うだろ?」価格は約400ドルだった。当時の物価水準では高くはなかった。しかし当時、筆者は忙しく、組む時間がとれなかった。

 その後土屋氏が、「何かキットを組みたい。とびきり難しいのが欲しい。」とおっしゃるので、とりあえず譲り渡した。数年後土屋氏は亡くなり、未成品が残された。

B-Climax (2) それをF氏に見せたところ、「組み立てて走らせてみたい。」とおっしゃるのでお願いした。その後の奮闘は時々お知らせしているが、かなり困難なものだったようだ。動力伝達部分は100%作り直している。  

2024年12月26日

TMS 301号

TMS 301号 ゆうえん氏のコメントにあった50年以上前のTMS誌を開いてみた。1973年7月号である。そこには「国鉄蒸機のテクニック」と称する、なかおゆたか氏の記事があった。

 読んだ覚えはあるが、ほとんど記憶には残っていない。あらためて読んでみると、確かにゴム・ジョイントの話が出ている。図を見れば読まなくても分かる程度の話だ。他の部分も特に学びがあるという記事でもない。

TMS 301号 一つだけ気になるのは、スプリングジョイントの方が耐久性があると書いていることだ。それだけではなく、伝達効率も良い筈である。金属バネでは内部損失が少ないからだ。しかし、この図にもトルクアームが無い。作用反作用の理解がないわけだ。だからスプリングジョイントを採用すると、トルクアームが無ければギヤボックスが暴れてとんでもないことになる。
 また、ギヤボックスが左右に傾くのを防ぐために詰め物をするなどと書いている。また、左右に振れると音が出るという解釈も書いてある。

 何のためのギヤボックスなのか、よく考えて欲しいものだ。ギヤボックスは、歯車にトルクが掛かった時に軸距離が離れようとする(反発力)のを押さえ込む装置である。すなわち軸にはガタがあってはならないのだ。ギヤボックスが傾くということは、ガタがあって当然だということを言っているわけだ。

 なかお氏は工学から遠いところの方だったから、ある程度は仕方ないが、こういう文章を書くからには専門家の意見を聞いてみるべきであったように思うのは、無理な話であろうか。 

 それから50年以上も経つが、同じ記事を再録するというのも、これまた不思議な話だ。工学的知識のある人に読んでもらった上で、今ではこういう工夫もありますという記事が欲しかった。 

  50年以上前のTMSは、工学的知識のない人が「こうすると良いという記事」を書いていた場合が多い。井上豊氏がそれを見かねて連載記事を書いたが、焼け石に水であった。合葉氏が「正しい鉄道模型」という言葉を出されたが、それを言わねばならないほどひどい状態だったのだ。今でもあまり違わないのかもしれない。

2024年12月24日

続々 Deagostini の C62

 さらにA氏から近況を知らせるメイルが届いた。


C62 tender (2) テンダに慣性増大装置を搭載中である。ギヤを節約する目的があったのかは分からないが、2軸をチェインで結んでいる。この方法を採れば、キングピンのところに ユニヴァ―サル・ジョイントを一組ずつ置けるので、どんな場合でも角速度が等しくなり有利である。慣性増大装置へのエネルギィの出し入れには大きなトルクが掛かっていて、相手の慣性モーメントが大きいわけだから、角速度が一定でないとかなりギクシャクしてしまう。これを避ける賢明な方法である。
 
C62 tender (1) フライ・ホィールはチェインで駆動する。ギヤ・タワーを使い、半ピッチの位相差を持たせた二重のチェイン駆動である。これだけ重いと1本では持たない。
 この方法はA氏はいくつか試されたそうだが、確かに音が静かになるそうだ。デルリンのチェインは多少伸びるので、この方法が有意義である。伸びない金属製チェインではこういうことが出来ないのは当然である。

 車軸に付けたギヤで増速するので、そのままフライ・ホィールを駆動している。これは筆者の機関車と同様である。  

2024年12月22日

続 Deagostini の C62

45mmC62 (3) 駆動ギヤは Oゲージのディーゼル機関車用である。この大きな動輪にはさすがにギヤ比が足らないので、初段の減速にはデルリン・チェインを用いている。2本のチェインは半ピッチずらしてあり、静音化に貢献している。
 きわめて効率良く動力が伝達され、単3電池1本でするすると動く

 短い線路上であるが、試運転している様子の動画があるのでご覧戴きたい。 

 さすがに素晴らしい腕前で、文句のつけようがない改装である。伊藤剛氏もさぞかし喜んでいらっしゃる筈だ。

2024年12月20日

Deagostini の C62

 伊藤 剛氏から引き継いだ未組みのC62をどうするか、しばらく悩んでいた。筆者は 45 mmゲージにまで手を広げる余裕がなく、誰か腕のある方にお願いすべきだと候補者を探していた。

 そんな時にA氏と知り合った。彼は機械工学を修めた技術者であり、ご自宅の庭には 45 mmゲージのレイアウトがある。腕はピカ一であるから、この方にお願いするしかないと思った。彼がどのように料理されるかが楽しみであった。
 そしてA 氏は45 mmゲージの慣性増大装置を完成されたので、その運転状況を見せてもらった。素晴らしい性能で驚いた。小さな旋盤で大きなものを正確に挽く技量は素晴らしいもので、驚いた。のちに中型旋盤をお世話したので、より応用範囲が広がった。

 先日連絡があり、「C62を可動化したのでご覧ください。」と動画を送って下さった。
45mmC62 (1)45mmC62 (2) 動輪をどのように作られたのかに興味があった。実はタイヤを快削鋼から削り出すつもりで、旋盤屋と話をしていたところなのだ。そのタイヤをすでに自作してしまったそうで驚いた。

45mmC62 (3) タイヤとフランジに分けてローラを通して曲げ、それを互い違いに嵌めてハンダ付けしている。それを旋盤に掛けて削り出すわけだ。なかなかできない発想で驚いた。

 歯車は筆者提供の Oゲージ用の高効率ギヤをさらに減速している。きわめてよく走る。  

2024年12月18日

ゴムチューブの実力が判明

 このブログでは、ゴムチューブをギヤボックスとモータ軸の接続に使うのは良くない、と書き続けて来た。さりとて、その客観的なデータがあるのかと言われると、なかなか難しい問題だった。

慣性増大装置  遊星ギヤで実現 高効率ギヤと慣性増大装置を 45 mmゲージで実装されている A 氏が、客観的なデータを採って写真を提供して下さったので紹介したい。



慣性増大装置  継手の違いの変化 (1) これはモータ単体を 6 Vで無負荷回転させた時の電流を示している。モータ自体はそれほど高効率のものではなさそうだ。0.20 W ほど消費している。



慣性増大装置  継手の違いの変化 (2)② 慣性増大装置(フライホィール)を遊星ギヤを使って4.4倍に増速している場面だが、金属製のユニヴァーサル・ジョイントを用いているときの電流値は0.18 Aである。その時の電力は 1.1 Wである。この時、アラインメントには留意し、直線上に配置しているから、継手の中の損失は事実上ないと考えられる。

慣性増大装置  継手の違いの変化 (3)③ その慣性増大装置 + 遊星ギヤをシリコーンゴム・チューブを介して回転させているときの電流は 0.28 A で、電力は 1.7 W弱である。この時もアラインメントには留意して、直線上にあるようにしている。


 ②-①は遊星ギヤ内部での損失とフライホィールの軸受での摩擦損失、空気抵抗損失の和である。継手での損失はほぼ無視できる。
 ③-②は、シリコーンゴム・チューブに起因する損失であると考えるのが妥当だ。いったい何が起こっているのかはよく分からないが、この損失は無視できない大きさである。

 負荷によりチューブがねじれて長さが多少縮み、それによって軸受けにスラストがかかって損失が増える可能性もある。しかしこんなに短いのであれば、その量は無視しうる程度なのかもしれない。

 もしくは、アラインメントを合わせてあるとは言え、「極微量のずれ、角度ずれが存在すればその損失が現れる」ということなのかもしれない。だとするとそれは非常に感度が高い(少しでも狂っていれば大きな損失を生じる)ファクタだということなのだ。

 また、蒸気機関車の前進時、ギヤボックスはモータ側に傾くであろう。その態勢ではチューブに剪断力が掛かる。後退時はどうなるのだろう。
 もし、負荷が増大すれば、損失はさらに増大するであろうし、トルクアームがなければ、ますます大きくなるであろう。しかし、上記のような感度が高いファクタであると、トルクアームも役には立たないことになる。

 いずれにせよ、このような理想的にアラインメントが出ている状況でさえもこれだけの差があるのである。だから蒸気機関車の模型に付けた時は悲惨な結果になるのであろう。

 この実験を参考に、読者の方々から実測値をお知らせ戴くと嬉しい。その際には必ず実験方法が分かる写真を付けて戴きたい。

2024年12月16日

モリブデン・グリース

 モリブデン・グリースの話題を出したところ、友人から問い合わせがあった。「このURLに書いてあることは正しいのか?」と。

 これはひどい。彼はGoogleで調べると最初に出て来るという。とんでもない記事だ。
 こういうことを書く人は、まったく勉強したことが無い人なのだろう。正しい部分が無い。この3行はここまで外して書くのも大変だと思うくらいひどい。

「二硫化モリブデンの粒子は硬いので真鍮などの軸受を擦り減らしてしまう。」とあったのには吹き出してしまう。とんでもない勘違いだ。
 二硫化モリブデンの結晶構造は板が重なった状態で、その板の隙間が滑りやすい。非常に大きな圧力を掛けて滑らせても、その板は壊れることがない。たとえ壊れても次の板が巻き込まれて潤滑する。これを極圧潤滑材という。油膜が切れてしまうほどの圧力が掛かるところでも、問題なく潤滑できる。
 これは結晶だから効き目があるわけで、液体では意味がない。

 エンジンオイルに混ぜても粒子が大きいので、すべてフィルタに引っ掛かるから無駄である。よくこの種の粒子の入った油が時々売り出されるが、皆同じ結果になるから、無駄な抵抗である。

 模型では極圧剤が効果を発するのはクランクピン、ウォーム歯車である。グリースが固いようなら、ミシン油等を少し垂らして解き、柔らかくして塗ると良い。

 高効率ギヤには軟らかめのを薄く塗る。全部の歯に塗る必要はない。ごく適当にウォームホィールの数箇所に塗って数分走らせると、全部の歯に均等に塗ることが出来る。互いに素のおかげである。


2024年12月14日

UP Heavy Pacific

UP heavy pacific (2) しばらく前、UPのヘヴィ・パシフィックを塗ったが、完全には仕上げていなかったことを思い出した。ガラス棚から取り出し、点検すると窓枠の塗装がしてない。細い筆で色を入れた。いわゆるビリジアンである。

UP heavy pacific (1) たちまち、生きている機関車の感じがするようになる。この機関車は35年ほど前、韓国のAjin の社長の Cho Numdal 氏から貰ったものだ。彼は筆者の機関車を見て、その落差に驚き、技術指導を受けたいと申し出た。彼らの稚拙な製品を、筆者が完全にリビルドして送り返した。半年ほどの向こうでの検証後帰って来て、そのまま30年ほど寝ていた。

UP engines 大動輪がむき出しで、いかにも高速旅客用という感じがする。しかし出力、航続距離共に小さく、3、4輌程度の客車を牽いて支線を走っていた。そういう列車も作りたいものだ。

 この機関車のボイラの残骸だけを、別に1輌分持っている。アメリカの友人がこの下廻りを何かのボイラと組み合わせてパシフィックを作った。その残りを安く引き取った。このテーパ・ボイラをばらしてある。エッチングなので板が薄くて柔らかいのには参る。持つだけでボイラが凹みそうだ。大半の部分を捨てて作り替える。キャブは使えそうだが、板が鈍してあってくたくたである。裏打ちをして堅くせねばならない。

UP 2-8-2 筆者は別ルートで Lobaugh の Mikado の下廻りを手に入れたので、それと組み合わせてUPの Mikado を作り始めた。作り易い、ずん胴のボイラをプロトタイプに選んだ。 この写真のような機関車を作るつもりだ。今煙室を作っている。煙突は作らざるを得ない。エア・コンプレッサは複式を2台付け、エア・タンクも大きくする。
 実物は、Big Boyの牽く貨物列車に補機として使われることがあった。脚が短いので、下り坂では過回転で恐ろしいほどの振動が起こり、生きた心地がしなかったとTom Harvey が言っていた。63インチ(1600 mm)動輪なのに、75 mile/h(120 km/h)で下り降りるのだから当然だろう。Big Boyは69インチ(1750 mm)だから余裕がある。Big Boyは85 mile/h(136 km/h)までは平気で出せたそうである。

2024年12月12日

等角逆捻り機構の評価

 中学・高校時代の友人が訪ねて来た。久しぶりだ。彼は御子息に見せたいと連れて来たのだ。息子さんは子供の頃から「草・花・虫派」でプラモデルや電気工作にはあまり興味を示さなかったそうだが、博物館のレイアウトでの摩擦が少なく慣性のある走行には目を見張った。
 友人からは、「理科や数学の勉強を実地に生かす実例を教えてもらった。」と感謝された。帰宅してからも、息子さんから何回も「凄かった。」と話が出たそうだ。


等角逆捻り「ほらこんな工夫があるんだ。」と何台かの貨車を見せた。その時に前回の塗装事故が判明したのだ(写真は塗替済だが、艶消しをしていない)。 

 友人(父親の方)は目を輝かして見て、評価した。
「これは面白い。三点支持の欠点を一掃している。格段の進歩だ。」と言った。60年前、彼は筆者の作った三点支持の模型に対し「こんなの面白くない。静止していればよいけど、走る方向によって挙動が違うなんて…」と言っていたことを思い出す。

「これは中点連結定理で証明した人が居て、急速に進化したんだ。初めは理屈が分からなかったから、怪しい解釈をしていたけど、その後は完全に解明されて、その応用発展例がいくつかある。ほらね…」と筆者の作った物をいくつか見せた。

 彼の天才的な頭脳は、中点連結定理という単語を言いかけただけで直ちに反応し、一瞬にしてすべてを理解したのには驚いた。彼は数学者になるつもりだったが、家業を継ぐ運命を背負っていた。結局は廃業し、生理学の研究者になった。彼の生家は大正年間に建てられた重厚な病院建築で、映画のロケ地に選ばれたこともある。きわめて多忙な研究生活で、模型をやる暇がなかったが、ほとんどすべてのことを理解しているのは恐れ入る。30年以上前だが、アメリカで筆者の居住地から比較的近いサン・ディエゴに住んでいたので、家族で訪ねて行ったのが最後だ。その後彼は帰国したが、たまに電話で話をする程度だった。
TMSの968号を立ち読みしてくれ。」と連絡すると、あちこちに連絡してくれて、来訪者が急増した。


 複数の基本的な動作模型を見せ、その応用系の模型も手で触れてもらった。「これは凄い。」と息子さんといじくり回した。 

 等角逆捻りという言葉を持ち出すと「なるほどね」と納得し、制御された2点支持という概念に、たちまち到達したのはさすがだ。

 ロンビックが世に出た頃に彼に見せていれば、彼が一瞬で解決してくれたのかもしれないと思うと、感慨深いものがある。 

 その後で、歯車の「互いに素」の話を出すと、二人とも敏感に反応した。英語では "mutually indivisible" と言うのだよと言うと、息子さんは英語には不自由しないので、「ズバリの表現です。」と言う。
 あとでその記事が載っているModel Railroaderを見せると、読んで「その言葉が使ってありますね。」と言った。
 この息子さんが汽車の模型の方に進んでくれたら、さまざまな問題を提起し、解決に向けて努力してくれそうな気がしたが、彼も忙しい人生を送るのだろう。 
 彼らと話すと、天才という言葉が頭にちらつく。人類に貢献してくれるはずだ。

2024年12月10日

cracks on painted surface

Crack この貨車は例の「魔法使いの弟子」の等角逆捻りのボディ・シェルである。 しばらく手を触れていなかったが、来客があり列車から外して手に取ったところ、とんでもない状態になっていた。塗装した表面に無数のひびが入って、修復は絶望的だ。塗膜の張力で、下塗り層の中で固体が流れたのだ。
 
 原因を考えた。塗料は Floquil であり、Glazeも入れてある。下塗りはミッチャクロンだ。おそらく下塗りが厚過ぎたのではないかと思う。1 L缶の中の残りが少し粘くなったのを薄めて塗ったような記憶がある。その時、残りを使ってしまえと、厚く塗った気がするのだ。たぶんそれが失敗の元だ。

 乾燥後、塗料膜が縮んだのだろう。下塗りが薄ければ、張力が発生しても引き摺られることが無かったのかもしれない。クラックは一面に広がっているが、ディカール部分は割れていない。ごく薄い膜ではあるが、ある程度の張力に耐えたことになる。

 実は先日お見せした coach にも派手なクラック(0.7 mm幅)があった。3本だけだったので、パテを込めて研磨し、薄く上塗りをしたら見えなくなった。そのパテは光で固まるもので実に便利だった。0.5 mmの細さで押し出せる。それをゴムベラでクラックに押し込み、僅かにはみ出たものは1200番のサンドペーパで水研ぎした。実に簡単に修復できたが、今回は 0.2 mm ~ 0.3 mm程度のクラックで、完全に押し込める自信が無かった。どうせ上塗りをせねばならないので、思い切って剥がすことにしたのだ。ブレーキ・フルードに放り込んでしまった。2日も経てば剥がれるであろう。

removing paint ブレーキ・フルードに半日漬けたらここまで浮き上がった。触るとずるりと剥けた。このブレーキ・フルードはもう10年も使っている。乗っている車がPHVなのでブレーキ・パッドがほとんど減らず、すでに32万キロ以上を無交換で走った。すなわちブレーキ・フルードも交換していない。回生ブレーキの威力は絶大である。
 以前はドイツ車に乗っていたので、ふんだんに使用済ブレーキ・フルードが供給されていた。その当時のものだが、密閉保存してあればこのように使えるわけだ。
  
repainted 同じディカールはもうないものと思っていたが、もう一組発見されたので、以前と全く同一のものが再生された。


2024年12月08日

似て非なるもの 出現

 最近、高効率ギヤを採用した方から様々な感想を戴いている。
「大きな負荷を掛けての起動が楽しいですね。」と、よくお聞きする。
ヒステリシスが小さいということが、こんなに素晴らしいとは思いませんでした。」とおっしゃる方があった。確かに、今までの歯車では電圧を上げて無理やり起動していたわけだから、その起動する瞬間のトルクが過大で、発車の瞬間にスリップしてしまった。そうすると摩擦係数が下がるので牽き出せないという理屈だ。これは実物で起こることと同じだ。実物ではそこで砂を撒いて摩擦係数を上げている。

 筆者のすべての機関車には、この駆動装置が装備されている。それを見て、そのギヤだけを欲しがる人が出て来るが、全く理屈を理解しようとしないが多い。怪しいモータにウォームを叩き込んで、ギヤボックス無しで使う人が居る。そういう方には売らないことにしている。
 先日寸法がそっくりのまがい物を見かけたので調べた所、名古屋でOJをヤフオクに出していた人だった。その人が中国あたりで作った物らしい。それを本家より高く売ろうとしていた。彼は中国貿易をしている人なので、著作権などには鈍感な人らしい。自分の作品のみに使うようにしてもらった。
 材質が異なり、歯形が怪しい。潤滑もされていず、開放状態であった。全くお話にならない。こういう人が居ると、本物の評判が下がる

 やんわりと抗議して売るのはやめてもらったが、今後どうなるかは分からない。物事を理解していない人ほど、扱いに困るものはない。そのまがい物と本物を並べてみれば、なるほどと気が付くだろうが、初めて見る人には分からない。それでこちらも巻き添えを喰って評価を落とされてはかなわないのだ。もし見かけたら連絡戴きたい。

オリジナルを凌ぐコピィ無し」ということが分からないのであろう。オリジナルの歯形は普通の歯形ではないのだが、専門家でないと分からないだろう。歯数も大切だ。

 先日来訪した高校の同級生とその御子息は「互いに素」と聞いて、一瞬ですべてを理解した。K国製で4:40があったという話をすると呆れ返った。彼は高校時代は模型工作に熱心だったが、その後やめてしまい全く模型に縁のない生活をしているが、頭の中では完全に理解している。

「でもさ、模型でそこまで考えてあるのは今までにあったのかい?」と聞く。
「メルクリンはそうだよ。他にもヨーロッパにはいくつかあった。日本ではまずないね。2条で相手が偶数のものがあったし、3条ウォームでも割り切れるものを出した店があったんだ。」と言うと、
「歯車の歴史を考えたこともないのだな。オランダの風車の歯車でさえも互いに素にしてある。そうしないと持たなかったんだよな。車のギヤ比も全てそうだ。そうしないと音がすごいんだろうね。」という。彼は工学は趣味程度だが、いくつかの事例を出して細かく解説した。こういう能力がある人は珍しいが、模型を設計する人は少しは考えるべきだ。

 高効率ギヤの現物を、実際に手に取って見るように勧めた。その仕上がり面の美しさには感動した。組立品を動かすと抵抗が感じられない。
「高そうだな。」
しかし価格を言うと、
「その性能がこの価格なら安いな。よく売れているんだろうね?」と聞く。
「そうでもないんだ。日本では無理かな。レイアウトの無い国だからね。」と言うと、
「そうかもしれない。」と妙に納得してしまった。 

2024年12月06日

低速で走らせるための条件

 先回の一式陸攻氏のコメントには驚いた。筆者が考えていたことがすべて書いてあった。筆者が実践したことを順次書いてくれている。

 ゆっくり走ることに執着を見せる人は案外いると思うのですが、相変わらずトルクアームもなければ継手はゴムチューブでギアも市販品の良いとはいえないものを使い、ギア比を大きくしたりモーターの回転数の低いものを使うなど小手先の怪しい工夫に終始している人が大半のように思います。

 また、確かに低速はそれなりに効くけれど高速になるとやかましいというパターンも多いように思います。


①ギヤボックスを支えないで走らせるということが、いかに無謀なことなのかを理解していない人が多過ぎる。しばらく前にHO用の高効率ギヤを頒布した時に六角ジョイントも同時に頒布した。
「バックさせた時にギヤボックスが前に抜けて驚いた。」と書いて来た人が居た。トルクアームの必要性をそれまで感じていなかった訳である。ギヤボックスを浮動させ、トルクだけを取り出すという考えが無かったわけだ。

ゴムチューブという前世紀の遺物をいまだに使っている人が多い。どんな理論武装をしても良いわけがない。しかしやめようとしない人が多い。どの程度駄目なのかという客観的なデータが欲しい。

③「高効率ギヤを一度でも使えば、もう他の方法は使えなくなる。」というコメントを沢山戴いている。薄型もできたので、試されるとよい。

④ギヤ比を大きくして低速を利かせようというのは、昔からある発想だ。まともなギヤは少ないので、決して良い方法ではない。高速になるとひどい騒音を発する。高効率ギヤとコアレス・モータを使えば直ちに解決する。高効率ギヤについて、いまだにギヤ比が低いうんぬんを言う人が居るらしいが、いくらでも低速が利くことを体験していないからだろう。

 一読者氏のコメントにも驚いた。筆者の頭の中を覗かれたような気がしたほどだ。蒸気機関車を作る人は、どうすべきかを考えて欲しい。機関車は無音で走行すべしという前提は、必要なことだと思う。


2024年12月04日

日本の模型人

 模型の動きについて再度書きたい。
 筆者はきわめて初期の段階から、スケールスピードを大切にしている。本物が動く様子を再現したいからだ。本物はきわめてゆっくり動くことが出来る。連結時は特にゆっくりだ。速いと衝撃で壊れてしまう。

 先回にも述べた通り、筆者の機関車はきわめてゆっくり動かすことが可能だ。機関車単独でもかなりの低速が可能だが、慣性増大装置付きテンダを付けていると、さらに安定した低速が可能になる。

 これを実演して5 mの線路の端から端までをゆっくり往復させる。しかし、「凄いなー」と見てくれる人は1割程度だ。殆どの人は通り過ぎてしまう。展示で並んでいるD型機関車群ばかり見ている。性能に興味がないようだ。先回も述べたように無音で走ることにも注意が向かない人が多い。
 これが日本の模型人の姿なのだ。外観に興味があり、走りは興味の範囲外のように見える。しかし、工作材料には興味がある人は多い。持って行った快削ブラスの角棒は人気があった。

 逆に、先日博物館に来てくれたアメリカ人は、走りに興味があった。「凄い、凄い!」の連発であった。列車の貨車の数を数えて感心し、勾配の途中で電源を切ると滑り落ちる様子には驚嘆した。殆どの車輌が重いブラス製であることは信じがたいと言う。すべての車輌  の車輪が Low-D であることの効果を噛みしめていた。 

 今年もブラスの材料(厚板、平角棒その他)を持って行った。数キログラムも売れて驚いた。この頃はこういう種類の材料が手に入れにくいのだそうだ。
 筆者はいろいろなルートでその種の材料を手に入れている。それを小分けしてこういう場所に持ってくると、喜んでくれる人がいるのは嬉しい。
 
 リクエストがあった。モリブデングリースが欲しいのだそうだ。最近は田宮などで扱っていないという。適当な容器を探して詰めて来よう。大きな容器に一杯ある。昔アメリカの友人が、ジェットエンジンの整備用のをくれたものだ。とても死ぬまでに使い切れない量だ。 

2024年12月02日

慣性増大装置の tuning

P1190581m この機関車を再度持って行って走らせた。昨年は、前日に完成したばかりで微調整が済んでいなかった。だから、走りが満足の行かない状態だった。(この写真は大之島鉄道氏のサイトからお借りしている。)

 要するに機関車の牽引力とテンダの慣性とのバランスが悪かったのだ。機関車の牽引力が不足して動きにくかった。テンダは最大限に作ってあってそれを減らす必要はなく、機関車の牽引力を増す必要があった。

 モータの出力、伝達効率から計算すると、動輪の軸重を900 gw 増しても良いことになる。とりあえず 720 gの錘を鋳造して取り付けた。材料は活字金である。非常に正確に鋳物ができるので、ボイラ内にきっちり嵌まるように作れた。重心位置も計算通りだ。この後少しずつ補重していく。

 結果は非常に具合が良く、1 Vで起動し、50 mAで走行する。しかもこれが無音で走るのである。
 5 Vで構内を走る程度の速度になるから、3 Vにして逆転を掛けると動輪がロックして滑って行く。これは実物では絶対にやってはいけないことになっている。動輪踏面にフラットができるからだ。
  1 Vを掛けて放置すると、超低速で少しずつ動く。動輪一回転に10秒ほど掛かる。
「『低速コンテスト優勝できる』とありましたが、本当ですね。」とおっしゃった方がいる。お褒め戴くと嬉しいが、その後ろでこんな声も聞こえて来た。
「Oゲージだからできるんだよ。」
それを聞いてある方が、
「失礼なことを言ってはいかんよ。世界中のどこにこんな動きができる模型があるんだ。Oゲージだからできるんじゃないよ。dda40xさんだからできたんだ。」と言ってくれたので、助かった。
 今野氏はお気に召したようで、低速走行をじっくり見ていらした。

 一般によく見る模型の走行は、決して褒められた状態ではない。それを解決する一つの方法が高効率ギヤの採用である。今野氏はそれを見極められたようであり、嬉しく思う。
 非効率な伝動装置では、ヒステリシスが大きく、ガッと動いて、ガクリと止まる。中間速度での滑らかな動き、負荷が掛かった時の速度の落ち方、負荷がなくなった時の加速というものを感じることが出来ないのだ。だから、いわゆるオモチャ的な運転しかできない。

 今回の披露で、「サウンドが付いていると良かったのに」という御意見を戴いたが、実はわざとサウンドなしでお見せしている。無音で走るというところを強調したかったのだ。無音走行ができる機関車は、まれな存在であることを知らせたかったからだ。

 KKCの集会では、最後の会員の個別のスピーチで、高効率ギヤを採用して好結果を得ている旨、何人かから発言があったのは嬉しい。

 HO用は貫名氏が販売して下さっているので、希望される方は連絡されたい。

Recent Comments
Archives
<<   2024年12月   >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
categories