(取材メモ)「告発文」3月12日と4月4日は異なる文書か 元局長が説明残す

【神戸経済ニュース】死亡した元西播磨県民局長が斎藤元彦前知事への「告発文」を作成した問題(文書問題)で、元局長が3月12日に配布した文書(「告発文」)と、4月4日に兵庫県の窓口へ公益通報した文書が同じものかが一部で関心を集めている。1日に開催し、兵庫知事選7人が集まったネットメディア「リハック」の討論会で、ある候補があらためて説明していた。4月4日に兵庫県の公益通報された文書を表に出てきておらず、通報者は守られている。一方で、一般に「告発文」とされているのは、3月12日に元局長が一部の県議や放送局、新聞社など10カ所に送付した文書だ。

 これまで「告発文」への対応について前知事に「初動の悪さ」を指摘する側は、4月4日に公益通報したのだから、同じ内容である3月12日の文書の告発者である元局長は公益通報者として保護されるべきと主張。3月12日の文書を作成・配布したことに対する元局長への懲戒処分(停職3月)は不当であるほか、懲戒処分や前知事の追及がなければ元局長は死亡(自殺とみられている)せずに済んだのではないか、などと批判している。従って3月12日と4月4日が異なる文書であれば、そもそも「初動の悪さ」を指摘する側の主張が空振りになる。はたして同じ文書なのか、異なるのか。

 結論からいうと「分からない」のが実情だ。4月4日に窓口に通報された文書は、これまで一切、表に出てこなかったからだ。ただ、元局長は生前、4月4日に県の窓口に通報した文書は、3月12日に作した文書と一部が異なる内容であることを説明していた。元局長が4月4日に報道機関向けに配布したペーパーがある。「本日、1①を除き、その事実の解明と是正措置の検討を公益通報しました」。4月4日以降、現在まで兵庫県庁・新聞記者室(記者クラブを構成する報道機関に与えられた詰所、いわゆる記者クラブ)のホワイトボードに貼り出されたままの状態になっている。

 3月12日の「告発文」に「1−1」「1−2」といった入れ子構造の章立てはなく、①〜⑦の番号で示されたことから「1①」が正確にどれを指すかは不明だが、同文書には①として掲げられた、片山安孝前副知事が、ひょうご震災記念21世紀研究機構の人事を報告した翌日に、同機構の理事長で著名な政治学者である五百旗頭真氏が病死したという内容が該当するとみられる。これは早いうちから片山氏の訪問と五百旗頭氏の病死の日付に齟齬(そご)が指摘されていたほか、「斎藤知事、その命を受けた片山副知事が何の配慮もなく行った五百旗頭先生への仕打ちが日本学術界の至宝である先生の命を縮めたことは明白です」との記述に論理の飛躍も指摘された。このため4月4日の文書では削除したと考えられる。

 加えて、元局長は「事実の解明と是正措置の検討を公益通報」したというから、3月12日の「告発文」にあったようような「ハッキリ言って」「ゲットしている」といった面白おかしい表現を排除したうえで当局に対応を要請する形式になるよう、全面的に文書を改めた可能性も残る。リハックが1日に開催した討論会で「これ違う文書なんですか?」と隣に座った候補に確認する候補も現れて、改めて注目された”2つの文書”だが、元局長が県窓口へと公益通報した文書は、いわゆる「告発文」と異なる文書である可能性が高い、とはいえそうだ。

 元局長が4月4日に窓口へ公益通報したことで、3月12日の「告発文」の作成者として保護されるのか。加えて、4月4日の文書について兵庫県議会の調査特別委員会(百条委員会)や、兵庫県の第三者委員会はどのように位置付けるかは、関心を集めそうだ。不満のある従業員が会社をおとしめる虚偽を外部に吹聴した後、事後的に会社の通報窓口へ駆け込めば保護される事態につながるのか、といった観点で経済界からの関心も実際に集めつつある。
(神戸経済ニュース編集長 山本学)

▽関連記事

20240708こころの電話

関連記事

広告

広告

広告

カレンダー

12 | 2025/01 | 02
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

広告

広告