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司馬遼太郎生誕100年/上 「草原の記」にみる「遺言」=北山章之助(元NHKプロデューサー)

小説『殉死』で毎日芸術賞を受けた司馬遼太郎。晩年は小説執筆をやめ、日本の行く末を案じるエッセーなどを執筆した=大阪市で1967年12月、片山英一郎撮影

 昔、仕事の打ち合わせで司馬邸を訪ねた時、雑談の場でみどり夫人(2014年死去)が言った。

 「司馬さんも最近小難しい小説ばかり書いているようだけど、本当は歴史ものでも、奇想天外な娯楽小説を書かせたら天下一品、とんでもなく面白いのよ」

 司馬作品の最初の読者を自任したみどり夫人だけに、司馬文学の本質を見抜いていたのだろう。

 司馬遼太郎の残した重厚な歴史小説は、没後27年たった今も広く読み継がれているが、多くの読者が司馬の描く歴史上の人物や事件を、歴史的事実として受け入れているのではないだろうか。つまりフィクションの形をとったノンフィクションとして読まれるケースが多いように思われる。だが、初期の作品は全く違った。

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