NHK防災 メニューへ移動 メインコンテンツへ移動

災害時、ヘリコプターの救助を求めるには?3つのポイント

2024年6月21日

災害が起きて道路が寸断され孤立したとき、救助の切り札となるのが“ヘリコプター”。どうしたら来てくれるのか、どこに来てくれるのか。災害時のために知っておきたい、ヘリコプター救助の基礎知識をまとめました。

▼関連記事はこちら
災害時の集落孤立 そのときどうする?

災害のときに活動するヘリコプターは、消防、地方自治体、警察、海上保安庁、自衛隊、国土交通省などさまざまな組織に所属しています。

災害時 活動するヘリ 消防、地方自治体、警察、海上保安庁、自衛隊、国土交通省など

このうち消防防災ヘリは、大規模な災害が発生したとき、消防庁の指示を受け出動。被災地では都道府県の指揮で活動します。

消防防災ヘリ


能登半島地震で活動 “ヘリ救助” 緊迫の現場

能登半島地震で救助に当たった、埼玉県防災航空隊。山岳救助や急病人の搬送など、年間80回以上出動しています。

埼玉県防災航空隊

隊員の須釜一樹さんは、仲間の7人とともに、2日間、能登半島で活動しました。
「時間的な制約がかかる中での活動となりました。助けたい気持ちしかなかったですね」(埼玉県防災航空隊隊員・須釜さん)

須釜一樹さん

須釜さんたちがつけていたカメラの映像から救助の状況をたどります。

1月4日。須釜さんたちは、輪島市の孤立集落に出動。けが人2人を救助するのが任務でした。
ところが、現地に着いてみると、ヘリが着陸できる場所がありません

着陸場所なし

そこで、ホバリング(停止飛行)をすることに。ワイヤーを巻き上げるホイストという装置を使い、隊員が降りて救助します。
ホバリングは、前進するよりも燃料を多く消費するため、時間の制約があります。
一方で、冬の海沿いは風が強く、慎重に作業にあたらなければなりませんでした。

ホイストを使う隊員

さらに、地上に降りてから待ち受けていた困難も。それは「情報不足」です。
大規模な災害時には、救助を求める人の居場所や状態が詳しく伝えられないこともしばしばあるといいます。

今回も須釜さんたちは、限られた時間でけが人を探さねばなりませんでした。

地上に降りて、走って傷病者を探す隊員
地上に降りて、走って傷病者を探す隊員

出会った住民から聞いて、ようやく車の中にいた高齢の女性を見つけました。足を痛め、歩くことができません。

車の中にいた女性

安全につり上げることができる場所まで車を誘導し、隊員と一緒につり上げ、女性を金沢まで送り届けました。

隊員と一緒につり上げられる女性

須釜さんたちは2つの地区から7人を救助。被災地の混乱する中での任務でした。

任務にあたる隊員たち

「情報が少ないことには、隊員も怖さを感じました。情報はいちばんの武器になりますので、あればあるほどよかったと思います」(須釜さん)


災害時、ヘリコプターの救助を求めるには?

災害救助に重要なヘリコプター。救助を求めるために知っておきたい3つのポイントをまとめました。

どうしたら来てくれる? どこに来てくれる? 気づいてもらうには?


どうしたら来てくれる?
救助の連絡先は、消防の119番です。
119番に電話をして被害状況を伝えることで、都道府県の航空運用調整班が、ヘリコプターが必要かを判断して出動する流れになっています。

どこに来てくれる?
ヘリコプターが着陸するには、学校のグラウンドや公園、大きな駐車場など、広いスペースが必要です。
消防防災ヘリの場合、最低でもおよそ40メートル四方ぐらいのスペースが必要になります。

「ヘリコプターの下には、ものすごい風がおります。いろいろなものが飛ばされるので、安全なスペースを確保するためにはそのぐらいのスペースが必要になります」(金沢大学人間社会学域准教授・青木賢人さん)

ヘリに気づいてもらうには?
通信による連絡ができない場合は、上空のヘリコプターにSOSを伝えなければなりません。
ヘリ救助の専門家である、JAXA航空技術部門の小林啓二さんによると、ただSOSを伝えるだけではなくて工夫があるといいそうです。

要救助者が4人いる場合は「SOS4」、水が必要なときには「SOS水」とすると、伝わりやすいということです。

ヘリにSOSを伝えるときは… SOS4、SOS水

「救助する人数によってヘリコプターの大きさは変わる。また、助けがほしいのか、水がほしいのか。水だけなら投下するなどできる。何がSOSなのか確認をする必要がなくなると、より素早く救援が来ることになります」(金沢大学・青木さん)

他にも、ヘリに気づいてもらうには、「旗をふる」「たき火」「発煙筒」などの方法も有効だとのことです。

ヘリに気づいてもらうには… 旗をふる、たき火、発煙筒

「これらの方法は、下で着陸できる準備ができていることをパイロットに示すことにもなる。旗や煙の向きで、その場所の風の強さなどを知ることもでき、横風に弱いヘリコプターには、一石二鳥にもなります」(青木さん)

大声で叫んで助けを求めても、ヘリコプターには聞こえないので、見てわかる方法をしたほうが効果的です。

この記事は、明日をまもるナビ「集落孤立 その時どうする?」(2024年6月23日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

こちらの記事や動画もあわせてチェック
災害取材 :東日本大震災のヘリコプター取材 から
南海トラフ地震の救助 :被災地はどうなるか?
災害時の救助要請 :西日本豪雨の体験
NHK防災・命と暮らしを守るポータルサイト
NHK防災・命と暮らしを守るポータルサイト

シェア

シェアするhelp