元旦に能登半島地震が起き、1カ月を経て死者は230人を超え、1万7千人超が避難生活を余儀なくされています。自衛隊派遣をめぐっては「逐次投入」との批判も出ました。2011年の東日本大震災当時に危機管理担当の内閣官房参与だった元陸将の山口昇国際大教授に課題を聞きました。
――自衛隊派遣は1月2日に約1千人で、徐々に増やして15日に最大の約7千人となりました。
能登半島にいきなり7千人を投入したら完全にあふれかえってしまいます。7千人というのは、東海・北陸地方を管轄する陸上自衛隊第10師団の全体に近い規模です。動かすには車両が2500両ほど必要となります。
大規模に動くときは3、4本の道を使うことになりますが、能登半島にはありません。車間距離を20メートルに詰めたとしても、1本の道に連なれば百キロ近くになってしまいます。「災害渋滞」が起き、歩くのと変わらないスピードになってしまいます。7千人を一挙に投入していたら、かえって混乱を招きかねません。
東日本大震災の時は10万人規模を投入しましたが、福島、宮城、岩手の各県をつなぐ幹線道路が生きていました。そして首都圏を中心とした「南関東直下型地震」を想定し、全国から10万人を一両日中に集める計画がありました。どこの部隊も、誰を行かせ、どの車に何を積むのか、燃料をどこで受けるのかなどの細部が事前に決まっていました。東日本大震災の対応はおおむねこの計画に基づいて全国の部隊が移動を開始し、行き先が東北になっただけでした。
今回、震災で陸路が寸断されたことから、自衛隊は途中から艦船をベースに活動しました。自衛隊が渋滞を起こして交通をマヒさせることはあってはいけないので、的確な判断だったと思います。過去には1985年の日航機墜落事故で、自衛隊は誤った情報に基づいて部隊を投入し、当初、現場とは違う山中に展開してしまった経験もあります。
ニーズわからずヘリが飛んでも…
――空からの活動はどのよう…
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