山陽自動車道八本松トンネル(長さ約840メートル)の事故は、避難しようとした人たちが次々と煙を吸い、被害が広がった。背景には、スプリンクラーや排煙設備の未設置があるとみられ、設置基準の妥当性も議論となりそうだ。一方、事故現場は18日午前11時15分に通行止めが解除されたが、交通の混乱は続いた。
八本松トンネルは通勤などで朝夕の交通量が多く、広島県警によると、事故当時はトンネル内を53台が通行していた。うち12台が追突に絡み、5台が炎上。視界が遮られるほどの黒煙が立ち込めた。運転手らは、出口に近い現場から入り口まで約600メートル戻って避難しようとした。しかし、煙に追いかけられるような形になり、吸い込んで気道熱傷を負ったとみられる。
旧建設省の通達では、全長と交通量を基に5段階に分けられる等級のうち、八本松トンネルは最上位に次ぐA。誘導表示板など定められた非常用施設はすべて設置されていたが、高速道路会社に委ねられているスプリンクラーや排煙設備は未設置だった。
西日本高速道路では、A等級へのスプリンクラー設置には、全長3千メートル以上で対面通行方式などの条件を設定。排煙設備は全長1500メートル以上としており、八本松トンネルは対象外となっていた。
一方、トンネル内のケーブルや照明器具が焼損していたことが判明。山陽自動車道下り線西条インターチェンジ(IC)-志和IC間は午前11時15分まで通行止めとなり、広島空港(同県三原市)と広島市内を結ぶリムジンバスが始発から昼過ぎまで運休するなど交通に大きな影響が出た。