エピローグ
ヨウミ記念公園が開園してからおよそ一年半の月日が流れ、美祢葉と和子様は共に学園を卒園した。二人とも婚約だけして大学に進学するのかと思ったら、どうやら俺のところに来るらしい。
「美祢葉は民間人だからいいとして、皇族の和子様が大学に行かないというのはアリなんですか?」
「私がレイヤさんの許に嫁げば皇族ではなくなりますので」
「でも宮家としてのプライドとかなんとかがあるんじゃないです?」
「プライドで貴重な青春の時間を無駄にしたくはありませんから。それに知識なら脳内チップでいくらでも補えますし」
「そうそれ! 私も同じことを考えて大学進学はやめましたのよ」
「確かに効率的ではあるのだろうけど」
「大学で教養を身につけるという考え方もあるかも知れませんが、レイヤさんの近くにいればもっと多くのことを学べると思ってますので」
「和子様の言われる通りですわ。在原海運は最大手の海運会社ですからそれなりの方ともお会い出来ますけど、さすがに皇族や軍の上層部とは会えませんもの」
「美祢葉さん、私のことは今後呼び捨てでかまいませんよ。レイヤさんも」
「分かった。今度からそうする」
「でしたら和子様……和子も私を呼び捨てにして下さいまし」
「分かりました。改めてよろしくお願いしますね」
「こちらこそ」
未来の嫁同士が仲良くてよかった。
なお、和子様もとい和子の婚約発表は彼女が卒園してすぐに行われた。直後に俺のところに取材申し込みが殺到したが、色々と世の中を騒がせているとはいえ世間では一般人の括りである。まして俺はマスコミに対していい印象を持っていない。
当然取材に応じることはなかったのだが、懲りない彼らの中には直撃だの盗撮だのと手段を選ばない輩もいた。もちろん全て捕らえて軍に突き出してやったよ。特に和子を見つけて盗撮したヤツらは皇族に対する不敬罪とスパイ罪で軍法会議送りとなったのである。
「結婚しても子供はしばらくはいいですわ。和子は早く陛下にお孫さんを抱かせて差し上げた方がよろしいのでは?」
「私もしばらくはいいかな。宮家から離れるわけですし、お父様もまだまだお元気そうですし」
「レイヤはいかがでしょう? 早く子供が欲しいですか?」
「いや、俺もまだいいかな。やることも多いし、あまり構ってやれそうもないから可哀想だ」
育児ならハラルとルラハがそつなくこなしてくれるだろうが、俺だって自分の子の育児にはきちんと携わりたい。だから(行為は別として)諸々の事業が落ち着いてから子作りに励みたいと思う。
あれ、事業が落ち着いたらって、もう落ち着いてないか?
スパの営業は順調そのものだし、恐竜の飼育施設も公園も賑わっている。在原海運からも毎年三十億円が振り込まれ続けるだろう。それらの管理運営は株式会社ハラルドハラルの佐々木姉妹と柊果里に任せておけば、俺が出張る必要などほとんどないのが現状だ。
二人との結婚式は今から一年後の来年の春に予定されている。結婚したら子作りをしてもいいのかな。
惑星探査からの帰還がまさかのパラレルワールドに飛ばされてまだ数年だが、確実にこの世界に根を張ったと言えるのではないだろうか。その根はやがて大きく伸び、俺の子孫が繁栄してくれることを望むばかりである。
俺はハラル、ルラハ、美祢葉、和子と共にこれからも充実した日々を過ごすのだろう。
四人とも、これからもよろしくな。
――あとがき――
すみません。本編はこれで完結とします。
9/25現在、実はまだ仕事が見つかっておらずちょっと焦ってます。
とにかくここまで読んで下さった皆様、ありがとうございました(^o^)